[2]人の見た目をした狼がいる? [2016/12/16(金)] |
<翌日>
今日の狙いは「シンジ」の札。
私は二人の台が見えるよう、シマ中央のシンジを選んで着席した。
もちろんターゲットである二人だけでなく、自分以外の5人全員の挙動に気を配っていく。
何一つ見落とさないように、なおかつ、それを観察している事を周囲には悟られないように。
もし誰かが故意に判別結果を偽っていた場合、こちらが疑いを持っている事をターゲットに気付かれては、犯人探しに支障をきたすと考えたからである。
最初にボーナスを引いた加藤の台はREG……、加藤の友人Dの台は赤……
私は自分以外の5台のボーナスの内訳を目で追い続ける。
いくらボーナスの内訳だけ確認すれば良いとしても、5台を同時に監視するのは大変な作業であった。
だが、やるしかない。
私は目玉を右へ左へと忙しく動かし続けた。
すると……
「誠さん、誠さん…… 今ベル揃ってましたよ」
2時間後、加藤にそう呼び掛けられて私ははっと気が付いた。
「今ベル揃ってましたよ」、その言葉が意味するところは、ベルが揃ったのにカチカチ君のカウントを忘れていた私に対する「ちゃんとやれ」というメッセージである。
「どっか体調でも悪いんですか?」
2時間で1200Gしか回っていない私の台のデータ表示を確認すると、加藤は不思議そうな顔で私に言った。
私は周囲の台の挙動を見逃すまいとするあまり、自身の台には全く集中できていなかったのだ。
「いや…… すまん……」
加藤にだけは打ち明けておいた方がいいか?
そう考えもしたが、私は言葉を飲み込み、自身のいい加減過ぎるここまでの稼働を詫びた。
2,000Gを回したところで、いつものように全員の設定判別状況を確認していく。
だが、この日に限っては私の興味は各台の設定ではなく、ボーナスの内訳だけに向けられていた。
「俺の台は……」
BIG比率:赤2青3。
まずは加藤が先陣を切って自分の台の報告を始める。
私は、それと心のメモとを比較して、誤りのない事を確認していった。
●BIG比率:赤1青3
●BIG比率:赤2青0
●BIG比率:赤0青3
●BIG比率:赤1青0
加藤の友人から告げられた数字は、全て私が確認したそれと一致していた。
そして、私の台は赤0青2の偶数挙動。
つまり、誰も事実と異なる報告をしている訳ではない。
にも関わらず、偶数挙動の台はやはり4台ある。
この目で確かめた以上、それは間違いなかった。
「これは一体……」
この中にいるはずの嘘つき狼の姿が見当たらない。
私は、自身の仮説の誤りを認めざるを得なかった。
この後、私は自分の台を加藤の友人に託すと、終日24台のエヴァまごを眺めて過ごした。
再び仮説を構築し、今度こそ真実に辿り着く。
収支をプラスにもっていきたいという気持ちももちろんあったが、それ以上に私を突き動かすのは、事の因果を解き明かしたいという知的好奇心であった。
そして……
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