煙草を吸っている時は頭がよく働く、というのがダイキチの持論である。とは言え、それはとあるミステリー小説の主人公の言葉を真似ているにすぎないのだが、ダイキチなりにそれを実感しているようではあった。
ダイキチの頭の奥で何かが切り替わったようだ。
「でもあれか、ダイキチが記事を書くのはパチスロ専門のサイトなんだよな?じゃあゲーセンの記事なんて書けないか。実際にパチ屋で打ったハナシじゃないと。それにゲーセンじゃ金が儲からないもんな」
「う〜ん、別にゲーセンのハナシでもいいんだろうと思うけど」
「つーかお前さ、金が儲からないのにずいぶん楽しそうだったな」
「うん、そうだよな…」
ダイキチはヘビースモーカーというよりはチェーンスモーカーである。灰皿で煙草を揉み消しコーヒーを一口飲むと、またすぐに新しい煙草をくわえる。
「うん…楽しかった」
「儲からないのにか?」
「うん。儲からないけどさ、楽しいんだよ」
「さすがスロバカだな。とは言っても、確かに楽しいっちゃあ楽しいか」
「そう、儲からなくても楽しい」
「そうだなぁ。確かに右から魚群がサーッと出てくりゃゲーセンでも嬉しいわな」
「そうだよ。たとえゲーセンでも、たとえ儲からなくても、下段黄7から左中段チェリーだったりするとオオッ!ってなる。つまりそれが…」
「何のコトだ?」
「それが…パチスロ本来の楽しさなのかな」
「何のコトだかわかんねぇけど、ダイキチの言いたい事はわかる。たぶん」
「つまり…儲からなくても楽しさを感じてるって事は…なんて言うか、パチスロの…ギャンブル性?って言うのかな、儲けとは関係ない部分、そのギャンブル性以外の部分に楽しさを感じてるって事じゃないかな」
「じゃあダイキチ、ゲーセンだと儲からないけど設定が良いからパチスロ本来の楽しさを味わえる、って方向で書くのは?」
「おぉ、さすがヨシツグ」
「ふんっ。ま、頑張って書けや」
「俺がっ?」
「アホかっ。お前がライターだろ!」
「えぇー…」
「えーじゃねぇっ」
「……ゴーストライター…」
「てっ…てめぇ、それがどういう事かわかってんのか」
「え?ゴーストライター…。お化けのライター、だろ。俺だってそれくらいの英語は…」「そういう事じゃねぇっ」
「あ、ゴーストの部分しか訳さなかった」
「どアホぉっ」
「わかったよ…。自分で書くよ」
「当たり前だっ」
煙草は次第に短くなってくる。両切りの煙草とは、つまりフィルターが無い。人差し指と中指で煙草を挟んでいると、煙草が短くなってくると指が熱くなる。そしてフィルターが無い為に、両切りを吸っていると煙草を挟んでいる指が茶色くなってしまうのがダイキチには嬉しくなかった。
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