俺は興奮状態で店に戻り、コインが盗まれたことを店員に説明し、すぐに警察を呼んでもらった。
そして勝手に交換した店員を呼びつけ、思い付く限りの罵声を浴びせた。
ここでは書けないほどだ。
犯人は捕まるはずだ。
ホールには必ずついている。
ビデオカメラだ。
以前聞いた話によると、指の先まで鮮明に映し出せるほどの性能らしい。
それに警察が絡めば時間の問題だ。
20万以上の金を盗られたのだ。
看過はできない。
しばらくすると警官が2人やってきた。
俺は一部始終を説明し、一緒に犯人の映像を観ることを許可された。
少し不思議だった。
前にICカードを盗まれた時には映像を観せてはくれなかったし、駐車場で当て逃げされた時も、警察を呼んだにも関わらず監視カメラを観せてはもらえなかった。
その時俺は2回とも、「知っている顔が映ってるかもしれないから」と、事件解決の糸口になる理由を訴えたのに、企業秘密だからと言って断られているのだ。
今思えば、窃盗や当て逃げは立派な犯罪なのに、企業秘密と天秤にかけられて断られるのはおかしな話だ。
やはりパチンコ店はブラックボックスだ。
そして協力的だった俺の意見を擁護しなかった警察にも疑問が沸く。
話は戻るが、こうして俺は初めてホール内の映像を観ることになった。
被害額がデカく、勝手に交換した店側の過失もあるからなのか、拒まれることなく観せてくれた。
しかし、映像を観た俺は唖然としてしまったのだ。
録画されてるのはモノクロ映像。
しかもひどい低画質・・・。
これは男だと認識できる程度のゴミレベルで、顔などはとても確認できない代物だった。
換金している女も、帽子を被っていたためになおさらだ。
換金所のカメラも同じだった。
斜め上からの映像しかなく、顔など見えていない。
なぜなんだ・・・
指の先までも映し出せるというのは都市伝説なのか・・・
それとも不正行為の疑いがあるときだけハイスペックに切り替えられるのか・・・
どちらにせよ、これでは意味をなさない・・・
そういえば、以前観たゴトのニュース映像も画質が荒かった。
そしてたまにホールの入り口に貼ってあるゴト師の写真もとても画像が荒い・・・
なんなのだ・・・
これがパチンコ屋の防犯カメラか・・・
とんだ期待はずれだ・・・
俺は残念を通り越えてがっかりした。
でも怒りは収まらない。
俺は店長に弁償しろと詰め寄った。
人のお金を勝手に他人に渡したのだ。
当然だ。
するとまさかの「弁償はできない」の一点張り。
事件として警察に犯人を捕まえてもらい、犯人から返済してもらう。
それ以外は弁護士を挟んでからどうこうと言うのだ。
信じられなかった。
この事件はホールの過失ではないのか。
なぜ俺とホールが弁護士やら裁判やらの話になるのだ。
裁判するのは犯人だけでいいはずだ。
俺は被害届を出さずに家に帰った。
ぐだぐだと話し合い、その後あれこれ考えているうちに全てが面倒くさくなり、時間が無駄に思えてきたのだ。
所詮は賭博場で浮いた金。
まともには取り扱ってはくれないだろう。
そんな投げ槍な部分もあったかもしれない。
それに、犯人が捕まったとしても多分金は返ってこない。
道がそれた連中を相手にしても、逆恨みされるのが関の山だ。
ホールとの裁判も、時間と金がかかるだけで全額弁済にまではならないだろう。
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