時刻は16時を過ぎた頃だったろうか。
ボーナスが終わり10ゲームほど回した所で、筐体に人影が映っていることに気づく。
シルエットからして客のようだ。
いつから後ろに立っているのだろう。
しかし、立ち止まって見るにしては少し露骨だ。
マナー違反とまでは言わないが、感じが悪い。
爆発台を見つめる客はよくいるが、こんなに真後ろに立って見続ける客はそういない。
「まあ、そのうちどこかへ行くだろう」
俺は気づいてないふりをして打っていた。
すると・・・
「出しとるねー兄さん」
その客が突然話し掛けてきたのだ。
俺はびっくりして振り向き、そこで初めて目が合った。
そいつは見た目30歳前半、ニット帽にダウンジャケット、ジーパンにスニーカーというカジュアルな服装をした男だった。
初めて見る顔だ。
両手をポケットに入れ、ふてぶてしい態度で俺を見下ろしている。
そしてこの瞬間俺は、こいつは間違いなく自分にとって害のある男だと直感で感じた。
そもそも、パチンコ屋で知らない男が話しかけてくる。
いい話のわけがない。
俺は毅然とした口調で言葉を返した。
「こういうのもなけりゃね」
ここでニコリと笑って去ってくれるのを期待したが、男は返事もせずうなずきもせず、表情も変えずに黙って立っている。
イヤな感じだ。
俺はまた前を向き、淡々と打ち始めた。
その時だった。
「ゴトやっとるやろ。」
男は俺の耳元に顔を寄せ、突拍子もないことを呟いたのだ。
俺は、「えっ?」というような顔で男を見た。
なんなんだこいつは・・・
いきなり何言ってるんだ・・・
俺がゴトやってたら、口止め料出せとでも言うつもりなのか・・・?
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