【第二の手記】
スロットを打っている最中だというのに、誰かがこんなことを言っていたのを思い出していました。
『狂気の沙汰ほど面白い』
この言葉の真意は、自分ごとき凡夫には知るよしもない事なのであろう。
しかしながら少しはおかしくならないと、もうこの先やっていけない。
そう思っていたのです。
いや、既に怪しいものである。
本当はきっと、ブラクラの件から私は、どうかしているのでしょう。
何を打っても絶対勝てるという、奇妙で歪な自信だけが残ってしまい、実際のところ何をしても勝つことは出来ず、今現在、6000枚以上は偽物語、マジハロ5に吸いとられている始末。
あれだけ勝ったのにもかかわらず、これだけ負け続けていて、まともに居られようものですか。
さて、とにもかくにも初当たり。
この台で勝つにはスーパーキャッツラッシュに突入させる必要がある。
その為にはキャッツボーナスを引き、20Gのその間に7を揃える。
これが出来なければ、この台では勝てない。
それが出来れば、とても楽しくなってくる。
逆に言えば、そこしか楽しいところは無いのである。
これこそまさに、オリンピアの台と言ったところなのだろう。
このスタンスが多くの人々を虜にしてきている。
AT中にのみ、その楽しさの全てを余すことなく詰め込み、他を削る。
まったくもって潔いではありませんか。
自分は始まって早々、ここぞとばかりに多くのレア役を引きました。
強チェリーに、強スイカ。
キャッツボーナスを獲得するために、私は血眼になりながらレバーを叩きました。
それから数G後、キャッツボーナスが確定したのです。
瞬間、私はこのボーナス中に7を揃えることの為、沢山の事を犠牲にしました。
「晩御飯は抜きますから7が揃いますように」
「トイレをあと1時間我慢しますから、7が揃いますように」
といった願掛けのようなオカルト染みた事をひたすら考えておりました。
願掛けのおかげなのでしょうか、レア役は引けるのでした。
なのに7はいっこうに揃わないのです。
ここでも強チェリーを二度ほど引き込む。
しかし7は揃う気配がなく、もうこうなると溜め息も出ません。
しかしキャッツボーナスの終了画面を見て、おや?と私は思いました。
スーパーキャッツラッシュのランプが点灯しているじゃないか。
あまりの嬉しさから一人でそう声に出していました。
高いハードルを二度も越え、やっとこさ辿り着いたスーパーキャッツラッシュ。
その内容とは、20Gの間に約1/9.9のスーパーキャッツボーナスを引き続けるゲームです。
そして20Gのスーパーキャッツボーナス中にまた7を揃え、レア役等でスーパーキャッツラッシュのG数、通常ARTのG数を増やしていく、こういった具合の内容です。
つまりはここで頑張ることが出来るのなら、無限にG数は増えていき、万枚も夢ではないのです。
無事に駆け抜けることは免れて、二度目のスーパーキャッツボーナス中、赤いシャッターが閉まったのでした。
一体どれくらいのG数が上乗せされるのだろう。
しかしこの台のシャッターが閉まる瞬間というのは、なかなかにして筆舌にし難いものがあります。
まどマギの様にバシャーンと勢いよく閉まるわけでなく、レバーオンの瞬間、ぬるーっと目で追えるスピードで閉まる。
まるで自動ドアの様に。
これが気持ちいいのです。
こちらに、喜びまでの一瞬の猶予を与えるシャッターなのである。
その数G後のこと。
自分はもう、果てる寸前の高鳴りを覚えました。
これ程までに絶頂を迎えそうになったことはいまだかつてありませんでした。
そして気が付けば、随分と長いことスーパーキャッツラッシュを続けてこれている。
しかし名残惜しくも、スーパーキャッツラッシュはほどなくして終わりました。
平均はどれくらい続くものなのかは知らないけれども、これだけ出来れば上等といったところであろうか。
そしてプッシュボタンを押す。
嗚呼、なんてこった。
私は驚き、またしても声に出していました。
そしてその結果として、これ程までに多くのメダルを獲得するに至りました。
正にハイリスクハイリターンといったものである。
しかしながら、精神的にとても疲れた。
その日は、珍しく勝てた喜びより、もうこれ以上負けることが無いよう、暫くはパチスロをおやすみしようかと、そう思い家路についたのでした。
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