店長 「オーナー、少し気付いた事があるのですが……。」
オーナー 「何だ?」
店長 「ここまでプレイしている様子を見ていたのですが、一度もリプレイがありません。」
オーナー 「……そう言えば。」
店長 「それと、BETボタンを見て下さい。」
オーナー 「BETボタン? これがどうした?」
店長 「このボタン、MAX BETじゃ無いですよね。」
オーナー 「……確かに。」
店長 「確か初めてMAX BETが搭載された機種が、3号機の『ミラクル』だったと思うのですが。」
オーナー 「……それが?」
店長 「ですので、この台は3号機以前の物では無いかと……。」
オーナー 「それって、つまり……。」
店長 「はい、『検定』を通っていたとしてもすでに切れていて、店での稼働は出来ないかと。」
オーナー 「本当か!?」
店長 「えぇ、おそらく。」
店員一同は「ホッ」と胸を撫で下ろしました。
訳の分からない台を導入し、これ以上客足が鈍るのを恐れていたからです。
しかし、その事実が逆に珍台&超マイナー台マニアのオーナーの好奇心に火を付けてしまったのです。
オーナー 「よし分かった! 店での稼働は諦める。 が、店長! この台の機種名を知りたい、今すぐ調べてくれ。」
店長 「えっ! 今すぐに…ですか?」
オーナー 「あぁ、今すぐにだ、分かるまでは全員帰る事は許さん。」
と、なんとも無理難題を押し付けてきました。
そんなオーナーを諭すかの様に、店長がゆっくりとした口調で語りかけます。
店長 「オーナー、時間も時間ですし、今すぐには無理です。」
オーナー 「うるさい! さっさと調べろ!!」
店長 「落ち着いて下さい、私に良い考えがあるのですが。」
オーナー 「良い考え?」
店長 「はい。」
オーナー 「何だ? 良い考えって。」
店長 「この台を使ってイベントをしましょう。」
オーナー 「はぁ? イベント? この台は『検定』が切れているから稼働できないだろ?」
店長 「はい、ですので台の名前をお客様に教えてもらいましょう。」
オーナー 「? …どういう事だ?」
店長 「店にこの台を展示し、台の名前を知っている方には好きな台を好きな設定で打てる権利を差し上げては。」
オーナー 「………。」
店長 「より多くの人に見てもらう方が、機種名が分かるかと思いますが。」
オーナー 「……確かに。」
店長 「より多くの人を集めるには、色々な告知をする必要がありますよね。」
オーナー 「よし分かった! 告知は店長に任せる。」
店長 「今日はさすがに無理ですよね。」
オーナー 「ん? そ、そうだな、今日は帰って良いぞ。」
店長 「イベントは早くても3日後になりますが。」
オーナー 「任せる、お疲れさん。」
店長 「お疲れ様でした!!」
と、この日は解放されました。
〜3日後〜
この日のO店は、『謎の名機降臨!?機種名を当てて最高設定をGETせよ』と、銘打たれたイベント日。
開店前には100人を越える列ができ、駐車場には他府県ナンバーの車も。
これまでより広範囲に折り込み広告を打った成果が表れた様です。
いよいよ開店時間となり、店内になだれ込む人々。
数少ない人気台は瞬時に埋まり、その他の台もほぼ確保されています。
が、この日に訪れた人々の目的は『謎の名機!?』の機種名。
多くの人が、確保した台を即座には稼働せず、展示機に向かいます。
中には展示機を実際にプレイする人も現れたのですが、ここでもやはり珍台中の珍台。
誰一人として機種名が分かる者はいませんでした。
何人かはそのまま打たずに店を出る人もいましたが、そこはスロッターの性。
多くの人が「並んだ以上、少し打っていくか。」との心理からか、これまでのO店とは思えない程の稼働がありました。
出玉の方も普段から高設定の割合が高い上、この日はイベント設定。
十分すぎる程出玉のアピールもでき、イベントは大成功かの様に思えました。
その日の閉店1時間前。
突如店長がオーナーから呼び出されました。
オーナー 「どうなっているのだ?」
店長 「ご覧の通り稼働も良好で、イベントは大成功では無いでしょうか。」
オーナー 「そんな事はどうでもいい、あの台の名前が分からないままじゃないか!!」
店長 「そ、それはそうですが…。」
オーナー 「多くの人に見てもらえれば、機種名が分かると言ったのは店長だぞ。」
店長 「た、確かに言いましたが…。」
オーナー 「明日も同じイベントを開催しろ、これから店内放送で告知するんだ。」
店長 「明日も…ですか? 割数はどうしましょう。」
オーナー 「それを考えるのがお前の仕事だろうが!!」
店長 「は、はい。 分かりました。」
結局この日、機種名は不明のまま閉店を迎えました。
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