[3]設定6の在り処≪後編≫ [2016/7/8(金)] |
「当店はまもなく、午後10時45分のお時間を持ちまして閉店とさせて頂きます。」
この日初めて、私はこのホールでこのアナウンスを聞いた。
それは、この日初めて、私達が推定設定6と思える台に辿り着けた事を意味していた。
結局この日、私達は3台のゴージャグの推定設定6を終日打ち切り、10万円ほどの負債の回収に成功した。
換金所を出て、近くのファミレスに入ると、私達はその日の戦果をテーブルの上に並べ、8等分に分配した。
当時まださほど目押しに慣れていなかった私も、リプレイ外しをノーミスで終日打ち切った充実感に酔いしれていたのであろう。
普段であれば1番安い目玉焼きハンバーグを注文するのであるが、この日だけはサイコロステーキを注文した事を覚えている。
残る3日間、私達はカイジとジャグラーに半分ずつ人を割り当てて稼働した。
いずれかの機種に拘る事なく立ち回ったのが功を奏したのか、いつの間にか収支はプラスに転じ、それが最終日には7日間トータルで見ても十分な日当と言えるまでに至っていた。
もちろん、その裏に園長のアドバイスがあった事は言うまでもないが、それでも駆け出しの私にとっては大きな自信につながる出来事であった。
「大切なのは、間違いに気付いた時それを認めて方向転換する事。」
人間関係で言えば、友人と喧嘩をしてしまったとしても、自分が悪かったと気が付いた時に意地を張らずに謝れば、たいてい仲直りできる。
それが、手遅れにならない為にする方向転換だ。
株や為替の世界には、損切りという技術がある。
自分の買った株の価値が下がっている時に、損を承知で購入した時の価格よりも安い価格で株を手放す事だ。
この方向転換ができないと、明日にはきっと値上がりするかもしれない、明後日こそはきっと、と株を持ち続けてしまう。
そして、そのうちにいつの間にか会社は倒産してしまい、回収不能な負債だけが手元に残ってしまう……
競馬で負け続けると、どんどん賭ける金額が大きくなってしまう人。
出るまで低設定台で粘り続けてしまうスロッター。
皆、間違いに気が付いた時に、そこまでに費やしてきたものを投げ捨ててでも方向転換する事が必要なのは同じである。
先日、とある年一の激熱イベントの時の事。
並び順で入場のホールで、前日の閉店時から徹夜をして先頭に並んでいたお兄さんがいた。
お兄さんは、イベント時にはかなりの高確率で設定6が入るバジリスク絆の角台に座った。
そして、その台を終日打ち切った。
その時のスランプグラフがこちらである。
見れば、携帯でカチカチアプリを使い、設定判別をしているようであったし、見た目も若く上手そうなスロッターであった。
お兄さんほどのスロッターであれば、途中でこの台が高設定ではない事くらい容易に判別できたのではないだろうか。
にも関わらず、マイナス7,000枚に手が届きそうになるまで、お兄さんをこの台に引き留めたものは何だったのであろうか?
「徹夜をしてまで取った台なのだから……」
「もう少し回したら爆発するかもしれない……」
そんな発想がお兄さんにあったかどうかは分からない。
現実にあるのは、その絆が10万円以上のお金を飲み込んだというスランプグラフだけである。
徹夜までしたという苦労に拘らず、方向転換できていたら……。
低設定だから離席するという、普段なら当たり前の行動ができていたら……。
いまさらながらにそんな事を考え、10年も前の園長の言葉を思い出す私が、徹夜をしたお兄さんなのかどうかは皆様のご想像にお任せしよう。
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