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回胴小噺



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全日遊連が振り上げた拳の行方 [2016/2/8(月)]

35回目のご挨拶。
春川亭三七でございます。

皆様、元気に回胴に勤しんでおられますでしょうか?

さて。
ご挨拶もそこそこに。

1月末に出ると思われた「遊技くぎ問題における撤去リスト」。

すでにお見知りおきの方もいらっしゃるかと存じますが、実のところ検索サイト等で引っかかるリストは、決してオフィシャルに「日工組」から発表されたものではありません。
公式リストとして流布する前に流出してしまうあたり、業界の管理体制のぬるさのように感じるのを禁じえませんが、逆にそうなってしまったからリストの発表が遅れたのも事実。

ではなぜ、ここまでリストの公表が遅れているのかを紐解いていきましょう。

 


【日工組が認めた不正くぎがあったという事実】
詳しくは過去コラムを参考にしていただければと思いますが、警察庁から「申請持ち込みくぎ」と「市場くぎ」の性能乖離を指摘された時に、まずは日工組として調査した結果、「持ち込んだ時点で改造した形跡のある遊技機がある」と認めてしまったところに大きな問題があります。

くぎ問題が発覚した時点で、どこか特定メーカーの特定台をスケープゴートにして、その結果警察庁に溜飲を下げてもらおうと思った狙いが日工組にはあったような気がします。
なので、ひとまず自分たちの非を認め、その結果その機種を特定し、そしてその遊技台を撤去することで、警察庁の許しを請う狙いがあったのでしょう。

しかし、この「一部」を認めた結果、「なら、市場のくぎ全部チェックな」とお怒りになられてしまった警察庁。
「いや、それは・・・」となるものの、出した唾はもうお口には戻らないわけで、結果として市場くぎのチェックが始まってしまったわけです。

その結果、「申請持ち込みくぎ≠市場くぎ」になり、これにて日工組は完全に逃げ場を失います。

この「申請持ち込みくぎ≠市場くぎ」を認めた時に「チャンス!」と一気呵成に攻めてきたのが、業界における最大の組合である「全日遊連」でした。

 


【全日遊連の強気の理由は警察への追従にあり】
全日遊連は基本的には「ホール団体組合」であり、その組合の大多数は中小ホールにて構成されております。
大手グループのマルハンさんあたりは、全日遊連には属しておりません。

全日遊連は、業界団体としては最古参にて最大構成員数を誇るため、その発言の影響力は日工組や日電協でも及ぶものではありません。

その大きな組織が警察庁の発言と調査結果を盾に、一業界として一枚岩になるべきところを、警察庁とともに日工組を責め立てる姿勢をとりました。
日工組がくぎの性能乖離を認めたことにより、「全日側も被害者である」ということを前面に押し出してきたのです。

これは、「くぎの調整というものは存在しない。あくまでメンテナンスである。」というくぎ問題発覚前の業界不文律を逆手に取ったやり方でした。

しかし、これ自体は全日遊連にとっては昨年中ずっと言い続けていたことであり、「今更なにを・・・」と責められる言われはありません。
「納品状態は検定通りのものであるという保証をし、その信用性を絶対にしてほしい」ということは、常々全日サイドは言ってきました。

しかし、それではホールにおいての集客はできないし、ホールだってそんな状態の遊技機は求めていないわけです。

だから、これまで触れてこなかった部分なのですよ。
「くぎをいじる」ということに対して。

つまり、こうとも言い換えることができます。

「納品状態がまともではないから、ホールにて釘をたたく必要があった。必要がないのなら、そうすることもなかった。故にわれわれは被害者だ」と。

その姿勢を強硬に打ち立てたのは、警察庁がリストの作成を日工組「のみ」に求めたから。
つまりホールサイドとしては、警察庁の業界への怒りに対して、追従する姿勢を見せたわけです。

「いやいや、お怒りはごもっとも。かくいう我々もね…」的な感じですかね。
ジャイアンがぶちギレているときのスネ夫的なポジションをとったわけです。
「僕はいやだといったんだけど、のび太が・・・」みたいな感じですかね。

だけれども、そもそも警察庁はジャイアンじゃないし、ジャイアン的なポジションにされたからかどうかはともかくとして、警察庁も違和感に気づきます。
「いやいや、あなたたちだって業界内の人間でしょ?なに被害者ぶっているの?」と。

その結果として、年明けの行政講話にて全日遊連もお叱りの言葉を賜ることになりました。
「受け身の姿勢であった全日遊連の態度はいかにも残念である」と。

つまり警察庁としては、メーカーから出されたものに問題があったのならば、まず全日遊連として「こういう機械はうちでは扱えない!」というべきだということです。
これまで、「よっ!警察庁!」って言って太鼓持ちしていたのに、急にはしご外された格好なわけです。

