[2]50歳凄腕専業スロッターの過去/立ち回りクイズ正解発表 [2016/4/22(金)] |
園長はくわえていたタバコを手に取ると、頭上にふっと煙を吐いてから私の問いに答えます。
当時の園長は、この仕草がとにかく印象的でカッコよかったのです。
「金は、食べていくのに困らない程度に持っていればいい。 そのくらいの金はサラリーマン時代の貯金があるからな。 だけど、お前達はそうじゃないだろ。 そういう若い奴らが金に困って、人生を棒に振らない事の方が大切だっていう変わり者なだけさ、俺は。」
まだまだ「オヤジ狩り」なんていう言葉が生きていた頃の話。
園長の話は大袈裟でもなんでもなかったし、事実ここでの収入を当てにしている者も少なくはありませんでした。
「金を稼いでいる奴が偉い、金を持っている奴がすごいんだ」
そう思ってパチスロを打っていた当時の私からは、逆立ちしても出てこない発想。
だが、現実に金を手にしている園長は「金より大切なものがある」と言います。
この時、私は察したのです。
(この人が園長と呼ばれているのは、風間巌に見た目が似ているからというだけではないんだ)
それ以来、私もこの面倒見の良い男の事を親しみを込めて「園長」と呼ぶようになったのです。
園長は続けて言いました。
「逆に誠は、俺の立ち回りを盗んでいいんだからな。 俺が勝ち続けている理由を正しく理解して、自分がピンで打った方が稼げると思った時にはいつでも軍団から出ていっていいぞ。 誠までコイツらを養う為に頑張る必要はないからな。」
「じゃあ、いつもどうして設定6の台が分かるのか、教えて下さいよ。」
私以外にもこの質問をする者はたくさんおりました。
しかし、園長がその問いに答える事は一切ありませんでした。
なぜか?
ある時酒の席で、その理由を園長は教えてくれました。
「俺がどうやって設定6を捜しているか。 答えを俺が全員に教える事は簡単だ。 ただ、パチスロに限らず、世の中は教えられた事の真似事だけで成功できるようにはなっていない。 結局、自分で一生懸命に考えた事しか身にはならないんだ。 それ無しに、俺から答えだけを聞いて軍団を出ていこうとする奴は絶対に負け組になる。 俺は、ここにいる全員を負け組にはしたくないから、自分で気が付く奴にしか教えないんだ。 放っておいても気付く奴は気付くし、気が付かない奴は一生気が付かない。 こればっかりは俺がどうこうしてやれる問題じゃないんだ。」
ただ漠然と答えだけを求めていた私に、園長の言葉が突き刺さりました。
楽して結果だけを、現金だけを得られれば良い、それがスマートなやり方だと私は勘違いしていたのです。
大切なのは、「楽して答えだけを知る事ではなくて、それを導き出す力を付ける事」。
この言葉があったからこそ、今こうして連載を頂いて、稚拙ながらも文章を書けるくらいには物事を考えられるようになったと思っていますし、この姿勢はパチスロだけでなく仕事にも活きていると思います。
これが私、伊野谷誠のパチスロの原点。
パチプロを社会のゴミのように言う人もいますが、社会に出た今でも、この言葉以上に大切だと思える言葉を言ってくれる人に私は出会っておりません。
結局は、仕事をしている事が凄い事でもなければ、部長だとか社長だとかいう肩書きが人の心を動かす訳でもないと思います。
どれだけ深く考え、考えた事を実践してきたか。
その積み重ねが、その人の価値になるのではないでしょうか。
私自身は全くその域に達しておりませんが、いつか誰かにそう思ってもらえたらいいなという想いで、これからも原稿を書き続けたいと思っております。
<先週のクイズの正解発表>
先週は少しでも皆様にお楽しみ頂ければという事でクイズを出題させて頂きました。
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