[3]闇夜のゼニガタイム [ 2017/10/31 ] |
数回のREGを挟み、ゼニガタイムからのBIGだ。(ちなみにREGでエラーは出ない)
ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!
もうクレオフには慣れた。
これはこういうものなんだと考え、店員呼び出しボタンを押す。
その時だった。
突然隣のマダムデラックスが私を捕らえ、丸太のような腕をからませて叫んだのだ。
「この人、ゴトやってるよ!!」
私の地獄のような2時間30分が始まった。
「この人ゴトやってるから!!」
うん、わかった、2回も言うな。
「もう逃げられないよ、店員呼んだからね!!」
逃げないし、コールボタンを押したのも私だ。
私の左腕にがっしりとしがみつくマダム、という嬉しくないオプションが上乗せされ、そろそろ左肩がはずれそうだ。
周囲の視線を一身に集めているところに店員が駆けつける。
そしてメダル補給用のジョッキを手にした店員に向かい、マダムは口角泡を飛ばしてまくしたてた。
「もう補給の必要は無い、コイツはゴト師だ」
「BETボタンを不自然に連打しているし、異常なまでに連チャンしている」
「やたらと台がエラーになるのが動かぬ証拠、短時間にこの回数はおかしい」
実際にはこの50倍くらい喋っていたが、彼女の主張を要約するとそんなところだった。
「私のお金がこういうゴト師に取られている、絶対許すな、取り戻せ」みたいな要求を頻繁にしている横で、私はとにかく面倒なことになったとため息をついた。
念の為調査に協力いただけますかと店員に確認され、やましいことも無かった私は応じることにした。
事務所に連れて行かれるんだろうかと思っていたら、店の隅にあった休憩スペースに連行される私とマダム。
これは今書いてて思ったことだけれど、事情を知らない人がみれば普通にゴト師として連れて行かれる人だ。
エラー対応をしてくれていたバイトスタッフと社員らしき人となにやら話している、これから何がはじまるんだろう。
ゴトの証拠はないかと身体検査をされるのだろうか。
はじめは上着だけの約束だったけれど、それじゃあよくわからないなぁなどと言われてパンツまで脱がされるのではないだろうか。
私も潔白を証明するためと顔を真っ赤にしながら辱めに耐えるのではないだろうか。
それを見ていたマダムもいつしか興奮してくるのではないだろうか。
あらやだ、なんだかアタシ身体が火照ってきちゃったわ、などと濡れた瞳でみつめてくるのではないだろうか。
「……えーっと、台のデータを確認しましたが特に不審な点はありませんでした」
社員さんがあっさり私の身の潔白を証明してくれた、パンツ脱がなくていいのか。
念の為ボディチェックだけ、と言われ同意すると上着と靴を確認され、あとは本当に形式程度のボディチェックが済んだ。
「おやぁ、この膨らみはなんだい?」などといやらしく股間をまさぐられるのかと思っていたが、なにごともなくあっさり終了だ。
マダムも身体が火照らずに済んだ、本当によかった。
実際やましいことは無いし戻って続きを打とう、そう思った時だった。
「待った!! まだ終わっちゃいないよ!!」
復活演出のようなセリフを吐きながらマダムデラックスがカットイン。
「とにかくコイツの出し方はおかしい!!不快だ!! 迷惑料で一箱くらいよこすのがスジってもんだ!!」
振り上げた拳の行き場を失ったのか、なんだか滅茶苦茶なことを言い出した。
前半はともかく、後半なんて単なる自分の欲望、強欲マダムだ。
こちらの台は波が荒い仕様なのでと店員も説明しているが、マダムは一歩も退かずますますヒートアップ、
過程は違えど、彼女の身体が火照っているのは間違いない。
結果として予想を的中させた私はエスパーだろうか。
お客様はもう結構ですのでと席に戻された私。
件のマダムは戻ってこなかった。
納得して帰ったのか、どこかに強制連行されたのかは不明だが、ともかく平穏が訪れたと遊技を再開する。
どのくらい平穏かというと、具体的には1500Gほど平穏だった。
うん、これは最大天井だ。
ご存知のベテランスロッタ―も多いと思うが、銭形は前兆がわかりやすいので、何も無い時は本当に何もないまま天井に到達する。
とはいえ今までが出来過ぎていただけだ、一度くらい天井にも行くさ、3G連もはずしたけど気にしない気にしない。
さぁ、気を取り直して今度はロングフリーズでもみせてやろうぜ。
999G REG
うん、REG天井だね。
滅茶苦茶出玉を削られたね。
停電・ゴト容疑・出玉の急降下のハッピーセットで心もポッキリだ。
ヤツはとんでもないものを盗んでいきました、のセリフが頭の中でめぐりながらのシャイニードロップ。
さらに550Gほどとっつぁんの散歩を眺めてドロップアウト。
色々な事が一度に起きた一日だった。
長時間連打を続けた左手の中指もつりそうだったが、それ以上に楽しくなったり不安になったりと感情の起伏が激しすぎて顔面の筋肉が引きつりそうだ。
まぁいい、かなり減ったとはいえ二箱ほどは流すことはできた。
珍しい体験ができたと思えば話のタネにもなるさ、さぁ帰ろう。
店のドアを開けると2秒で全身がずぶ濡れになった。
ああそうだ、外は停電になるほどの豪雨だったんだ。
おそらく暴風の影響だろう、駐輪場に停めたはずの自転車はなぜか道路脇の排水口に後輪をつっこんだ状態で発見された。
なんでこんな日に自転車で来てしまったのかと後悔していると、胸元にひっかけていたサングラスが強風で飛ばされ濁流に消えていった。
先程までは波しぶきを背負う渋いとっつぁんを見ていたが、今の私はしぶきどころか滝のような雨が直撃している。
自慢のTシャツもビッチョリ貼りつき、乳首が透けるセクシー男爵。
そのまま鼻水をたらして自転車にまたがる。
脳内では銭形マーチの余韻が残りながらも国道沿いを爆走。
大型トラックからの泥ハネをモロにうけなんかもうグチャグチャ。
史上最も過酷で見苦しいゼニガタイムの始まりだ。
ホールが営業中に停電するとどうなるのか、ゴト疑惑がかけられるとどうなるのか、マダムデラックスのぶら下がりに私の肩が耐えられるのか。
通常では体験できない現象が一度に確認できました。
できれば出玉獲得に繋がるようなレア現象が起きて欲しかったのですが、私が獲得したのは翌日からの高熱と鼻水、そして左半身の関節痛だけだったようです。
外出センスは多分無い、ずぶ濡れ紳士な私の思い出である。
(C)モンキーパンチ/TMS・NTV
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