[2]闇夜のゼニガタイム [ 2017/10/31 ] |
その後500G近くまでハマり、頭上から箱をおろして下皿にうつす。
この時なんとなく恥ずかしい気持ちになるのは何故だろう。
この現象に名前をつけてやりたい、「シャイニードロップ」とか。
一度積上げた箱をくずして再度下皿へと戻るメダルには、帰巣本能か何かがあるのだろうか。
全てが台の中まで戻るのは阻止したいものだ、私に宿れ、遡上する鮭を狩るヒグマのような力強い剛運よ。
私はおじいちゃんの家に置いてあった木彫りの熊を思い浮かべながらレバーを叩く。
相変わらずMAXBETは効かないので、ポチポチとこきざみにボタンを連打する繊細な熊だ。
珍しく想いが通じた。
時代はサーモンハンティングである。
久しぶりのBIGボーナス、711枚を私に届けておくれ。
ボーナス開始早々に液晶が暗転しフリーズした。
<俺の名はルパン三世>
プレミア確率のボーナス中タイプラ演出、これは1G連確定だ。
そして妙にデカい音声でピートマック・ジュニア氏が男には自分の世界があると歌いだす。
さらに続く3G連にも当選し、ジュニア氏へのアンコール。
あっという間にハマり前以上の出玉を獲得。
やはり大量獲得機がツボにはまると破壊力は抜群だ。
気付くと横にいたマダムデラックスはボタンを強打、明らかにイライラしている。
その様子を例えるなら、風を払い荒れ狂う稲光。
台風が接近しているらしい外の天気と、奇しくもシンクロ率100%だ。
隣の調子が良いと不機嫌になる人は珍しくない。
でも騒がしいのは台の仕様なので勘弁していただきたい。
この頃になると、マダムは店員に目押しを頼んでいた。(当時は店員の目押しサービスは普通に存在した)
調子よく出し続ける私に頼むのが癪に障るのだろう。
こちらとしても面倒が無いのでむしろ良かった。
もう何度目のBIGだろう。
その好調ぶりに浮足立ち、吐き出されるメダルを箱に詰める。
その時、液晶が暗転しフリーズした。
おいおい、また1G連か、今日は絶好調だな。
違った。
私の台だけではない、全ての台がフリーズし照明が落ちていた。
停電だ。
かなり荒れた天候だったので、停電が起きること自体は不思議ではない。
しかしホール内で遊技中、しかも大当たりの最中に電源が落ちたらどうなるんだろう。
無効になることは無いだろうけど、復旧できなければ事実上終了じゃないか?
【自然災害等による場合、出玉の保証はありません】
サンドに貼りつけられた店舗ルールにもしっかりと記されている。
その文言をじっと見つめながら時を待った。
周囲は若干ザワついているものの、暴動が起きるというような雰囲気もない、まったく日本は平和だ。
何の説明もないまま10数分たっただろうか、せめてあと500枚以上は残ってるボーナスだけでも消化したいと願っていた時、
「逆押しだ!」
待ってたぜ、とっつあん!
停電から復旧まで、ホールからは何一つリアクションが無かったが、とにかく停電前そのままの状態で再スタートされた。
このまま打っていいのか、何のアナウンスも無いが、周囲の人達が遊技を再開しているのを確認して打ち始める。
停電には少々驚かされたが、ホール内は徐々に日常の風景をとりもどしていく。
ああそう、だMAXBET効かないんだコレ、などと思いながら711枚を獲得。
ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!
突然けたたましい異音が発せられた。
台が突然SANKYOの『マクロスF』になったわけではない。
BIG終了時にクレオフされエラー画面が表示されていた。
?
なにこれ?
ボーナス中に電源が落ちたからかな?
とりあえずエラー解除のため店員を呼び対応してもらう。
少し心配していたものの、問題無く3G連演出が始まり、またしても当選。
天候は不順でも私のとっつぁんは絶好調だ。
快調ぶりに満足しつつボーナスを消化すると、
ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!
またかいな!
平和オリンピア機のエラー音量は妙に大きい。
……ひょっとしてずっとこうなのか。
ここで思い出したのだが、その昔パチスロというものはBIG後は一度打ち止め状態になり、その都度店員がリセットをかけるものだった。
今はそうした煩わしさを省略しているが、どこかのスイッチで過去の仕様に戻せる可能性は高い。
細かいことはわからないが、電源ON/OFFを契機に台がそういう状態になってしまったのかもしれない。
MAXBETの件に続いて変な障害を抱えてしまったが、出玉推移そのものは絶好調のため辞めたくはない。
店員に言えばなんとかしてもらえるのだろうか。
いや、最悪の場合には台の不具合のためなどと言われ強制終了のおそれもある。
すくなくとも利便性を我慢すれば出玉だけは獲得できるのだ。
私は黙って続ける道を選んだ。
絶好調の銭形を前にしては大した障害ではない。
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