[2]園長列伝≪その3≫ 〜園長 VS マナー悪軍団〜(後編) [2016/12/2(金)] |
<2日目、閉店後>
据え置き狙いのジャグラーと猪木、それに百景と猛獣王と北斗の拳にそれぞれ2人ずつ。
これが2日目のマナ悪軍団の配置だった。
結果として、ジャグラーと百景の設定6を2台ずつと、猛獣王の設定5。
それに北斗の拳の中間設定を彼等は終日打ち切って、この日彼等は6台で2万枚近くの出玉を手にして帰っていった。
「くそっ、思うようにはいかんな。」
園長と私、それに愛さんの3人が待つファミレスのテーブルに遅れて現れた南店長は、開口一番そう言ってテーブルを軽く叩いた。
「昨日の全6シマを見て、敵も考えてきましたね。」
なだめるように穏やかな口調で園長は言ったが、悔しい気持ちは園長も同じ。
言葉の節々からは、南店長に対する申し訳ないという気持ちが感じ取れた。
この日、影山が全6シマ狙いに作戦を切り換えてきた事は、結果を見れば明白だった。
その上で、前日ゲーム数管理のストック機に当たりがなかった事から、AタイプとAT機に絞ってメンバーを散らしてくる影山の読みは見事であった。
「さすがは園長もその実力を認めるスロッター。」
私は思わずそう口にしそうになったところで、テーブルの空気がそれを口に出せるような状態ではない事に気が付いた。
自然と目線はテーブル上へと落ちていき、私はうつむきがちに誰かが次の言葉を発するのを待った。
30秒。
わずかに沈黙の時間が過ぎていく。
その重苦しい雰囲気を慮ってか、はたまたただの天然なのか、これまでその場にいてもほとんど言葉を発しなかった愛さんが軽い口調で一言呟いた。
「でも、これって良い展開なんじゃないの?」
その言葉を聞いて、2人のいかついオヤジの視線が20歳そこそこの愛さんに集中する。
「だって……」
元々の作戦はイベント最終日、彼等を金札台に誘導する事であった。
その為には、今日、金札台の信頼度を実感させられたのは決して悪い事ではないのではないかと愛さんは言った。
「イベント最終日、彼等10人の座る台だけが設定1で、それ以外の台は全て高設定。」
言われてみれば確かにその通り。
これが我々の狙いであって、紛れもなく本番は明日のイベント最終日。
それは、イベント前夜から話していた事だった。
とは言え、そう簡単に割り切れるものなのだろうか?
私は目線を上げず、机の隅に置かれたオシボリを見つめていた。
「そうだな、愛ちゃんの言う通りか。」
南店長はポンと手を合わせると、自分に言い聞かせるように言った。
それを聞いて、前を向く園長と私。
「幸い、我々が彼等をターゲットにしている事は気付かれていないと思います。 明日は予定通り潰しにいきましょう。」
「予定通り」、その言葉の意味するところは、ノートの最初のページに書かれている。
●開店前に挿しておく金札は、北斗の拳のシマに3台おきに全部で10台だけ。 それらの台は全て「設定1」。
●金札台以外、北斗の拳のシマは全台「設定6」。
明日の仕掛けは、シンプルにこれだけである。
本当は彼等より先に並ぶ客がいた場合に、彼等に被害が及ばないようにする為のシナリオもいくつか書かれていたが、閉店30分前から並びの列の先頭に並ぶ彼等の姿を見て、他のシナリオは必要ないと我々は判断した。
北斗の拳のシマは、入り口からよく見える位置にある。
扉が開けば、そこに金札台がある事を彼等が見落とす事はまずないだろう。
周りの台は全て高設定で、彼等の座る台だけが設定1。
南店長の望みを叶えるお膳立ては整った。
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