[1]ジャミング・ウィズ・ジャグラー [ 2016/2/20 ] |
読者諸兄ご機嫌よう、男爵です。
長くパチスロを打っていると、不思議な台に出会うことがあります。
それは、設置が少なく解析情報も出ていないレア台であったり、異常なまでにボーナス確率が偏るノーマルタイプであったり。
私の打ったその台は、スロッターにはよく知られた台。
しかし全く分からない、不可解な挙動をみせる台でした。
今回は過去の出来事。
私が出会った不思議な台と、その謎を追う二人の話。
スロット紳士こと男爵の体験談を聞いて欲しい。
662と605。
この二つの数字の意味を知っている人間はごく一部。
地方都市のホール『ビッグヘブン』に通っており、『ジャグラーTM』を打った人間のうち限られた者だけがこの意味を理解できる。
私もその意味を知っている一人。
しかし知っているだけ、そこから先はわからない。
その数字が何をあらわしているのか。
そこまでで良いならば、話を先に進めよう。
季節は秋、とはいえまだ夏の陽気が暦の流れに逆らうように居座る年のことだった。
就職も決まって暇な大学生となっていた私は、新たなホール開拓に精を出していた。
少しでも条件のいいホールで勝負をする、スロッターならば当然の思考であろう。
その日は秋晴れで、気持ちのいい陽気の中ホールを巡回し、自分なりにどこが狙い目かを考えていた。
さっきの店は設定が入っているみたいだけど競争も厳しそうだな。
この『ビッグヘブン』って店はどうかな。
駐車場にあまり車が無いなと思いつつ、自動ドアを開ける。
パチンコ店は、外部から中の様子が把握できない店舗が多いため、初めて入る店はなんとなく緊張するものだ。
うわっ……
声こそ出さなかったが、稀に見るほどの過疎店、閑古鳥が鳴いているという言葉がぴったりだ。
もう夕方と言える時間にもかかわらず、ほとんどの台のデモ液晶が全く同じ動きをしていることから、朝から1ゲームも回されていない台ばかりだというのが遠目にもわかるほどだった。
『押忍番長』『鬼浜爆走愚連隊』といった当時流行の機種もしっかり導入されており、特別に設備が悪いというわけでもなさそうだ。
逆に言うと、これで客がほとんどいないということは、高設定の期待はできないということか。
そんなあきらめにも似た気持ちでホールを一回りする。
宵越しエナでもできればとデータランプをいじるが、最新3日間の総回転数0という台がゴロゴロする状況では狙いも何もなかった。
この店は大丈夫なんだろうか、そう思いながらジャグラーのシマを覗く。
どんな過疎店でも、ジャグラーだけは稼働があるものだと思っていた私だが、30台ほどの設置に対して稼働中なのは3台のみ。
そんな状況を見て、いよいよこの店には何も期待できないと確信してしまった。
でも、せっかく遠征して来たんだ、少し打ってみるか。
収支にこだわるならば1ゲームも回してはいけない店だとわかってはいたが、話のタネにと1000円札をサンドに飲み込ませる。
座った台は『ジャグラーTM』。
演出で引っ張られての追い銭やストック切れの心配が無いのが理由だ。
あっと言う間にコインが無くなり、追加の1000円を投入し回し続ける。
2000円だけ遊んでやめよう、はじめから決めていた上限だ。
……んっ?
左リール中段にチェリーが止まった。
GOGOランプを見るも何の反応もしていない。
強烈な違和感。
私の知る限り『ジャグラーTM』に中段チェリーは無い。
リールがズレているだけかとも思ったが、リプレイ等他の小役はきれいにライン上に揃う。
この台、何かおかしい。
話には聞いたことがあるが、裏モノってヤツだろうか。
私の中で何かが動き始めた。
気づいた時には9000円使っており、ようやくランプが光ったところだった。
人生で初めて遭遇した裏モノらしき台に、私は興奮していた。
いわゆる「裏モノ」というのは、ロム改造等で通常とは異なるゲーム性・出玉性をもたせた機械の総称。
もちろん全て違法。(※メーカーとは無関係です)
筐体のセキュリティ強化に加え、純正機での出玉率やゲーム性の向上により次第に姿を消していった。
謎の挙動をみせるこのジャグラーの特徴は、
●チェリーは必ず中段に止まり2枚払い出し、ボーナス等の恩恵は無い。
●小役ゲーム中ブドウが揃いにくく、リプレイ外しの効果がほとんど無い。
以上である。
なんだこれは。
少し打てば違和感にはすぐ気づく。
チェリーが中段に止まるのだから。
ただ、裏モノに多いとされる極端な連チャンやハマり、通常時の小役カットは確認できない。
裏モノというより、ちょっと機嫌が悪いジャグラーのようになっていた。
この謎のジャグラーに興味を持った私は、どこかに爆裂トリガーがあるのではと打ち続けたが、ついに軍資金が尽きてしまった。
すっかりあたりも暗くなった頃に店を出て、なんとしてもこの謎を解いてみせると再訪を決意するのであった。
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