煙草の先端から煙が立ち昇る。ダイキチはこの煙が大好きなのだった。口から吐き出される煙は灰色に濁っているが、煙草の先端から立ち昇る煙はうっすらと青いのだ。一本の絹糸のような滑らかな、そして不規則な曲線を描きながら、すうっと立ち昇る青白い煙を眺めるのが、ダイキチは大好きなのだった。
「おっ、珍しく頭を使ってる顔だな、ダイキチ」
「う〜ん、頭の中ではなんとなくわかってるんだよ。ただ、それを文章にできないんだよな」
「お前、年に一度くらいしか頭使わないんだからよ、知恵熱出して倒れるなよ」
「ちょっと待ってよ」
「ん?」
「今考え中なんだから黙っててよ」
「……お前が呼び出したんだろ、俺を」
「う〜ん…なんか、ここまで出かかってるんだよ、ここまで」
「どこだよ」
「ここっ」
憐れみと共にそれとは別の感情をも込めた目つきでヨシツグはダイキチを見つめる。
ダイキチは灰皿に向かって、ペッと煙草の葉を吐き出す。ダイキチの煙草は両切りである。どうしても口の中に煙草の葉が入ってきてしまう。
「お前、ゲーセンでいっぱい出たんだろ?それを書けば?」
「ゲーセンはヒミツなんだよ」
「悪いヤツだよなぁ。いいのか?そんなんで。でもお前、実際楽しそうだったぞ?」
「そりゃそうさ。ゲーセンだもん、ホールよりは設定も良いんじゃないかな。設定が良ければ楽しさ」
「負けても楽しいって言ってたじゃんか、いつも」
「そうだけどさ、設定が良ければなおさら楽しい」
「ゲーセンのパチスロは設定が良いのか?」
「たぶん。アミューズメント仕様ってのもあるからわかんないけど、平均してホールより良いんじゃない?」
「じゃあお前…」
「だから、ちょっと黙っててよ」
「…ゲーセンのパチスロは楽しい、って書けば?」
「ああもうっ………えっ?」
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