〜翌日〜
この日は事前告知が店内放送のみと言う事もあり、朝の並びは期待できないと思っていました。
しかし、開店10分前には昨日以上の行列が出来ていたのです。
おそらく、昨日の店内放送を聞いた人が口コミで広げていったのでしょう。
「O店のイベントはすごい!!」と。
ですが、昨日とはうって変って、肝心の展示機に集まる人数はごく僅か。
店長は焦りました。
告知が十分に出来なかった分、出玉でアピールしようと、昨日より甘く調整していたからです。
「(機種名が分からない上に大赤字、ヘタするとクビかも)」と、頭を抱えていた時です。
誰かが店長の肩を叩きます。
振り返ると、そこには40歳半ばと思われる男性が立っていました。
男性 「この台の名前を言えば好きな機種の6が打てるのですか?」
と、展示機を指差します。
店長 「はい、お好きな設定でご遊戯頂けます。」
男性 「私、知ってますよ。」
店長 「えっ、ほ、本当ですか!?」
男性 「はい! この台の名前は……。」
店長 「ちょ、ちょっと待って下さい! しばらくこちらでお待ち頂けますか?」
と、制止しました。
店長にとっては、まさに救いの神。
急いでオーナーへ報告に向かいます。
店長 「オーナー、あの台の名前を知っていると言う方が現れました!!」
と、弾んだ声で言います。
オーナー 「本当か!? すぐ応接室へ通してくれ。」
と、弾んだ声で応えます。
店長はその男性を、応接室へと案内しました。
応接室には、男性とオーナーと店長の3名のみです。
店長 「え〜と、まずはお名前をお聞きしても宜しいですか?」
男性 「あっはい、Tと申します。」
と、オドオドしながら答えます。
オーナー 「Tさん、本当にあの台の名前を知っているのですか?」
T 「はい、友人にこちらの店のイベント内容を聞いて『もしかして…』と、思ったのですが実機を見て確信しました。」
オーナー 「それで、機種名は…!?」
と、身を乗り出します。
T 「はい、あの台の機種名は
『すろすこ』と言います。」
オーナー&店長 「……『すろすこ』?」
T 「はい、『すろすこ』です。」
オーナー 「………。」
店長 「………。」
T 「………。」
オーナー 「お、おぉぉぉ。 そうか! 『すろすこ』か!! いや、初めて聞いた。 確かにあの珍台にピッタリの珍名だな。」
T 「ははは、確かにピッタリですね。 で、6を打てるのでしょうか?」
オーナー 「おぉ、そうでしたね、おい店長。」
店長 「はい。 ではTさん、どの機種のどの設定がお望みですか?」
T 「今日は満席ですので、明日でお願いしたいのですが。」
オーナー 「結構ですよ。」
T 「では、『ハクション大魔王』の角台を6でお願いします。」
店長 「承知しました、明日『ハクション大魔王』の角台の設定を6にして、Tさんの予約席とします。」
当時私も設定6が1日打てるなら間違いなく『ハクション大魔王』を選んだでしょう。
なぜなら、設定6であれば万枚はほぼ間違いないどころか、2万枚も十分射程圏内。
6のスペックは超破格だったのです。
翌日Tが打った『ハクション大魔王』でも、余裕で万枚…!
どころか2万枚オーバー!!
それからと言うもの、O店は以前とは比べ物にならない程の盛況ぶり。
イベントは大成功に終わりました。
〜数日後〜
店長が現在も展示してある『すろすこ』を見て、ふと疑問に思った事がありました。
「まてよ、この台が『すろすこ』だと言う証拠は? 我々は騙されたんじゃ…」
この仮説を、すぐさまオーナーへ報告に行きました。
するとオーナーは「何?それだと詐欺じゃないか、Tを探し出せ、訴えてやる。」と大激怒。
Tは『ハクション大魔王』で2万枚を叩きだした以降、O店には顔を見せなかった事もあり、疑惑は益々深まりました。
店長 「探すとおっしゃっても、Tと言う名前以外何もわかりません。」
オーナー 「つべこべ言わずに探すんだ。」
店長 「落ち着いて下さい、私に良い考えがあるのですが。」
オーナー 「何だ? 良い考えとは。」
店長 「もう1度、前回と同じ様なイベントをしてTをおびき出しましょう。」
オーナー 「イベントをしておびき出す? どうやって。」
店長 「それにはオーナーの広い心が必要なのですが。」
オーナー 「何だ? 言ってみろ。」
店長 「はい。 その方法とはですね……。」
オーナー 「……よし良いぞ、なかなか面白そうじゃないか。」
店長 「ありがとうございます。 では2週間後に。 告知は私におまかせ頂けますか?」
オーナー 「あぁ、全て任せる。」
と、再びイベントが開催される事が決定しました。
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