[1]園長列伝≪その2≫ 〜初見のホールで狙うべき場所〜 [2016/9/23(金)] |
あの日、僕らは同じ夢を見ながら並んで夜空の星を眺めていた。
200X年3月某日、23時15分。
3月になったとはいえ、まだまだ肌寒い夜の駐車場で、僕は生まれて初めて寝袋というものにくるまった。
中はふかふかのお布団とまではいかないが、アスファルトの上で横になっても背中が痛くならない程度には快適な空間だった。
周囲を見渡すと、同じような恰好をした集団が既に100人はいる。
これから始まるのは、ワールドカップのパブリックビューイングか流星群の鑑賞会かといった雰囲気だ。
臨時に設置された灯光器を除くと、周囲には灯りらしい灯りはない。
最寄の駅までは徒歩だとおよそ30分。
コンビニまでの距離も1kmはあり、少し先へと視線を移せば何も見えない世界が続いていた。
「寝袋まで持ってきて、準備いいね。 おたくら何人で来てんの?」
カイロを揉みながら、私の隣にいた男が話し掛けてくる。
1、2、3、4……。
私は、私たちのグループの先頭に並んでいる園長から最後尾にいる自分まで、メンバー達の人数を数えた。
「10人です。」
私の答えを聞くと、男は手にしていたチョコレートの袋の中身を数えてこちらに差し出す。
「よかったら、みんなで食べて。 うちらは6人なんだけど、お隣同士一晩よろしくね。」
こうして見知らぬ者同士が仲良くなって、時にはメールアドレスを交換し合う。
自身の後ろに並ぶ者と仲良くしておく事で、開店時に後ろから追い抜かれるリスクを軽減したり、テリトリーの違う者から新しい情報を仕入れる等、いろんな打算もないではない。
しかし、そこは相手も同じなのでお互い様。
男の差し出してきたチョコレートにも、それなりの意味が込められているのだ。
言い忘れていたが、ここは某スロット専門店「X」の駐車場。
本日は、年一クラスの激熱イベント「レジェンドα来店」の前夜。
我々10人も、その後ろに並ぶ6人組も、明日の設定6を夢見て並ぶいわゆる徹夜組という訳だ。
同じ夢を見て同じ時を過ごすのだから、見知らぬ者同士でも、そして、打算を抜きにしても自然と話は弾む。
このコミュニケーションも徹夜の醍醐味の1つであった。
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