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回胴小噺



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自己紹介&2015年のメーカー動向予想 [2015/3/23(月)]

どうも。
春川亭三七でございます。

週の始まり月曜日。
業界連載枠の花火氏の後を引き継ぎ、記事を書かせていただくこととなりました。

と、当たり前のように自己紹介からスタートさせていただきましたが、すでに「連打!」レポートにて数々のお褒めの言葉を頂戴いたしましたので、お見知りおきの方もいるかと存じます。
この場を借りて厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。

あの時の評価に恥じぬよう精進してまいりますので、今後ともどうぞご贔屓のほどよろしくお願いいたします。

パソコンの前の皆様同様、わたくしも月曜日の「トリテン外れ」を楽しみにしていた一読者でございました。
ぱちんこ・パチスロ業界のディープなところを身近に感じさせる存在でした。

そんな業界枠の2代目でございます・・・。
なかなかに緊張感のある2番手ではございますが、精一杯お勤めさせていただきます。

さて、わたくしの身の上話は置いておいて、早々に本題に入ることといたしましょうか。

 


【激震走った9.16行政通知】
2014年8月28日に、日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)加盟メーカーの役員理事が、警察に呼び出しを受けた。
その時の談話を受けて、出席した各メーカー関係者は青ざめた顔で帰ることとなる。

その内容は、

保通協試験「方法の変更」と「持ち込み台数の制限」

大まかに言うとこうなる。
「方法の変更」については、花火氏の過去コラム「トリテン外れ〜第56回」を参照いただきたい。


方法の変更に苦慮することもさることながら、各メーカー開発者が苦労したのが、「執行猶予」が行政談話から2週間しかないこと。

なので、このタイミングで各メーカーより「申請用」の部品や基板の注文が下請け業者に殺到した。
おそらく、何とかこの2週間で、現行AT機にて申請可能なものを持ち込み販売にこぎつけたかった、というのが各メーカーの本音だろう。

ちなみに、すでに持ち込み済みで影響がなかったのが、ベルコの「スーパービンゴネオ」。
ギリギリこの2週間で持ち込めたのが、サミーの「アラジンAU」とユニバーサルブロスの「GOD〜神々の凱旋〜」だ。

機種までは定かではないが、大都技研とエンターライズはすべて落ちてしまった。
すべて落ちてしまった結果、次に首を絞めてくるのは「持ち込み台数の制限」という事になる。

これまでは、申請料が高額(1機種につき180万円!)ではあるものの、特に持ち込み台数に制限はなかった。
しかし、今回からは「1メーカーひと月につき2機種まで」と制限されてしまった。

これは、大手ではない中小メーカーにとっては本当に苦しい…。
苦しいが、メーカー自身が自分で自分の首を絞めてしまったといっても過言ではない。

というのも、保通協申請というものは、各メーカーが「これだ!」というものを吟味に吟味を重ねて持ち込むわけではない。

大抵の場合が、まずは「保険スペック」を作る。
これは、出玉の動き自体に波が起こりにくく、かつ「機械割」が著しく抑えられているものだ。
よっぽどのことでもない限り、この保険スペックは申請を通過し、販売が可能となる。
これにより「作ったはいいが、販売ができない」という事を避ける。

そこから、各社の吟味が始まり、売りたい「本命スペック」を持ち込む。
そして、さらに踏み込んで「冒険スペック」を持ち込む。

こういう経緯を経て、保通協に持ち込むのだ。

なので、一般的な呼び名と型式名が違う、という機種が多くなる。
例えば、初代エウレカの場合、正式型式名は「エウレカセブンZ」である。
「Z」に至るまで、何回持ち込んでいくらかかったのだろうと思うと身の毛もよだつ。


こういうことをしているので、1機種通過までにたくさんの時間がかかるし、1機種を通すためにたくさんの「申請不適合品」が生まれる。

そうすると管轄官庁から、

「保通協の申請適合率が悪いな・・・。 ん? メーカーは『また』射幸性の高い機種を作っているな?」

と疑義の目を向けられることになるのだ。
この疑義の目の結果が、「申請持ち込み台数の制限」という事になる。

これら上述の規制を受けて、メーカー開発・購買関係者は本当に苦労することになる。


ここからは、わたしの知りうる限りのメーカーの開発状況と寸評、そして今後の動向などを記していきたい。

 


【ユニバーサルグループ】
スロット販売台数トップ奪還の大本命。

とにかくその開発力は、良くも悪くも群を抜いている。
目から鱗な事をして警察に呼び出しを受ける回数も群を抜いている。

「エージェントクライシス」という台を覚えているだろうか?
業界的なことをいうと、あれが生まれ、世に出たことがAT特化という台の起爆剤となってしまった。
こちらは、開発力で言うところの「悪い方」。

良い方はというと、じわじわ人気を伸ばしている「HANABI」である。
こちらに関して言えば、某メーカーの開発から「あれ、うちじゃできないからね。 たぶん、思いつかない」という証言を得た。
どのメーカーかを詳述できないのが悔しいが、大手メーカーであるということだけは言っておきたい。


