[2]設定6の在り処≪後編≫ [2016/7/8(金)] |
園長の話を聞き終えて黙り込む私。
カチッ、カチッと1秒ずつ枕元の目覚まし時計が時を刻むその音だけが鳴り響く。
そんな私が次の言葉を発するのを待ちかねてか、遂に園長は明日の事を切り出した。
「明日はジャグラーを狙え。 今日のうちからデータを取っておけば、まだリカバリーできるから。」
既に毎日稼働があって、まだ設定6が入っていないジャグラーをピックアップするよう、現地にいるメンバーに指示しておいたと園長は付け加えた。
あのホールのデータ機器では、当日・前日・前々日までしかボーナス回数を確認できない。
イベント初日のデータが確認できるのは今日までであり、ジャグラー狙いに切り替えるのであれば、ここがタイムリミットだった。
「他のメンバーとも話がしたいから。」
そう言い残して、園長は電話を切った。
切られた電話の液晶に表示された通話終了の文字を漠然と眺め、園長の言葉を振り返る。
このままカイジを最終日まで打ち続けていれば、いつかは設定6が入るはず。
その日はきっと明日に違いない。
明日こそは……
そんな思いを完全に断ち切れた訳ではなかった。
うつ伏せになって枕に顔を押し付け、私は足をバタバタと動かした。
「大切なのは、間違いに気付いた時それを認めて方向転換する事。」
大切なのは、より勝算のある台で勝負をする事であって、カイジの設定6に座る事ではない。
今日まではカイジこそが最も勝算のある台だと思って稼働をしてきただけで、その前提が変わったのであれば、これ以上カイジに座り続ける必要はない。
それこそが方向転換する勇気なのだ。
園長の言葉を何度も何度も反芻し、その結論に至ったのが先か後かはわからない。
いつの間にか私は、着替えもせずに眠りに落ちていた。
〜翌日〜
この日、私は誰よりも早くホールに着いた。
その私を、ビルの隙間から顔を出した太陽が照らし出す。
今日も暑くなりそうだ。
「今日はジャグラーを打った方が良いと思うんだけど……」
次に現れたメンバーは、私の顔を見るなりそう告げた。
3人目も4人目も……8人目のメンバーも、それに異を唱える者はいなかった。
前日までにピックアップした狙い台は全部で15台。
イベントが残り4日間である事を考えると、1日あたり4台弱設定6が入る計算になる。
設定看破の容易さという利点はあるものの、カイジは同じ計算をした時に1日あたり設定6は2台の計算。
しかも、当時のゴージャグの機械割はフル攻略で116%。
111%のカイジと比べてどちらが優秀かは火を見るより明らかであった。
「なぜ、昨日までカイジに拘っていたのだろうか?」
そんな事を考えながら、開店時間を迎える。
私達は、カイジのシマに向かう曲がり角を通り過ぎ、ホールの1番奥にあるゴージャグのシマへと向かった。
追随してくる客はほとんどいない。
余裕をもって下皿にライターを置くと、今日こそはという思いでサンドに千円札を投入する。
そして、レバーを叩く……
次のページへ
【 6の付く日はお先に失礼します 】 メニューへ