<新台入替>
先日、子羊のマイホで新台入替があった。
ジェットカウンターの上に貼られたチラシには「バジリスク 絆 増台決定」の文字がデカデカと印刷されていた。
子羊のマイホの絆の設置台数は全部で26台。
ここからさらに増台するというのだから、これは「当店はこれから絆に力を入れていきます!」というホールからのメッセージに他ならないはずだ。
「久々に絆に設定が入る!?」
子羊は胸の高鳴りを覚えた。
そして迎えた増台当日。
子羊の目に飛び込んできたのは、絆と向かい合わせにあったまどマギのシマの一番左の1台だけが絆になったマイホの姿だった。
まどマギが1台減って絆が1台増えた以外、以前と何一つ変わらない子羊のマイホ。
当然、増台初日だというのに客付きもまばら。
設定状況もいつもと変わらぬ通常運転で、高設定確定演出が出現する台など存在しようはずもない。
子羊は憤った…
子羊は本気で憤った……
子羊は本当に本気で憤った…………
だが、憤りはしたところで子羊にできる事は何もない。
子羊にできるのは、全てを諦め、そのホールに通わない事だけであった。
<一縷の望みも……>
そんな世知辛い状況の中で迎える年の瀬。
一縷の望みを託すとしたら、この時期になると増えるグランドオープン店舗の存在だろうか。
でも、子羊は知っているのだ。
本当に熱いグランドオープンには、設置台数の3倍以上もの人が並び、その中で入場抽選に勝たなければ、打つ事すらもできないという事を。
数少なくなった狩り場には、ハンター達が引き子・打ち子を引き連れ集結する。
それは、専業のスロッターのみならず、子羊の知り合いのサラリーマンや学生に至るまで同じである。
「もはや、子羊一匹の力ではどうにもならない」
右往左往した挙げ句、子羊に手渡されるのは4桁の数字の書かれた入場整理券であろう事は目に見えていた。
「この中で自腹で打ってるヤツがどんだけいるっていうんだ?」
子羊は叫びたかった。
だが、狼の群れの中でそれを叫ぶだけの度胸を、子羊は持ち合わせてはいなかったのだ……
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