ホールではなくゲームセンターへ行こうというのだ。ホールでパチスロを打つのとは違い、ゲームセンターでは一銭の得にもならない。しかし、ダイキチには何やら思惑があるらしい。
「どうせなら勝ちまくる日記を書きたいじゃんか。だったらホールよりゲーセンだろ。ゲーセンなんてほとんど行ったことないから、ゲーセンのパチスロってどうなのかよく知らないけど、でもゲーセンの前を通ると、全台設定6!とか書いてあるもんな。だったら勝ちまくりじゃん」
どうやらゲームセンターでパチスロを打ち、そこで勝ちまくるという腹積もりのようである。
「それに…へっへっへ、ゲーセンで出しまくって、それをゲーセンでの結果としてじゃなく、あくまでもホールでの実戦レポートとして記事に書いちまえば…へっへっへ。読んだ人はきっと、おぉ〜このダイキチってヤツすげぇじゃん。毎回大勝ちしてるよ!って思うだろうなぁ。ひっひっひ」
専属ライターにあるまじき悪辣な考えである。ゲームセンターでの結果である事を隠し、それをあたかもホールでの実戦であるかのような記事にしようというのだ。
「だいじょぶだいじょぶ。バレる訳ないんだから。ま、だったら最初から打たずに完全な捏造だってバレやしないだろうけど、でも一応は打った結果を書いた方がリアリティがあるよな、たぶん」
阿呆は阿呆なりに悪知恵を絞っていると見え、あくまでも騙し記事にリアリティを持たせようとしているようだ。
「よっし。そうと決まればいざ勝負」
そう言ってみたものの、ダイキチにも少し気になる事があった。以前インターネット上でゲームセンターのパチスロに関する話題を読んだ事があった。それによれば、ゲームセンターに設置されているパチスロ機は実機本来の仕様ではなくアミューズメント仕様になっている台が多いらしい。
そこで、家を出る前にダイキチはインターネットで調べてみた。
「なるほど。やっぱりアミューズメント仕様ってのはあるみたいだな。でも、ゲーセンによっては実機をそのまま使ってる場合もあるのか。ALL設定6!とか書いてあっても実際にはどうだかわからない、ってか。でも…ま、ゲーセンならたとえ万枚分出たってそれをホールのような特殊景品に交換できる訳じゃないし、ゲーセン側も損をする訳でもないだろ。だから…うん、きっといっぱい出るだろ。不確実なホールより、その方が楽しいや」
親譲りの能天気さを持つダイキチである。呑気に鼻の下を伸ばして家を出た。行き先は、家の近くにある錆びれたゲームセンターだ。
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