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ゴーストスロッター 第38話



■ 第38話 ■

「すいません伊達さん! 遅くなっちゃって!」

息を切らせながら、若い二人の男が走り寄ってきた。

「おう! ノブ、安井!
  やっと来たか。
  最近タルんでんじゃないのか!?」

「違うんですよッ!
  安井のヤツが寝坊して・・・・」

言われた安井は、舌を出しながらテレたような笑いを浮かべている。

「違ってないじゃんよ・・・・
  要はタルんでんじゃねぇか・・・・
  ったく、しょうがねぇなぁ。
  まあいいや、ほらコレ、いつもの紙な。」

ノブがその紙を受け取った。

「どうも! 助かります!
  いやぁ、神崎さんにはいつも助けられっぱなしで・・・・・
  神崎さんからのこの設定予想メモがないと、今頃俺たち路頭に迷ってますよ。
  早く頑張って一人で喰っていけるようにならないと!」

「おいおい・・・・ あいつは、お前らにスロ生活にどっぷりハマって欲しいなんて思ってないんだぜ。
  逆に、早く一般社会に巣立っていって欲しいと思ってんだからさ。」

「え〜!? 俺も安井もまだ19だし、あと2年くらいは大丈夫ですよ〜!」

「・・・・・まあ、俺も偉そうなこと言えた義理じゃないしな。」

そう言って伊達は、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「ところで、神崎さんって今日は様子見に来てくれるんですか?」

「いや、あいつは今日も夜だけだ。
  昼はいろいろ用事があるらしい。」

「そうなんですか・・・・ わかりました!
  とりあえず、このホールは俺たちに任せてください!」

「ああ。
  それじゃ俺は他のヤツんとこも回ってくるから。 それじゃあな。」

そう言って、その場を去っていく伊達。
ノブ、安井の二人は、黙ってそれを見送った。


**********************************************************************


「・・・・それにしてもやっぱ凄いよなあ、神崎さんは。
  実際に打つことはほとんどないのに、朝と夜の軽いデータ取りだけでこうやって的確に出る台が
  わかるんだからさ。
  まあ、長年のデータの蓄積と経験、ってのが大きいんだろうけど。」

開店待ちをしながら、伊達から渡された紙を見てしみじみと呟くノブ。
しかし、そんなノブに対し安井はやや不満げな様子。

そして、重々しく口を開いた。

「・・・・・確かに凄いけどさぁ、なんだかうまいこと利用されてるような気もすんだよなぁ。」

「利用?」

「ああ。 今ノブも言ってたけど、神崎さんって自分ではほとんど打たないじゃん。
  俺たちみたいな人間をいっぱい集めて、打つ台をそれぞれ指示して、勝った場合は勝ち金の
  20%を納めさせるわけだろ?
  要は、俺たちは都合良く打ち子として利用されてんじゃないかなぁ、って思ってさ。」

すぐさまノブが語気を荒めて返す。

「安井よぉ、それ本気で言ってんのか!?」

「え・・・?」

「神崎さんが指示してくれるからこそ、俺たちはなんの苦労もなく高設定台掴めるんじゃねぇかよッ!
  おかげで立ち回りのコツも分かってくるし。
  その授業料と思えば、20%くらい屁でもないだろ!?
  大体、本当の打ち子だったら取り分なんて全然少ないんだぞ!?
  それに比べりゃ俺たちは80%も貰ってんだ! 充分だろうがッ!
  神崎さんだって霞を食って生きてるわけじゃない。
  無償で俺たちのためにこれだけ時間を使ってたら、まともに生活していけるわけないだろ!?」

「そ、そりゃまあ・・・・・」

たじたじの安井。
さらにノブが攻め続ける。

「しかも俺らは、無理矢理神崎さんの指示に従わされてるんじゃないだろ?
  ついさっき伊達さんも言ってたけど、むしろ早く自立しろって言われてるよな?
  神崎さんからも伊達さんからも。」

「・・・・・・・」

「でも俺たちには、スロで一人で立ち回って勝つほどの腕がないし、将来何がやりたいかもまだ見つかって
  ないから、仕方なく神崎さんが面倒みてくれてんだろ?
  そんな立場の俺やお前が、神崎さんに対して不満を持つなんておこがましすぎるんだよ!
  何勘違いしてんだよお前は!
  大体、神崎さんのグループに入りたがってるヤツなんて他に腐るほどいるんだぞ!?
  文句があるならさっさと出てけよ!」

烈火のごとく怒るノブの勢いに押され、すっかりしょげ返ってしまった安井。

「わ、悪かったよ・・・・・
  そういうつもりじゃないって・・・・・
  もちろん俺だってあの人尊敬してるし、感謝もしてるんだからさ・・・・・」

「じゃあそういうふざけたことは二度と言うな。 たとえ冗談でも。」

「わ、わかったよ・・・・・」

痛いところをズバリと突かれてしまい、恥ずかしそうに目を伏せる安井。
その様子をみて、ようやく溜飲を下げたノブ。

と同時に、ノブの頭に一つの疑問が頭をよぎった。

「(でも、確かに不思議な感じはする。
  神崎さん、なんで自分では打たないのかな?
  もう実働するのは面倒なのかな、あのランクの人になると。
  ・・・・・・・・・・まあ、それでも俺たちには何にも言う権利はない。
  助けてもらってんのはこっちだし。) 」

それからは、二人とも黙って開店時間を待った。
 

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