[1]園長列伝≪その3≫ 〜園長 VS マナー悪軍団〜(中編) [2016/11/25(金)] |
<前回のあらすじ>
明日から3日間、グランドオープン◯周年イベントを開催するパチスロ店「トレジャー」に下見に行った帰りの事。
私達一行は、園長の昔馴染みで「トレジャー」の店長である「南」に、マナ悪軍団を懲らしめるべく、彼等がイベント期間中に着席しそうな台を予想してほしいという依頼を受ける。
深夜に及ぶ作戦会議の末に、私達は翌日彼等が着席しそうな台番をノートに記していった。
〜デスロノート〜
そのノートに書かれた台番は翌日「設定1」になるという死神のノート。
死神のノートに記載された台番をめぐり、トレジャーとマナ悪軍団との3日間の頭脳戦の火蓋が今日切られる。
<イベント初日の朝>
「例のマナ悪軍団は全部で10人。 予想通り、早朝に店頭に現れて先頭に並んでいるらしい。」
私が目覚めると、園長からメールが届いていた。
そのメールを見ながら、私はゆっくりと朝食を摂る。
設定を知っている私は、今日トレジャーで打つ事はできない。
彼等がどの台に着席するかを見届けるだけなら、開店ギリギリに現地に入れば十分だからだ。
〜90分後〜
開店時刻の15分前に、私はトレジャーの店頭に辿り着いた。
見渡す限り、並びの列の最後尾は確認できない。
この様子だと設置台数以上の人が並んでおり、朝一着席したら最後、台移動は不可能になる事は容易に想像できた。
続いて、私はその列の先頭に並ぶ10人へと視線を移す。
入店後、彼等が着席した台を確認する為には、ターゲットの顔と服装くらいは覚えておかないとならないからだ。
あくまでも通りがかりにさりげなくを装って彼等を眺めたはずだった。
だが、彼等の中心にいたある男も、またこちらを凝視していたのだ。
一瞬、お互いの視線が交錯する。
「マズイ!?」
視線を足元に向け、そのまま通り過ぎようとする私。
しかし次の瞬間、男は、私の肩を叩いて私を呼び止めた。
「誠くん……だったよね?」
振り向いた私の目に入ってきたのは、クロムハーツの十字架のネックレスに髑髏の指輪。
そのいかつい装飾品には見覚えがあった。
私は以前に、一度だけその男と顔を合わせていたのだ。
男の名は「影山」。
私がこの男を知っていたのは、この男が以前は園長と行動を共にしていたからであった。
といっても、深い間柄ではない。
ただ一度、園長と彼が偶然ホールで出くわして、その場に私もいた。
だから、名前を名乗り合ったというだけの関係である。
影山と出会ったのは2ヶ月ほど前の事だったろうか?
その時に園長に聞いた話を思い出す……
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「今の影山って方は、どういうお知り合いなんですか?」
2ヶ月前、影山と別れた後に私は園長に尋ねた。
園長曰く、スロットの腕、特に台読みに関しては天下一品。
自らホールで働いていた経験もあるだけに、ホール側の意図を読み解き、高設定を嗅ぎつける事においては園長でも敵わないとの事だった。
だが一方で、勝つ為には手段を選ばない面もあり、朝一の台確保やハイエナにおいてはかなり強引なやり方をする人物でもあったそうだ。
それ故、その部分の考え方が園長とは合わなかった。
結果、お互いわずかな時間を共にするだけで、別々の道を歩む事になったというのが、園長と影山の関係だった。
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「誠くんは今日打つの? お互い頑張ろうな。」
開店時刻が近付き、入り口のブラインドが開けられたのに気付くと、影山は一方的に話を打ち切り、並びの列へと戻っていった。
少し話をする分には、いかつい見た目とは裏腹に気さくな兄貴といった感覚だったが、こんなところで親近感を持ってはいけない。
それが、園長も認める凄腕スロッターであったとしても、我々は負ける訳にはいかないのだ。
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