[3]園長列伝≪その3≫ 〜園長 VS マナー悪軍団〜(中編) [2016/11/25(金)] |
<近場の喫茶店にて>
トレジャーを後にしたのが午前11時。
それから園長と私は、時間潰しがてら近くにあった喫茶店に入った。
「当店こだわりの」と表記されたコーヒーをスルーしてアイスティーを頼む私に、喫茶店のマスターはやや不満そうであったが、私はコーヒーがあまり好きではないのだから仕方がない。
そんな事よりも、これから先の事の方が気になるのだ。
「明日以降はどうなるんですかね?」
まだ朝一の段階でそれを気にするのは少し性急な気もしたが、その他の話をする気にはなれない。
「大事な事は、今日の設定を影山がどう判断するかだな。」
キンパルは数回ビッグボーナスを引けば、そこに大きな設定差がある以上、低設定であることは見破られるだろうが、敢えて偶数設定にした吉宗や中間設定の北斗は正確に判別する事は不可能だろう。
展開次第では高設定だと勘違いしてくれるかもしれないし、低設定だと判断されるかもしれない。
だが、その判断結果を以て、影山が翌日の狙い台を考える以上、影山がどのような判断のもとそれを考えるかを知っておく事が、私達の直近の課題という訳だ。
「彼等がどのタイミングで朝一台から離席するのか、あるいは閉店間際まで打ち切るのかがポイントだな。 それを見て明日の作戦は考えよう。」
あるロジックで選んだ狙い台が高設定であれば、翌日以降も同じロジックで狙い台を選ぶし、それが間違っていると分かれば、翌日はロジックを組み直す。
言われてみれば、それは、自分達もいつもやっている事であった。
彼等が今日の設定をどう判断したのか、影山が翌日、これまでのロジックを組み直してくるのかどうかを我々が知る方法は、離席のタイミングから推測するしかない。
これをチェックするのが、この日の私の仕事となった。
<閉店後>
昨日と同じファミレスで、私はこの日の彼等の稼働状況と閉店間際の状況をまとめて園長と南店長に報告した。
〜彼等の稼働状況〜
●キンパルに座っていた4人は、初当たり(128G以降の当たり)を2回引いたところで全員撤退
●吉宗に座っていた3人は比較的粘ってはいたものの、17時頃までには3人とも天国モード天井抜けの200Gで止め
●北斗の3人のうち2人は設定4を終日打ち切り
つまり、見切ったキンパルと吉宗は高設定ではないと判断されたという事。
終日打ち切られた北斗の拳は高設定だと判断された訳である。
「影山は朝一札台の猪木とジャグラーの様子をしきりに気にしていました。」
最後に私がそう付け加えると、園長は南店長に向けて、明日の設定の方向性を語り出した。
我々の狙いは、最終日に北斗の拳の金札台に彼等を誘導し、その台だけを「設定1」にしておく事。
そう考えた時に、2日目の明日、我々が最もやりたい事は、
●金札は最高設定という印象を彼等に与える事
●その金札台に彼等を座らせない事
この2つであり、彼等に低設定台に座ってもらうというのはあくまでできれば……、という位置付けで考えるべきだと園長は語った。
「札台を今日と同じようにシマ単位で固めるか、明日は逆にばらけさせるか…… 店長としては何か希望は?」
園長の問い掛けを受けて、南店長の挙げた百景とスーパービンゴ、それに本日全6からの据え置きでジャグラーの3機種が明日の金札対象となる事が決まった。
「影山は、今日の金札台の動向をチェックしてます。 明日は朝一に札台を探してくる可能性もあるのでは?」
彼等はかなり朝早くから並んでおり、その意味で、他の客より先に台を選べる先行権を手にしている。
私には、彼等に金札台を取られてしまう危険性も大きいように思えた。
「そこは、入場が終わって客達の着席が済んだ直後に札を挿す事で対応すれば良い。」
そうすれば、彼等が苦手とする台にわざわざ座る事はまずないだろう。
彼等が他の客との関係で先行権を手にしているのであれば、店側には札をいつ挿すかを自由に決める事ができる権利、言わば後出しの権利がある。
影山が金札を巡り、どのような戦略を立てたところで、台を選択する時点では存在しない金札に対応する事は不可能である。
この時点で、既に勝敗は決しているかのように私には思えた。
「影山は特にキンパルについては、今日設定が入っていなかった事から、狙い台を変えてくる可能性が高いと思われます。 そうなった場合、影山の狙い台をピンポイントで予測するのは不可能。 明日もキンパルには設定は使いにくいかと思います。」
既に勝った気になっている私をよそに、園長は彼等が座るであろう台に低設定を入れる事を考えていく。
今日の結果を踏まえて、影山だったらこう考えるかもしれないという仮説が次々に挙げられていき、それに該当する台番が続々とノートに記載されていく。
結局この日は、前日のようにピンポイントで彼等の狙い台を絞る事は難しく、ノートに書かれた台番の数も前日の倍に膨れ上がっていた。
「あくまでも本番は3日目。 店のイメージの事もあるだろうし、全てに低設定を入れなくても良いんじゃないか?」
園長は死神のノートを見て、ふっと呟いた。
だが、それ以上に南店長の彼等に対する決意は固かった。
「可能性のある台は全部潰しておきたい。 その分、他を甘くするから大丈夫さ。」
あくまで、ノートに挙げられた全ての台を低設定にすると言う南店長。
その結果、彼等の好むキンパル、吉宗には大量の低設定台が。
又、北斗の拳も中間設定多数で稼働マジックに任せる配分、すなわち明日の北斗の最高設定は「4」という事が決まったのであった。
デザートに頼んだバニラアイスをつつきながら、私は今日の出来事を振り返る。
この時、私は悟ったのだ。
ホール側に目を付けられたら、ホール側にこの客は凹ましてやろうと狙われたら、客側のスロッターはまず勝つ事はできないだろうという事を……
だが、しかし……
(次回、逆転の2日目。そして、再逆転のイベント最終日。完結編へ)
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