[1]「パチスロで食べていきたい」と言った若者の目指す先 [2016/11/4(金)] |
20歳の青年「武田」は、大学を中退しようか迷っていた。
大学を辞めてどうするつもりなのか、私がそう尋ねると彼は笑顔でこう言った。
「パチスロです!」
<10月某日 渋谷>
オレンジ色の灯りが印象的なカントリー風のイベントホールの一角で、私と武田は出会った。
この日は、私が大学時代所属していた軽音サークルのOB会。
武田は、そこに現役のサークルメンバーとして居合わせたのである。
私にとってはだいぶ年の離れた後輩ではあったが、武田の音楽の好みは私のそれに近く、また、パチスロという共通の話題もあった事から、私達が意気投合するのにそう長い時間は必要なかった。
一次会が終わると、二次会として近くにあった別の居酒屋へ。
二次会から参加するメンバーも多く、懐かしい面々との再会に気分を良くした私は、いささか酒を飲み過ぎてしまった。
「ラストオーダーです。」
幹事の声を聞き、今のうちにトイレに行っておこうと立ち上がるが、足元はふらふらとおぼつかない。
意識はハッキリとしているのだが、どうにも体が言う事を聞かないのだ。
そんな私がなんとかトイレから席に戻ると、武田は水を用意して待ってくれていた。
「良かったらどうぞ。 ところで、誠さん。 良かったらこの後少し二人でお話させて頂けませんか?」
大学も3年生になると、就活の事を気にするのは当たり前。
システム関係の仕事を希望する後輩から、当日・後日関わらず声を掛けられるのは例年の事で、それほど珍しい事でもなかった。
その為私は、武田の話もその類であろうと思いあまり深く考えずに返事をした。
「今日は飲み過ぎちゃったから、ソフトドリンクで良ければ付き合うよ。」
こうして二次会が終わると、私は武田と二人で適当な場所を探して歩き始めた。
金曜日の夜らしく、通りは私のような酔っ払いや武田のような学生で溢れていた。
武田は、その人ごみの先にマックの看板を見つけると、黄色いMの文字を指さして「あそこで良いか」と私に尋ねる。
返事を求めて私の顔を覗き込む武田に対し、小さく頷いた。
それから2分ほど歩いてマックに着いた。
私がアイスティーを手に座席に着くと、シェイクとポテトをトレーに乗せて武田が後からついてくる。
座席に座り、向かい合うなり武田は言った。
「僕、大学を辞めようか迷っているんです。」
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