こうなると、なんとも哀れな全日遊連。

しかし、全日にだって言い分はあるわけで、前述した影響力はちょっとくらいはしご外されたって微塵も揺るぎません。

「性能乖離の問題は業界全団体で立ち向かえ!」はわかったけども、うち(全日)だって譲れないものは譲れない、それが下取り問題なわけです。

 


【責任問題=お金の問題】
強制的に撤去しなくてはならないということは業界全体として被害が大きいわけですが、ホールとしては撤去問題を理由にまでして「おつきあい」で買いたくもない台を買わされたくないわけです。

なので、「高射幸性機」とは違う「不正くぎリスト」に対しては、メーカーが下取り対象とするべきだと言っているわけですね。
つまり、不正くぎについては完全にメーカー負担で下取りしてくれというのが、全日遊連の姿勢です。

しかし、メーカーとしては現役稼働中のものが納品状態であるという保証はできかねる(というか、しない)わけですから、全額負担しろというのはいささか乱暴であるというのが日工組の姿勢です。

なぜできないかというと、日工組としては、あくまで暗黙の了解ありきですが、「くぎはいじられるもの」としてぱちんこ台を作っています。
だから、これまでも全日遊連側から前述のように納品状態の遊技性能の保証を求められたとき、日工組は無視してきたのです。

納品状態の保証に関して大丈夫ともダメとも言っていません。
というか、言えないわけですよ、いじられる前提で作っているから。

それをさらに現役稼働のものに対して保証となると、もはや納品状態からどこのくぎがどれだけいじられているか、さらにそのくぎの状態によって、遊技性や射幸性がどれだけ変わるかをメーカーサイドで保証するのは自分で自分の首を絞めることになります。
「いじられているのだからそれは全部違法機です」と。

だから、できかねるというのは建前で、しないというか、したくないわけです。
するとなると、全撤去だし、それこそ「保証」ではなく「補償」問題に発展してしまうからです。

つまり、どちらも負担額を減らしたいのが見え見えなのですね。

はたから見ているとどっちもどっちなのだから、「喧嘩両成敗で丸く収まりなさいよ。折半にしたらいいじゃない?」という気もしなくはないのですがね。

もしくは、警察庁から少し救いの手を差し伸べてあげたらいいのにとも思うわけですよ。
だって、「保通協が良しとした」責任については目を瞑ってくれているのですから。


このように、とかく全日遊連はメーカーに対しては強硬姿勢をとる団体です。
メーカーに対しては「我々が言わずして誰が言う!?」くらい強気です。

本来ならば、撤去にあたってはPCSAの方が大変な被害を受けるわけですよ。

ちなみにPCSAとは「パチンコチェーンストア協会」のこと。
いわゆる大手チェーンの組合団体です。

不正くぎのリストが出てきたら、遊技機の店舗移動も不可になるし、中小ホールに比べたら設置の絶対数も多いので、完全撤去となったら大手の方が大変だと思うのですが、PCSAは右に倣えで日工組の動きに追従したわけです。

この辺がまぁ、業界の面白いところというか、変わったところというか・・・って感じですね。

 


【さて、振り上げたこぶしの行先は?】
今回の問題で全日遊連は下取りの責任をメーカーに求めたわけですが、おそらくこのままではどっちも共倒れになる可能性が高いことは頭ではわかっているのだろうと思います。
そこまで、愚かな組合じゃありませんから。
どこかで折り合いをつけに来るはずです。

しかし、「ホールこそ被害者だ」って拳をあげちゃったわけですから、感情論としてそのあげた拳はどこかにおろしたいし、どこかこの感情のうやむやをぶつける場所を作るのではないでしょうか?

その拳の行先が「反・抱き合わせ」に向かうことを期待したいと思っております。

昨年の遊技機の販売の約1/4は、「お付き合い」だったり「将来のキラーコンテンツの為」だったりしたわけです。

大量に買わされた1台40万円以上する台が、導入翌週には2〜3万で買えるようになっていたら、そら異常でしょう。
だからと言って、供給が少なくて、100万円超えちゃうような台もやはりおかしいわけです。

「健全化」として、台の性能もさることながら、台の運用、強いては需要と供給のバランス感覚もメーカーとホールで「健全」なものにしてほしいと期待したところで、今回はお時間です。

お目通し、ありがとうございました。

 


【最後に】
稚拙ながらも「業界コラム」として書かせていただいているので、ここに少しだけ書かせていただければと思います。

業界誌においては西の最大手と言っても過言ではない「シークエンス」誌。
その雑誌社の代表であり、業界を愛し、愛されてきた業界メディア媒体の大物「三浦健一氏」が1月25日に亡くなりました。

個人的に「遊技」としてのパチスロではなく、業界そのものに興味を持つきっかけとなった同氏が亡くなったことに対して哀悼の意を禁じえません。

もちろん、業界の製造メーカーであるわたくしは私的交流があったわけではありませんが、三浦氏のメディア等での言葉なくして、今のわたくしはありません。

甚だ恐縮ではございますが、この場を借りてお悔やみ申し上げます。
合掌。



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