[1]設定6の在り処≪後編≫ [2016/7/8(金)] |
(前編のあらすじ)
園長不在の中、「本日から日曜日までの7日間で全ての台に1回以上設定6を投入します!」というイベントに挑む私達。
設定6看破の容易なカイジを狙い稼働するも、3日目を終えてカイジには一切設定6が入らない。
15万の負債を抱え、立ち回りに苦悩する私の元に園長からの電話が入る。
ブルルッ、ブルルッ
枕元の携帯がバイブする。
私は、液晶に表示された園長の名前を見て飛び起きた。
「おぅ、お疲れさん。 なかなか上手い事いってないらしいな。」
私が電話に出ると開口一番、園長はそう切り出した。
他のメンバーからこれまでの状況は既に聞いているとのことだった。
「それで、明日はどうするつもりなんだ?」
園長の問いに私は、明日もカイジを狙うつもりだと答える。
それでなくては、今日までに投資した15万が無駄になってしまうからだ。
「15万は大金だ。 だから、それを無駄にしたくないという誠の気持ちも分かる。」
そう前置きしたところで一呼吸入れると、園長はやや語気を強めて続けた。
「だが、人生において一番大切なのは、間違いに気付いた時それを認めて方向転換する事なんだぞ。」
私はまだ、園長の言わんとするところを理解できずにいた。
「人は間違った道を進んでしまったとしても、大抵は手遅れになる前にその事に気付く。 だが、そこで引き返すという決断ができる人間は意外と少ない……」
3日間カイジに設定6は入らなかった。
そのカイジを明日も狙い続ける事が正解なのかどうか。
疑問を持ち始めていた事は確かだった。
「ここで引き返したら、今まで進んだ道のりが無駄になる。 そう思うから人は、もう少し進めば正しい道に出るかもしれないと自分を騙して進み続ける。 だが、間違った道を進み続けたところで正しい道に出る事は決してない。 そうしているうちにもう戻れないところまで来てしまうんだ。」
園長は、今日までに費やした3日間と15万は諦めろ、そして手遅れになる前に方向転換しろ、と言っているのだ。
頭ではそう理解をしても、15万という金額はまだ学生の私にとっては簡単に割り切れる金額ではなかった。
しばらくの沈黙の後、私は園長にこう尋ねた。
「なぜ明日カイジを狙ってはいけないのですか?」
3日目まで一切設定6が入らなかったのである。
明日も入らないかもしれない。
少しでもその可能性が頭をよぎるのであれば、違う道も視野に入れるべきである。
この事は、今まで何度も園長に教わってきたはずであったが、心がその答えを聞かずにはいられなかった。
「ここまで徹底して設定6が入らないのであれば、ホール側に何らかの意図があると考えるべきだろう。 例えば……」
園長は、カイジのように設定6が明白な機種であれば、ホール側は人が最も集まる土日に全6シマとして派手に使いたいと考える可能性や、普段は並ばない私達軍団メンバーが朝早くから並ぶ事でホール側からマークされている可能性を指摘した。
どちらの可能性も、あり得ないと否定する事はできなかった。
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