今は昔、まだイベントが盛んに開催され、ホール内は設定を示唆する札で溢れ返っていた頃の話。 優良店では「設定確認」なるサービスが行われており、文字通りその台の設定をこの目で確かめる事ができた、そんな時代の話。 20XX年6月6日。 当時、いわゆる乗り打ち軍団に所属していた私は、いつものようにその軍団のリーダーである園長に指定されたホールへと足を運んだ。 ※園長については第19回記事参照 時刻は朝6時。 まだ京浜東北線の始発が動き始めたばかりの時間だ。 この日は前日までの雨のせいかジメジメと蒸し暑く、開店までの4時間がいつも以上に長い待ち時間のように思える。 だがそれでも、その苦労を遥かに上回る見返りが得られるであろうという期待感の方が勝り、やっぱり並んでしまう。 パチ屋に並ぶ時はいつもそんな心境だ。 私の前に並んでいたのは園長を含めて5人。 全員見知った顔ばかりだ。 6人目に私が並ぶ。 通常、このホールは朝一のリールの並びで高設定台を示唆していた。 ●7の中段揃い : 1/3で設定4・5・6 ●7の斜め揃い : 2/3で設定4・5・6 ●BAR揃い : 1/2で設定5・6 それに加えて、毎朝8時に送られてくるメールの情報を合わせる事で、かなりの精度で高設定台を推測する事ができた。 ●本日、北斗の拳、『最高』設定を各シマに複数台投入しております。 ●吉宗、3台に1台、『最強』設定確定です! ちなみに『最高』=設定5、『最強』=設定6というのがこの店の暗黙のルール。 この2つを組み合わせると、北斗の拳のBAR揃い台は、あっても設定5。 吉宗のBAR揃い台は、設定6の可能性大。 その他の機種のBAR揃い台は、ハズレの可能性大。 メールに無い機種の7揃い台は基本的には設定4。 …といった事が容易に分かったのだ。 今では考えられない事だが、それは夜21時の設定発表で明らかになる。 どの台にアンコウ(海物語の6の図柄)の札が刺さり、どの台にエビ(海物語の5の図柄)の札が刺さるかで、上述の法則性を証明してくれるのだ。 もちろん、札の刺さった台についてはその設定を確認する事ができる。 高設定確定札を刺すだけ刺して、中身は低設定という店舗も数多くあったが、園長の選ぶホールは全てガチなホールばかりだった。 そして、この日は6月6日。 設定6を彷彿とさせるゾロ目の日であり、最強設定多数という煽り文句のメールが送信されてくるはずの日であった。 だが…… 7時45分、メンバーの一人が着メロに反応して携帯電話を開く。 それにつられるように、次々と自分の携帯を手にする軍団メンバー。 この日の実戦ホールからメールが送信されてきたのだ。 ●本日、チェリーが熱いあの機種が全台設定◯◯ ●当店看板のメイン機種が期待度MAX そんな内容だったように記憶している。 このメールを見た私達軍団員の話題は、「チェリーが熱いあの機種とはどの機種か?」という点に集中した。 「チェリーが熱いと言えば、やはり中段チェリーがバトルボーナスへの突入契機となる北斗の拳だ」と言う者。 「チェリーからのゼニガタイムが設定看破のカギになる主役は銭型はどうか」と言う者。 仕舞には、「アラジンの単チェが最強だろう」だの、「吉宗だってチェリー解除がある」だのと、その時点では設置の無い機種やこじつけに近い機種まで名前が挙がり、なんでも有りな状態に。 その時、私は何気なくこう言葉を発したのだ。 「園長は何だと思います?」 皆の視線が園長に集中する。 だが、園長は押し黙ったままで一切の言葉を返さない。 それまで私達の話し声で賑やかだった周囲は一瞬静まり返り、私達の周りだけ時が止まったかのようだった。 一人、二人、通勤途中のサラリーマンや制服姿の女子高生が目の前を通りすぎる。 15秒……30秒……と、私はその姿を見送った。 その時。 「4時間並んだのだからソロでも打ちたい、という発想の奴は、2時間しか並んでない今のうちに家に帰れ。 黙って打たずに勉強できる奴だけ残れ。」 私達の前に立つと、園長はくわえていたタバコを手に取り、頭上にふっと煙を吐いた。 そしてそう言ったのである。 今日は軍団として乗り打ちはしないし、稼働自体もしない。 だけど開店までの残り2時間そのまま並び続ける、という園長の理不尽極まりない発言に私達は戸惑った。 4時間も並ぶのだから、打たなきゃそれまでの時間が無駄になる。 勿体ない。 そう思うのが普通であろう。 だが、そう思うのであれば今のうちに帰れと園長は吐き捨てる。 今まで園長の言う事に大きな間違いがあった試しはない。 それは、その日集まったメンバー全員が理解していた。 園長が今日は打たないと言うのだから、打たない方が良いのだろうと誰もが思った。 だが、それでも並び続けるという園長の言動だけは誰も理解する事ができなかった。 結局、この日集まったメンバーの中でその場に残ったのは、園長を盲信する私ともう一人だけ。 