[3]マルホン工業の民事再生と奥村遊機の自己破産 [2015/4/20(月)] |
【名古屋から抜け出せなかったこと】
三つ目の
「名古屋拠点を抜け出せなかった」については少々ややこしい話なのですが…
分かる人には分かる言い方をさせてもらえば、「漫画・新宿スワン」で言うところの「横浜・タキ大国」なんですよ、この業界にとっての名古屋って。
とにかく、名古屋で購入・開発を完結しようとする傾向にあります。
よそから来た新参者はなかなか受け付けてもらえないのです。
例えば、コストメリットがあってメーカーに売り込みをかけると、ほかの下請け業者からメーカーに対して「そっちと取引するならもううちはいれないよ?」っていうのが成り立ってしまうのです。
本来ならば、メーカーとしてはコストメリットありきで動くべきなのに。
それができないのが「名古屋拠点」なのです。
そこを脱却してうまく購買をしたのが、購買拠点を手広く広げた「京楽産業」と、購買をサミーの一括購入にした「タイヨーエレック」です。
業界において、名古屋に依存しないあり方というのは一つのテーマです。
下請け業者については、名古屋を攻略するのが販売ルート拡大のテーマになるわけです。
この辺が、マルホン工業と奥村遊機がうまくいかなくなった理由かと推察できます。
【なぜマルホンは「民事再生」で、奥村は「自己破産」となったのか】
さて、では両社の「民事再生」と「自己破産」の意味合いの違いについてご説明させていただきます。
お断りさせていただきますが、この辺の私見は、わたくしの思うところと他メーカーの方の意見を総合して導き得る「可能性」に過ぎない、と考えていただければと思います。
マルホン工業が自己破産ではなく民事再生を選べた理由は、ざっくり言ってしまえば、
「マルホン工業という会社にまだ利用価値があったから」だと思います。
マルホン工業は、「日工組」加盟メーカーなわけです。
お分かりですね?
当連載の第2回でも取り上げた、
「特許権の共有」があるわけです。
この7号業界に限った話ではなく、特許権というのは拘束期限が決まっています。
例えば、「太宰治」の本を検索してみてください。
おそらく色々な出版社から販売されているはずです。
それは、結局のところ、一つの出版社から販売できる権利が切れたから他社から販売できるようになったわけです。
このように、マルホン工業に関しては、おそらくまだぱちんこ開発において「日工組」として保有したい「特許」を所有しているという事です。
それがなくなると、また新たによそのメーカーがその特許を取らないと「日工組」としての秩序がなくなってしまうのです。
しかもパチスロの新内規同様、
ぱちんこも新内規を作っていて、現行「MAX」は10月までに設置を終えないといけません。
だからマルホンは、現状は「倒産」ではなく、「民事再生」として会社を残すわけです。
だって、民事再生法を申請したのに、全社員解雇していますからね。
なんか裏がありそうと考えるのが普通です。
対して、奥村遊機に関しては倒産なのですよ。
発表された総負債額は約70億と、マルホンと同じくらいなのに。
なぜか?
意地悪な言い方をすれば、
奥村には利用価値がないのですよ、もう。
奥村遊機が所有している特許権は、既にオープンレーンになっているはずです。
太宰の本を色々な出版社が販売できるのと一緒です。
奥村が持っているものは、奥村に使用料を払わなくても使えるのですよ。
以下はわたしの推察ですが、おそらく今後マルホンについては、どこかのメーカーか他業種の会社がマルホンの権利を買い取ると思います。
でなければ、自民党が「地方再生」をうたっている中、全社員解雇を認めて民事再生にできるとはどうしても思えない。
この辺が「民事再生」と「自己破産」の違いのからくりかと思います。
それでも、やっぱり衝撃なのですよ。
戦後のどさくさから生まれた「正村ゲージ」を元に発展してきたぱちんこも、もはやそのゲージは形骸化し、メーカー固有のキャラクターや版権を元にした台に人気を依存することとなってしまったわけです。
そこに、ぱちんこの起源を支えてきたメーカーがついていけなくなったというのは、やはり業界的には現状のあり方に一石を投じる結果となるわけですよ。
推察ばかりで申し訳ありませんが、もし海物語の「三洋物産」がマルホンや奥村と同じ道を歩むこととなったら、ぱちんこは終わりだと思います。
あそこの所有している特許はそれだけ強いものですので。
いくらお金をかけても所有権を放棄しないと思います。
といったところが、わたしの今回の老舗2社に対しての印象です。
今後、各社生き残りに向けて体制を整え始めるでしょうね。
下請けに関して言えば、そこについていけるだけの生産力・開発に協力出来るだけの知識・技術力が今後求められることになるでしょう。
パチスロで言えば、生き残りをかけるという意味では、ユニバーサルはこのタイミングで賢い選択をしたと思います。
日電協脱退はその布石かと思われます。
もはや、日電協に入って特許を共有しているメリットはないという判断が吉と出るか凶と出るか…。
今後、各社においてどういうメリット/デメリットがあるかは動向を見守っていくとしましょう。
といったところでお時間です。
ご拝読ありがとうございました。
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