全て正直に話そう。
私の財布の中には2万5千円はいっている。
まぁ、ごく普通の金額だと思う。
ただ、これが持っている全ての金だというと話は違ってくる。
ボーナスをごまかし増やし、出張旅費を別口座に振り込んでもらい増やし、こつこつ貯めていたへそくりがついに底をついてしまう。
私は今、嫁から必要最低限のお金しかもらえてないため、この2万5千円が無くなってしまったら、次にへそくりを貯めるチャンスがくるまで、何も出来なくなってしまう。
打てなくなるのは辛い…
10年以上行ってきた日課が消えるのは辛い…
軍資金のないライターなんて聞いたことがない。
必然的に、このお金がなくなる時はライター続行不可能に陥る。
私なんぞ需要がないのは分かっている。
ただ、一度始めたことをそう簡単に終わらせたくはない。
5スロで少しずつ増やそうか?
そんなことも考えたが、そうそう上手くいく気がしないし、5スロでとどめを刺されるのはごめんだ。
私は勝負に出ることにした。
2月某日、マイホの旧イベの日。
私は振替休暇を取得した。
そして、ホールに並び、緊張感マックスの中、入店した。
こんなに痺れる状況は久しぶりである。
いやっ、初めてかもしれない。
学生の時にお金がなくなるまで打つのは日常茶飯事。
あの時は笑っていられた。
周りの勝ってる人間に借りることも出来たし、次のバイト代が入ればまた問題なく勝負が出来る。
しかもあの頃は、金がないことすらほんとに笑えた。
100均でパスタとパスタソースを買う。
それで十分腹いっぱいになれる。
タバコを買うかおにぎり買うかで迷ったときもあった。
全然悔しくも悲しくもなく笑えていた。
独身のときもそうだった。
金が無くても自分だけが食っていければ問題ない。
次の給料まで我慢すればいいだけの話。
だが今は違う。
家庭を持った30手前の男。
さすがに金を友人に貸してくれなんて口が裂けても言えない。
後輩と飲みに行けば奢らなければいけない。
だから、素寒貧になるわけにはいかないのだ。
肝心の打つ機種は、ハーデスと決めていた。
これだけの資金でハーデスは無謀なのはわかっている。
ただ、新パネルが導入してから初の旧イベということ。
店長ブログでハーデスがありそうなにおいを醸し出してたこと。
前に並んでいた常連たちがこぞって狙いに行くと話をしていたこと。
そして何より、中途半端になぶり殺されるよりは一発で仕留めてもらいたかった。
勝つか負けるか。
それだけでいい。
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