[2]スロッター・ジャズ [ 2015/12/13 ] |
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件名:
男爵です
本文:
後輩(個性派女子)ちゃんが気をつかってアドレス教えてくれました。
今日は突然変な質問してごめんなさい。
『マルス』の設定を何故知っていたのかが気になって、あんな質問をしてしまいました。
またシフトが一緒になった時にお話しさせて下さい。
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件名:
瀧本ですよ〜
本文:
おー男爵っち、わざわざありがとう(^^)
ちょっとびっくりしちゃったけど、わたしの方こそ気まずい思いさせてごめんね。
わたしは『マルス』でもバイトしてるんだよ。
でも設定を知ってるわけじゃないんだ、実はね…
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私の疑問は一応の解決をみた。
瀧本さんは『マルス』でもバイトをしていたのだ。
では、なぜバイトが設定を知ることができたのか。
話をまとめると以下のようになる。
『マルス』は地方の小規模チェーン店。
チェーンの体質なのか店長の性格かはわからないが、「明日の月一イベントは本気出す」「中間設定散らしてみるかー」みたいなレベルのことはバイトにも言う。
もちろん事前に詳細な設定状況までは教えてもらえるわけは無く、設定変更は閉店後の時間に店長がおこなう。
バイトあがりの退出通路途中に、ホール内と連結している空調を兼ねた小さな窓があり、距離が遠く死角も多いが、ホールの一部の様子がなんとなくわかる程度にはなっている。
とはいえ露骨に覗き込んだりすれば周囲に気づかれるので、歩きながらチラ見程度しかできない。
結果、「○番台が設定6」とはいかないまでも、「北斗のシマの真ん中あたりで作業していた」「ジャグラーはノータッチ」といった具合にはわかるらしい。
設定を知っているわけではなく、「何かありそう」「設定を変えている可能性が高い」という場所がわかる程度だった。
ちょっと拍子抜けした実態だったが、私はここであることに気付く。
イベントの信頼度、見抜けるんじゃないか?
当時は今のようなイベント規制は無く、ほとんどのホールが毎日のようになんらかのイベントをおこなっていた。
「北斗吉宗祭り」
「ジャグラーオール設定バトル」
「6のつく日はアンコウ大漁デー」
そんな広告が踊り、具体性の全くないイベントや、いわゆるガセイベントも多かった。
『マルス』も当然毎日イベントをおこなっていた。
ここで私は、彼女からの情報とイベント対象機種が合致した日を重点的に攻める方法を思いつく。
二つの情報を織り交ぜた時の決定的な違いは、その信頼度。
少なくとも設定を動かしている可能性は極めて高い。
彼女のシフトもあり、毎日情報が入るわけではないが、この時点で普通にメールのやりとりをする程度の仲になっていた私は、なにか情報がある時は教えて欲しいと頼んでいた。
それから数日たったある晩、メールが届く。
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本文:
明日は北斗の端の方で動きがありそう。
馬のパネルのシマかなー
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次の日のイベントは北斗のイベントだった。
私は生まれて初めて朝一の並びを決意する。
朝から自転車を走らせ『マルス』に駆けつける。
並びは十数人程度と多くない。
当時どの店もメインで稼働していた『北斗の拳』のイベントは珍しくもなく、競争率は低かった。
黒王パネルの角台を抑えて稼働を開始する。
動きがあると言っても、設定1→設定1の打ち変えもあるため油断はならない。
結果として私は、終日稼働して+6000枚を叩きだす。
21時過ぎには高設定であることを示唆するケンシロウの札が刺さっていた。
(余談だが、当時の高設定示唆の札はそれ自体がガセなことも多かった)
この立ち回りは大成功だった。
その後私は、この2つの情報をリセット狙いやガセイベ回避といった立ち回りでも駆使し、劇的に勝率を上げることができた。
もちろん狙い台に先客がいる場合や、低設定打ち変えもあって必勝とはいかなかったが、ホールに100台以上ある台のうち数台に狙いを絞れることを考えると、いかに効率的かは言うまでもないだろう。
時折勤務中の瀧本さんに会うことがあったが、ホールの中では特に会話はせず、勤務後にその日の成果等をメールでやりとりしていた。
私はたびたび稼がせてもらっているお礼と称して、彼女を食事に誘った。
はっきり言って食事代など、その恩恵からすると微々たるものだったが、彼女はとても喜んでくれた。
一度背伸びをしてブランドもののバッグを送ろうとしたが、学生の分際でそんなものは要らない、いつか必要な時がくるから貯金しなさいと窘められてしまったことがある。
変な所で先輩ぶるなぁと言ったら、
「男爵っちよりも、ちょっとだけお姉さんなのだよ」
と芝居がかった口調で、数ヶ月の生まれの差を誇っていた。
そう言えば、バイト仲間には他にもスロッターはいたはずなのに、どうして私に教えてくれたんだろう。
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