[3]人の見た目をした狼がいる? [2016/12/16(金)] |
<閉店間際>
私は閉店までの10時間、エヴァまごのボーナス比率を数え続けた。
2,000Gを回した時点での偶奇は、サンプル数の少なさ故のたまたまかもしれない。
そうも考えたが、閉店まで十分な数のサンプルを確認しても、結果はやはりこれまでの3日間と同じものであった。
我々が続行した台も、我々が見切った台も、そして、「アスカ」の台も「レイ」の台も「カヲル」の台も。
全ての台の挙動をBIG比率=偶奇に絞って観察したが、やはり……
私は一つの結論を抱いて家路についた。
この日も相変わらずで、私たちはスパッと設定6を掴む事はできなかった。
<狼の正体>
「偶数設定が4台ある」、それが設定6の見極めを邪魔しているのは間違いない。
この4台目の偶数設定こそが私達の邪魔をする狼なのだとして、どう対策するか、私が自宅に帰り頭を悩ませていると、加藤が私に電話を掛けてきた。
「誠さん、俺が思うに……」
加藤の浮かない口調からして、加藤もまたこれまでの4日間の収支に疑問を持ちはじめている事が窺えた。
偶数設定が4台ある、加藤の口から次に発せられる言葉をそう予想して、私は加藤の次の言葉を電話越しに待った。
「あの店のエヴァまご、設定5がないですよね?」
自分の予想とはやや異なる台詞に、私は少し驚いた。
だが、振り返ってみれば確かに加藤の言う通り、4日間で奇数の上っぽい挙動の台は1台も打てていなかった。
「言われてみれば……」
加藤の言葉に同意したところで、私は自分の思うところも加藤にぶつけてみた。
「俺はずっと偶数挙動の台が4台ある事が気になっていたんだ。 誰かが判別を間違えている、あるいは故意に嘘を付いているのかと思ったけど……」
一見すると、加藤と私は別々の事を言っているようにも思える。
だが、偶数設定が1台多いという事は奇数設定が1台少ないという事であり、それが設定5だとすれば、私の考えていた事も加藤の言ってる事も中身は同じ。
二人の考えを合わせた時、そこに浮かび上がる答えは一つしかなかった。
「ようやく嘘つき狼の正体に気付いたよ」
加藤のくれたヒントのおかげで、全ての点と点が線で繋がった。
「オール設定に見せかけつつ、設定5を削って設定2を使う。 そういうホールだったって事か」
私は加藤に言った。
青BIGが引ければ奇数ではない。
あわよくば設定6もあるかもしれない。
そういう台を増やす事によって稼働を高めつつ、平均設定を下げる事で出玉は抑える。
その狡猾なやり口には、「してやられた」という悔しさと、「何故その事に4日も気付かなかった」というふがいなさが残るばかりであった。
<そして、現在>
今にして思えば巧妙なやり口ではあるが、等価交換で毎日設定6を使おうと思えばそれも必要悪だったのかもしれない。
だが、当時を振り返ってみて改めてこう思う。
どんな店舗も利益があるから存続していけるのであって、その本質は「か弱い人間を狙う狼」なのだと。
「いらっしゃいませ」
ホールに入れば、今日も店長は笑顔で私を迎えてくれる。
だが、その笑顔の接客の裏には……
人の姿をした狼が潜んでいるのかもしれない。
〜人狼〜
この中に人の見た目をした狼がいる? 〜完〜
1年間に渡り、ご愛読頂き、誠にありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します。
皆様、良いお年を。
伊野谷 誠
【 6の付く日はお先に失礼します 】 メニューへ