[1]園長列伝≪その3≫ 〜園長 VS マナー悪軍団〜(前編) [2016/11/18(金)] |
〜デスロノート〜
そのノートに書かれた台番は翌日「設定1」になるという死神のノート。
<某日、某ファミレスにて>
時刻は夜の11時。
この日の稼働を早めに切り上げた私達は、翌日実戦を予定していたホールの下見を終えるといつものファミレスに入った。
「いらっしゃいませ。 何名様ですか?」
自分、軍団のリーダーである園長、それに私より一つ年下の加藤と、軍団内で紅一点の愛さん。
私は一人一人を指折り数えた後に「4人です」と回答した。
私達はレジの近くにある喫煙席に通された。
各々メニューを眺めてはいるものの、頭の中は、たった今下見をしてきたホールの状況と明日の狙い台の事で埋め尽くされている。
話題は専らその事で占められており、注文が決まる様子は一向にない。
「私、これにする!」
そんな私達を見かねてか、愛さんは自分の食べるものを決めると店員さんを呼んだ。
こうでもされなければ、いつまで経ってもオーダーできない私達の事を愛さんはよく分かっているからだ。
店員さんを目の前にして、ようやく焦ってメニューをめくる私だったが、そんな短時間では決めきれるはずもない。
結局、注文するのはいつもと同じミックスグリル、困った時には定番系の無難なメニューに逃げる事になるのもいつもの事であった。
「じゃあ、俺もそれ。」
私が店員さんに注文を告げると、自分で考えるのが面倒な加藤は決まっていつもそう言った。
私達にとってファミレスのメニューなど、なんでも良いのだ。
みんなで一緒にいる時間、ただただ共通の話題で熱く盛り上がる時間が楽しいだけだった。
一通り注文を終えると、話題は明日のイベントの話に移る。
明日から3日間は、さきほど下見をしたホール「トレジャー」のグランドオープン◯周年的なイベント。
このホールの特徴は、初日よりも二日目、二日目よりも最終日と熱さを増していく事で、最終日にはほぼ全台高設定ではないかという状況になるところにある。
私達がこのホールに足を運んだのは久々であったが、このホールの店長と園長は古くからの付き合いらしく、園長自身は昔からこのホールに通ってきたという。
その園長が熱いと言うのだから、間違いなどあろうはずもない。
毎年のお祭り騒ぎを見てきた園長の話を聞いて、私の期待は高まった。
「お待たせ致しました。 ミックスグリルのお客様?」
ミックスグリルが2つ、それに鉄火丼とグラタンがテーブルに運ばれてくる。
それぞれ箸を手に取り、食べ始めようとしたまさにその時、タイミング悪く園長の携帯電話の着信音が鳴った。
「今? 駅前のファミレスにいるよ…… 今から? うん、うん。 分かった。 じゃあ……」
料理が運ばれてきてから終電までの1時間、通常であれば、私達は翌日の作戦会議を行うところであったが、この日はこの電話によって少し事情が変わってきた。
「今から何かあるんですか?」
園長の通話の中に「今から?」という単語を見つけ、加藤は園長に問い掛けた。
「トレジャーの店長が今から来るらしい。」
トレジャーというのは、先ほど私達が下見に行ったホールである。
前述の通り、昔馴染みの二人である事から何やら相談があるとの事だ。
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