そして、ハード面とメーカー数が豊富なのも強みである。

ハード面で言えば、ゴッド系の筐体、ドンちゃんシリーズ系の筐体、沖ドキ系の筐体と多数あり、メーカー名で言えば、ミズホ、メーシー、エレコ、アクロス、ユニバーサルブロス、岡崎産業(ユニバが買い取った。ジャックポットはアクロスからの販売。)と豊富である。

エンドユーザーからすると、「ユニバーサル」とひとくくりにできるが、「販売」となると話が違う。
上述のようにメーカーが持ち込める台数に制限がある以上、グループで多数のメーカーを持っているのは大きな強みである。

例えば「GOD〜神々の凱旋〜」に関しても、結局は「ユニバーサルブロス」からの販売ではあるが、おそらくは他ブランドでも持ち込んでいるはずである。
ユニバーサルブロスで持ち込んでNGでも、エレコなら通るかもしれない。
そういうことができる強みと開発力が、ユニバーサルグループの強みだ。


さらにその開発力を紐解けば、ユニバーサルは「ユニバーサル専門学校」と揶揄されるくらい他社への開発者の流出が顕著なメーカーでもある。

4号機時代に一世を風靡した大都技研の「吉宗」。
あれには、ユニバーサル出身の開発者が多数からんでいる。
実際問題、吉宗の後にユニバーサルグループから「シンドバッドアドベンチャー」が出たことからも、吉宗を開発できるだけの人間がユニバーサルに残っていたということの証拠になるだろう。


唯一懸念されるのは、「キラーコンテンツを短期間に出しがち」ということ。

緑ドンの初代がヒットして以降、ドンちゃんシリーズが連発された。
連発されても販売台数は伸びなかった。

バジリスク2からバジリスク絆も間があまりに短い。

そしてさらに、ハーデスがあれだけ高稼働である中、同筐体の「神々の凱旋」である。

「売れるものを売れるうちに売っておけ!」感があまりに強い。

 


【山佐】
他のメーカーから、「新試験方法で一番伸びてくるであろう」と思われているのがこの山佐。
どのメーカーからも「今年は『岡山』でしょ?」と言われることが多い。

ちなみに『岡山』というのは、山佐の隠語。
業界では、メーカーのことを本社所在地で呼ぶことが多い。
山佐なら岡山。
在京メーカーで言えば、ユニバは「お台場さん」、サミーは「池袋さん」、大都は「京橋さん」となる。

話を戻して・・・

とにかくこの山佐、申請適合済の機種が多い。

ユニバが「異端」だとすれば、ヤマサは「優等生」。
最低限しか規制の網を潜り抜けようとはしない。
そういった中で「モンキーターン」の評価が抜群に良かったことで、イメージが一気に変わったのだ。

新試験方法でものんびり高笑いしているのは、実はここだったりする。

ゆえに「サブ基板での出玉管理をメイン基板に移しなさい!」と警察から指導を受けたとき、「3カ月でやります!」なんて言って、他メーカーから「バカ言ってんじゃねぇ!」と大バッシングを喰らった。

悪い言い方をすれば、「お上の犬」。
よく言えば「回胴界の博多華丸大吉」だ。


少し先の話をさせてもらえば、5月10日(GODの日)設置開始予定の「ゴッドイーター」。

これが、少なくともハード面ではなかなかいい仕事をしている。
「必要ねーよ」と言われればそれまでだが、液晶が美麗。
あの大きさであそこまでのクオリティーは正直びっくりした。

おそらく5万台は売ってくるだろうとは予想できるが、あそこまでお金かけておいて粗利はとれるのだろうかと、余計なお世話だが、心配だ。

役物も、若干AKBっぽい感じは否めないものの、細部へのこだわりはさすが山佐といったところ。


さらに言えば、ATに依存していないところも山佐の武器になる。
「ニューパル」を完全告知にしてきたのは、完全に「ピエロ」のシマを狙いに行っている。

安定感のある機種バランスで、一気にホールのシェアを伸ばす可能性もある。

優等生が本気になったら、思いのほか牙が鋭かった、なんてことが今後起こりうるかもしれない。

 


【Sammy】
言わずと知れた、業界トップメーカー。

とはいうものの、今年は苦しい。
回胴の開発が新試験方法に追い付いていない。

良くも悪くも「2足のわらじ」で評価を受けているメーカーのため、現在はぱちんこの開発に力を入れているというのが実状。

ただし、こちらにもユニバーサル同様強みがある。
「メーカー数」が多いという事だ。

サミーだけではなく、「ロデオ」「タイヨーエレック」「銀座(ほとんど出てないが…。)」と、こちらも持ち込みに苦労はしないという意味では強い。


ただし、ユニバーサルと違い「こだわり」が強い。

例えば、キラーコンテンツの「北斗の拳」。
こちらに関しては、基本的には新しい「何か」をつけないと売りに出そうとしない。

だから、9.16の試験方法の変更前に持ち込むことをしなかったのだ。


現時点でもすでにいくつかの開発を急いではいるが、大きく売れるものはしばらくでてこないだろう。

上場メーカーとしての足枷があるから、どうしても株主の利益を優先しないといけないというところは、山佐にはないデメリットになりかねない。

そこをどうにかするのがトップメーカーの使命だと思うので、初動では売れなくとも、市場で人気を呼んだ「化物語」のような機種を出すことに期待したい。

 


【大都技研】
苦しい。
正直、今回の試験方法の変更で一番きつい思いをしているのはここではないだろうか?

