[2]園長列伝≪その3≫ 〜園長 VS マナー悪軍団〜(中編) [2016/11/25(金)] |
<そして、開店>
私達が前日の作戦会議で用意した主な仕掛けは次の通り。
●キンパルのストックが多く残っていそうな台は低設定のまま据え置き
●吉宗のハマり台は設定2に変更
●ジャグラー1シマと猪木のシマが全台設定6、この2シマには朝一から高設定である事を示す「金札」をデータ機器の上部に挿しておく
ジャグラーと猪木に告知札を挿すのは、この2シマが彼等が普段狙う事のない店内の一番奥にある為である。
今日の客の入りを考えれば、いかに彼等といえども、朝一店内の様子をくまなく確認してから台を選択するなどという時間的余裕はない。
真っ先に狙い台をキープするしかないとなれば、その狙い台がキンパル・吉宗、あるいは北斗の拳であったとしても、彼等が店内の一番奥にあるシマを目視確認する事はないというのが私達の狙いであった。
朝一、「金札」の挿されていた台は設定6。
イベントの初日、2日目と刷り込む事で、最終日には金札を使って、彼等を低設定台に誘導するというのが我々の描いたシナリオだった。
園長と私は、数百人の並びの列の最後尾から入場する。
いつも朝早くから並び、先頭付近で店内に入る私にとって、なかなか進まない列の最後尾にいる事はもどかしかった。
開店から既に10分が経過しただろうか。
ようやく私達が入店する頃にはもう、店内に空き台は見当たらないような状況。
既にボーナスを引いている台もチラホラ確認でき、激熱イベントにふさわしい盛り上がりを見せていた。
そんな中で、気になる彼等の姿はというと……。
園長と私は、低設定据え置きのキンパル1139番台に影山の姿を発見した。
「狙い通り」、そう心の中でガッツポーズする私とは裏腹に、園長は浮かない顔で私に耳打ちする。
「アイツが相手となると、明日はこう上手くはいかないぞ。 アイツは必ず今日の状況を見て対応してくるから。」
その言葉は、やり方の良し悪しはあるものの、影山のスロッターとしての実力は認めざるを得ない水準にあるという事を意味していた。
彼等の姿を確認すると、私達は店内通路の脇に設置されているベンチに腰かけた。
「今日のところはほぼ狙い通りでしたね。」
予断を許さない相手である事は理解したつもりであったが、こわばる園長の表情を見かねて私はそう声を掛けた。
結局この日、彼等が着席したのは、
●低設定据え置きのキンパル 4台
●設定2に打ちかえた吉宗 3台
●我々が予想できなかった北斗の拳 3台
北斗の拳は、台番をピンポイントで予想はできなかったものの、彼等が狙ってくる可能性のある事は織り込み済みで、全台設定変更をした上で中間設定多数の配分。
最高設定をほとんど使っていないという意味では、彼等がどの台に座っても問題はなかった。
そう考えれば、この日は我々の完全勝利といっても良い結果だった。
「お客様にお知らせします。 約5分のお時間で朝一チャンス札を回収させて頂きます。 チャンス台の確認がお済みでないお客様におかれましては、是非今一度店内データ機器の上部にご注目下さいませ。 繰り返します……」
店内では、事前の打ち合わせ通りのアナウンスが流れる。
彼等に「金札」の存在に気付いてもらう為の演出だ。
アナウンスを受けて、混雑した店内に「金札」を探す人の流れが発生する。
その人の流れの中に影山の姿を見つけると、私は彼をそっと目で追った。
そして、その姿がジャグラー・猪木のシマに向かうのを見届け、私達は店内を後にするのであった。
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