[2]園長列伝≪その2≫ 〜初見のホールで狙うべき場所〜 [2016/9/23(金)] |
我々も男達もこのホールに訪れたのは初めての、所謂「遠征組」。
熱いイベントという噂を聞きつけ、やってきたのはいいものの、設定師のクセであるとか、ホールとして力を入れている機種等は一切分からない状態であった。
だが、そんな事はイベント廻りをしている集団であれば日常茶飯事。
何も知らない状態から、どのようにして狙い台に当たりを付けて、軍団内のメンバーをどのように人数配分するのか、この日、私たちはそんな話題で盛り上がった。
閉店間際にメモした「X」の店内の地図を広げて、男は私に尋ねる。
「明日はどの辺が良いと思う?」
当然の事ながら、この質問に対して論理的に正しい解はない。
数学のように、誰が解いても同じように答えが導き出される類の問題ではないのだ。
もちろん、明日になれば結果的に正解が何であったかは分かるが、それはあくまで結果論。
毎回同じ答えに辿り着く訳ではなく、あくまで「正解である確率の高い低いがあるだけ」である。
「北斗の拳か吉宗か……」
私は、当時物凄い人気であった2機種を挙げた。
当時、この2機種はどこのホールに行っても看板機種扱いで、この日並んでいた「X」にも、他の機種とは比べ物にならない台数が設置されていた。
その中でも、北斗の拳の方がこの店のイチオシである事は、店内の内装やBGMを聞けば明らかだった。
「やっぱ、北斗ですかね。」
その時ホールが最も推している機種を狙う、セオリー通りと言えばセオリー通り、当然の選択のはずであった。
だが……
「30点。」
園長はそう言いながら、寝袋に包まった私にデコピンをすると、男の横に座り込んだ。
「北斗じゃなんでダメなん?」
人懐っこいその男は、いきなり現れた園長にも物怖じせずに食い付いていく。
「誠、オマエ北斗に座るとして、どの台に座るんだ?」
この店のパターンはどういったものなのか。
上げ狙いなのか? 据え置き狙いなのか? 高設定を並べて入れるのか? ばらして入れるのか? 中間設定を使うのか否か?
私達は「X」のクセを何一つ知らない。
「通路側の角付近、やはり目立つ位置の方が狙い目でしょうか。」
経験上、人目に触れる通路付近はやはり高設定の投入率が高く、通路から離れた奥の方にいけばいくほどその確率は低かった。
そして、人が多く集まる激熱イベントであればあるほど、その傾向は強い。
どちらも園長に教わった事である。
「確かにそうだな。 で、俺達の前には70人ほど並んでいる訳だが、俺達は通路側の角付近の台に座れるのかな?」
言われてみれば確かにそうだ。
「X」に北斗の拳は2シマ32台が設置されているにしても、前に並んでいる人達のほとんどが北斗か吉宗、あるいは設定6が丸分かりの南国育ちあたりに流れるであろう事は容易に想像できた。
「北斗はどうしても設定看破に時間がかかるのもマイナスポイントだが、それ以上に明日狙っちゃいけない理由がある。」
園長は、それが何か分かるかと言わんばかりに私の顔を見る。
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