昨年の「サラリーマン番長」に代表されるように、売れれば爆発力は群を抜いている。

しかし、「ユニバーサル」や「Sammy」のようにグループがない。
「山佐」のように「置きにいく」ような機種もなかなか売れない。

上述したように、2週間の「駆け込み持ち込み」でもひとつも通らなかったことから、販売できる申請適合品が現状一つもないのだ。

今年はぱちんこにシフトするのではないかと言われているが、そう簡単ではないだろう。
どうしても大都技研と言えば、「回胴メーカー」という色が強すぎる。

例えば、先日、中京大を卒業した「浅田真央」が「卒業を機にフィギュアスケートからスピードスケートに転向します!」といったところで、すぐに結果は出ないだろう。(転向するわけはないが…)

ただし、「GARO」で息を吹き返した「サンセイR&D」のような例もあるから、あきらめずに作り続け、「大都はスロットもぱちんこも何なら周辺機器もできるんだぁ!」という色になってもらいたい。

 


【北電子】
業界がまたノーマルタイプ依存になれば、北電子の勝ちという事になる。
特に、これといった版権が…なくもないが、ちょっと乱暴な言い方になるが、だれも期待していない。

というわけで、試験方法変更のあおりを受けないジャグラーシリーズが出てくれば、売れる。

ただ、メーカーとしては今回の新試験方法で別に大喜びではない。

新試験方法になってから、メーカーの営業の方と話す機会があった時に、

「もう、これからは御社が業界背負って立つって感じですか?」

と聞いたところ…。

「いやいやいや…。 だって、三七君さ。 ジャグラーしかないホールに入って楽しい?」

という事である。
メーカーからしても、「うちに頼られても困る!」といったところ。

ここは基本的に、ホールシェアの10%くらいを守り続けるといったところだ。

しかし、他社がおたおたした結果、売れたのが北電子ってことがないとも言えない。
4号機→5号機の変遷初期のように…。

 


【七匠&オーイズミ】
最後に、「台風の目」となる可能性のあるメーカー2社の寸評を記しておく。

七匠は、今のところは「ベルセルク」を出しただけの新参メーカーである。
しかし、その資本力と開発力は筋が通っている。


まずは資本力。
七匠のスタートは、当サイトでも紹介されているとおり「トリビー」からの派生であるが、その資本はぱちんこ大手「大一」と販売大手の「フィールズ」が入っている。
今の業界状況でこれだけの資本力を持つ新参メーカーは、それだけで強い。
AVデビュー時に「元・芸能人」という肩書が乗っかるくらい強い。

結局、「ベルセルク」に関しても2.7万台売ってきた。
初参戦第1位は、パチスロAKBの3.2万台だから、2.7万台売ったということは、メーカーとしては第2位の記録になる。

今後も販売力から言えば、フィールズという後ろ盾から大きく販売を伸ばす可能性を秘めている。


そして、開発力。
こちらは未知数ながらも、説得力のある材料が一つある。
現在の会社のトップは、上述の「元ユニバ組」である。

規模の割に、狭い世界となっているこの業界。
「元ユニバ組」という肩書だけで横のつながりが強いとなると、その開発力の伸びしろは大きいと評価できるだろう。

今後定期的に販売できるだけのベースができれば、大手メーカーに食い込むだけの潜在能力は秘めているだろう。


そして、オーイズミ。

こちらは地味ながらも開発力が高い。
コンスタントに機種を出すようなことはしてこないだろうが、市場で「面白い」と評価される台を作る力が高い。

コンスタントに出さないのにはもちろん理由があって、「遊技機」の販売が会社において「第一義」ではないのだ。
オーイズミフーズや周辺機器開発(ダイコク電機のOEMなども担当している)が強いから、いい意味で肩の力の抜けた機種を作れるのだ。

いい例で言えば、「ひぐらし・煌」。
これは実のところ、「4号機のリプレイ外しやりたいなぁ」というだけで作った機種だ。

そんなゆとりのある姿勢から、「こんな台作ってみようかなぁ」で開発→販売→市場で大ヒット、となる可能性はここが一番可能性が高いと思う。

 


・・・とつらつらと書いていたら、なかなかの文字数になってしまいました。
初回から飛ばしすぎてしまったようです。

メーカーの動向について、多少でも興味を持っていただけたら幸いです。


正直、現状どのメーカーがというだけではなく、業界全体として苦しい状況です。

「カジノ法案」等の絡みもあり、やたらネガティブな面ばかり取り沙汰される業界ですが、開発陣も販売陣も皆躍起になって頑張っています。

「産廃」と揶揄されようとも、どの会社も一所懸命開発に取り組んでいるという事を今後の連載でお伝えできればと思っております。


長くなりましたが、お時間です。
ご拝読ありがとうございました。



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