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ゴーストスロッター 第83話



■ 第83話 ■

「あれ・・・・・?
  な、なんで優司君が・・・・・・」

優司と広瀬が指定された自販機の前へ着くと、鴻上の言った通り既に飯島由香が来ていた。
その傍らには、鴻上が腕を組みながら立っている。

飯島は何も聞かされていなかった様子で、何故ここに優司が現れたのかも理解していなかった。

「やぁ、久しぶり・・・・ってことないか。」

「・・・・・・・・・」

「鴻上から何にも聞かされてなかったんだ?」

「聞かされてなかった・・・・って、何を・・・・?」

「そりゃ言えないよな。
  飯島をエサにして俺と勝負することなんて。」

「な、何よそれ・・・??」

黙って様子を見ていた鴻上が、焦って割って入ってきた。

「おい・・・・
  お前、急に何バカなこと言ってんだ!?」

「鴻上、お前もバカだよな。
  俺のくさい演技に引っ掛かってさ。
  さっさと飯島をこの場から帰しちまえばよかったのに。」

「(こ、こいつッッ・・・・・・・)」

怒りで言葉を失っている鴻上を無視し、飯島に向かって説得を始める優司。

「これでわかっただろ飯島?
  こいつは、飯島をエサにして俺にパチスロ勝負を挑んできてたんだよ!
  俺はこの街じゃ名の知れたスロッターで、そんな俺に勝てればいろいろメリットがあるとでも
  踏んでたんだろ。
  それで、俺はこいつと無理矢理勝負をさせられた。
  しかも、俺はわざと負けなきゃいけなかったんだよ。
  もし俺が勝ったりしたら、飯島を風ぞ・・・・ い、いや、大変な目に遭わすって言ってな!」

あえて、具体的にどうしようとしていたかは伏せた優司。

もちろん鴻上を思いやってのことではなく、飯島のショックを少しでも和らげるために反射的に取った
行動だった。

そして飯島は、まくしたてるような優司のこの説得に気が動転しているのか、何も言えずに固まっている。

広瀬はおとなしく状況を見守っていた。
やや苦々しい顔をしながら。

あらためて、優司が飯島に強い口調で問いかける。

「飯島! これでわかっただろ? な!?」

「バカだなぁ。
  そんなデタラメ、由香が信じるわけないだろ?」

ついさっきまで怒りを必死で噛み殺していた鴻上が、いつの間にか冷静さを取り戻し、さりげなく会話に入ってきた。

「うるさい! お前は入ってくんなッ!
  今は飯島と話してんだ!」

「・・・・って言われてもなぁ。
  そんなデタラメ言われてるのを、おとなしく聞いてられるほど大人じゃないんだよね、俺も。
  君が最後に一度どうしても由香に会わせて欲しいって頼むから、泣く泣く聞いてやったのにさ。
  この仕打ちはないんじゃない?」

「白々しいぞッ・・・・・
  今更遅いんだよ!!」

「いや、今更遅いとか言われても・・・・・
  なぁ由香、彼って昔からこういう人なの?」

「え・・・・?
  あ・・・・・・ うーんっと・・・・・」

「俺のイメージとだいぶ違うなぁ。
  こんな輩みたいな難癖をつけてくる男だったなんて。
  いくら由香に未練があって、なんとかヨリを戻したいと思ってるにしても、ちょっとこれはないでしょ。
  最後に一度由香に会いたい、っていう彼の願いなんて聞かなければよかったね。
  ほら、優司君には一度相談に乗ってもらったじゃん? だから断わりきれなかったんだよね。」

鴻上は、優司と初めて会った公園での一件のことを持ち出し、体裁を取り繕った。

「おい飯島!
  そんなヤツの虚言に付き合うのはよせって!
  俺の話をちゃんと聞けよ!!」

「・・・・・・・・・・・」

困惑した様子の飯島。

「(まずいな・・・・・・)」

第三者として場を見ていた広瀬は、圧倒的に優司が不利な立場になってしまったのを感じた。

客観的に見れば、一人興奮している優司と、ただイチャモンつけられて戸惑っている鴻上、という構図に
なっている。

「(しょうがない。 来てもらうか。)」

広瀬はこの場からスッと離れて携帯を取り出し、待機させていた女へ電話をかけた。


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「(くそっ・・・・・ 落ち着け俺!
  なんでこんなにムキになっちまうんだよ。
  飯島のことだからか?
  やっぱり俺はまだ飯島を・・・・・
  って今はそんなことどうでもいい!
  早く・・・・ 早くなんとかしないと・・・・・)」

優司は軽い混乱状態となってしまい、冷静な判断力が失われつつあった。
広瀬が被害者二人を用意してくれているのも忘れてしまうくらい。

「優司君。 由香はもう俺の彼女なんだよ。
  悔しいのはわかるけど、こんな方法で取り返せるとは思わない方がいいよ?」

「お前ッ・・・・・ いい加減にしろッ・・・・・」

「そんなこと言わ・・・・」

「いい加減にするのは優司君の方でしょ!?」

鴻上が返事をしようとしたところで、飯島が優司を睨みつけながら言葉を発した。

「い、飯島・・・・・・」

「一体なんなの?
  この前といい今日といい、なんでそんなに健自のことを悪くいうの!?
  何も知らないくせに。」

「ぐっ・・・・・・ またこのパターンかよ・・・・・
  なんで・・・・・ なんでわかってくれないんだよッ!!!」

「わかるわけないでしょ!
  そんな、よく知らない人に対して散々悪口言う気持ちなんてっ!!」

「そうじゃない! そんなんじゃないんだよッ!!!」

続く二人の口論。

鴻上は、二人の様子を黙って見ている。
時折優司の方を見て、軽くニヤつきながら。

そんな鴻上の様子に気付き、悔しさを募らせる優司。

「(鴻上ッ・・・・・ くそッ・・・・・ くそッ・・・・・
  勝ち誇った顔しやがって・・・・・
  なんで・・・・・ なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。
  なんでこうなっちゃうんだよ・・・・・)」

沸き上がってくる果てしない絶望感。
気を抜いたら思わず大声で泣き出してしまいそうなくらい。

そんな状態になりながらも、飯島との口論は続いた。
「ちゃんと話を聞いてくれ」「聞く必要はない」といった趣旨の口論を。


しかし、その時だった。


「はい、お二人さん、そこまで。」

広瀬が二人の間に割って入る。
後ろには、二人の若い女が立っていた。

一斉にその二人の女を見る一同。

すると、鴻上の表情がみるみるうちに変わっていった。
 

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