私達は、3人で開店時間を迎える事となった。 開店前、園長は一言だけ私達に言った。 「いつもと何がどう変わっているかをよく見ておけ。」 開店と同時に店内に飛び込んだ私は目を疑った。 ●全ての台が北斗揃いの北斗の拳 ●吉宗/爺/姫……と異なるキャラ札が刺された吉宗 その他の機種も全台が7揃いで、しかも「注目機種」だの「本日のおススメ」だの、なんらかの札が全ての台に刺されていたのである。 皆、口にはしなかったが、このホールの立ち回りは既に園長から完璧に盗んだつもりであった。 冒頭に書いた通りの基準で台を選んでいれば、自分の力だけでも高設定をツモれるものと思っていた。 だが、そんな自信はただの勘違いだったのだ。 その証拠に、この日、私達はどの台に座れば良いのか一切分からなかった。 それでも、園長の言葉がなければ、おそらく私はチェリーの熱い北斗の拳に座っていただろう。 どの台が高設定の可能性が高いか、そんな絞込みもできないままに…… 朝一の状況を確認した私達は一旦解散して、21時前にもう一度ホールに集合した。 設定発表の結果を見届ける為だ。 この店では、設定発表のタイミングで着席していた客は、発表された設定を確認する事ができた。 店に入る直前、園長に言われた事は3つ。 ●とにかく出ている台に座って、設定発表を待て ●札が刺さったら、確認するかと言われなくても設定確認をしろ ●設定確認を断られたら、大人しく引き下がれ 設定発表の直前にホールに入った私達は、園長の指示に従ってその日単純に出ている台を選んで千円だけコインを借りた。 そして、21時。 「おめでとうございま〜す!」 私の座る北斗の拳にエビの札が刺さる。 だが、通常であればこの後に続くはずのあの言葉がこの日は無かった。 「設定を確認されますか?」 いつもならあるはずのその言葉が無い。 私は店員を呼びとめてこう尋ねた。 「確認できますか?」 「大変申し訳ございませんが、当店ではそのようなサービスは取り止めになりまして。」 店員が笑顔で答える。 全て事前に園長から聞いていた通りであった…… 千円分のコインを使い切り、店を後にした私達はいつもの牛丼屋に向かった。 「エスパーですか?」 テーブルに座るなり、私は言った。 「ん?」 不思議そうな顔で園長がこちらを見る。 「朝から全て分かっていたんですよね。 どうして?」 この手の質問に園長が答えてくれない事は分かっていた。 だが、その魔法の仕掛けを私はどうしても聞かずにはいられなかった。 すると…… 「今日は収入0で最後まで付き合ってくれた二人に免じて、特別に。」 そう前置きして、園長は魔法の種明かしを始めた。 「メールが先月のイベントの時から変わっていただろ。 だから、今日は見(ケン)にまわった方が良いと思ったんだ。」 ●メールの送信時刻が8時ではなくなった事 ●メールの内容がですます調から体言止めになった事 ●3台に1台、最強設定といった具体的に設定配分を示す文言がなくなった事 ●全台◯◯、期待度MAXといった抽象的な文言が増えた事 園長は朝受信したメールを開くと、1つ1つ指さして指摘をしていく。 今でこそ知っていて当然のように感じるが、全て「ホールの経営方針が変わった時のサイン」として知られている事ばかりだ。 最後に、園長はこう付け足した。 「今回のように良い方向から悪い方向に変わった場合は、90%設定状況は悪化していると思った方が良い。」 園長の言葉に頷く二人。 頼んだ牛丼はとっくにテーブルに運ばれてきていた。 「では、逆のケースはどうだと思う?」 昨日まで抽象的で、狙い台も機種も絞りようがないようなメールを送ってきていたホールが、急に具体的で明確なメールを送ってきた場合だ。 「そのケースだと、信頼度が高いという事ですか?」 私の答えに、牛丼を口いっぱいに頬張った園長は全力で首を横に振った。 「その場合は、3割設定が入ってれば良い方だ。 だから、今日みたいな見が大切なんだ。」 周囲の状況は刻々と変化していく。 だから、昨日まで通用した事が今日も通用するとは限らない。 それはパチスロに限った話ではなく、仕事をする上でもなんでも同じだ。 その変化に誰よりも早く気付き、その目で確かめ、対応していく事が常勝への道だという事だろう。 その後、園長はポップの変化だの、データ表示機のランプの色だの様々な着眼点に気付かせてくれた。 いちいち見せてもらわなければ気が付かないバカな私も、さすがに色々な事を学んでいった。 そして現在、そんな私も仕事上では後輩を指導する立場になっている。 教える中身は違えど、あの頃の園長のような師匠になりたいという気持ちはとてつもなく大きい。 そんな事を思いながら、今日もあの列に並んで私はホールからのLINEに目を通す。 【 6の付く日はお先に失礼します 】 メニューへ
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