[3]有機ピエロとダマし合う [2013/10/4(金)] |
今から30年以上前、俺がまだ将来を嘱望されていた幼き頃、「自動販売機の中には人がいる」という噂が子供達の間にまことしやかに流れたが、皆が年齢を重ねるにつれそれはデマだったと気づくようになった。
しかし、この「ジャグラー」という無機的な機械の内部には、間違いなく有機物がいる。
いや、そうに決まってる。
あの時、とあるホールで出会った「ぬらりひょんの親分」を思い出す。
あの親分がヒントをくれたのだ。
次なる作戦。
「ベットボタン点灯5回目でプッシュ作戦」作戦発動だ。
何故5回目なのか、その理由を聞きたいなどと思ってはいけない。
「ほんとは何の根拠も無いんだろ」などと言うのはもってのほかだ。
返す言葉が無いではないか。
ボーナス終了後、少しの間を置いてベットボタンが点滅し始める。
その点灯5回目のタイミングでボタンを押すのだ。
するとどうだ。
6ゲーム目でまた告知ランプが点灯だ。
やはり、常にピエロの裏をかいていかないとダメなのだ。
俺もこれに気を良くし、今度こそはとリーチ目を狙う。
が、リーチ目は停止しない。
そのまま200ゲーム程ボーナスを引けない。
ここで気がつく。
「リーチ目ぇ〜」と気合いを入れて打っているからダメなのだ。
気を抜かなければいけないとわかったではないか。
気持ちを切り替え、間違っても気合いを入れないようにと気合いを入れてレバーを叩く。
しかしピエロは沈黙を保つ。
「くっそ〜ピエロめ。 俺がこんなに気合いを入れて気合いを入れないようにしてるのに…。 何が悪いんだろ。」
さっぱりわからない。
他に良い手は無いものか。
「そうだ。 何か光るモノを見ながらレバーを叩くってのはどうかな。」
我ながら名案である。
そこで、台の周辺に何か光る物は無いかと探してみる。
「あ…あった。」
キラリと光る、隣のおじさんの見事な頭だ。
真横を向けば前方50cm程に位置しているではないか。
これを使わない手は無い。
背後のシマの台を見る振りをして振り返り、おじさんに気づかれないようにその輝く頭皮を見つめながらレバーを叩く。
これも本当に実践した。
その結果…
「ダメかぁ」
効果が無かったのには理由がある。
確かにおじさんの頭皮のきらめきはたいしたものだ。
しかし、バーコードよろしく僅かな頭髪が頭皮を覆っている。
この毛髪が、おじさんが放つ輝きを鈍らせたに違いないのだ。
だがその毛髪もほんの僅かだ。あと10年もすれば使い物になるだろう。
「10年経ったらまた会おう、おじさん」
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