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<金は全部俺が出すから> 時代は4号機ストック機の全盛。 あの頃、私は打ち子という言葉を知らなかった。 ただ、一人で打つよりも友達と一緒の方が楽しい。 そういう気持ちで彼をパチスロに誘い続けていた。 「金は全部俺が出すから打ちに行こうよ」 彼はお金を持っていない。 一応バイトはしていたが、宵越しの銭は持たないタイプの性格で、常にその日のたばこ代にも事欠く有り様。 実家から持ってくる1リットルの紙パックの麦茶だけが彼のライフラインであった。 <大量獲得機 全6イベントの前夜> 「明日、打ちに行く?」 私は彼に声をかける。 「俺、金ないから」 彼から返ってくる言葉はいつも同じだ。 金がない、私もそれは分かっているし、故に彼が私に何を期待しているかも分かっている。 だから私は、その期待に応えてあの台詞を言うのだ。 若かりし頃、何度この儀式を繰り返しただろう。 彼は私からあの台詞を引き出す事で、一日無料で遊ぶ権利を得て、私は今風に言うならば無料で使える打ち子を得る。 それは、双方にとってメリットのある事のはずだった。 あの日までは…… <イベント当日> この日の全6対象機種は、ゼニガタとエノカナ。 28台の設置に対して並びは60〜70人程度と、今では信じられないような好条件だ。 イベントの朝、店員はハズレが2つ、当たりが1つの抽選ボックスを持ってくる。 前に並んだ者から順番にくじを引いていき、当たりを引いた者が設定6に座れるというシステムだ。 しかも、この抽選ボックスには当選確率を高める裏技があった。 抽選は、客が引いては戻すの繰り返しで行われるのだが、店員はボックスを全くシェイクしない。 そこで、私と彼の間では「自分が引いたくじはボックスの左端に戻す」という決め事をしていた。 それによって、後からくじを引く者は、先に引いた者が当たりであれば、左端から引けば100%、ハズレであっても右端から引けば50%の確率で当たりを引けるのだ。 このイベント、等価交換ではあるが1回交換。 なので、2人で1日打ち切ろうと思ったらうん十万の現金が必要になる。 もちろん途中で換金してもよいのだが、時間が勿体ないので、極力換金無しで打ち切りたい。 当時、20歳そこそこの若造がそんな大金を持ち歩くのだから非常にドキドキしたのを覚えている。 だが、この日は…… <抽選に漏れて> 全6イベントの抽選に挑んだ私達であったが、運の悪い事に私も彼も結果はハズレ。 朝の9時半にして、路頭に迷う事になってしまった。 無論、自分一人であれば帰宅する。 だが彼を誘っている手前、多少は遊ばせてあげなくては申し訳が立たない。 お金で雇った引き子か打ち子であればそんな事は気にしないのだが、「ただで遊ばせてあげるから」と言って呼んでいる以上、少しは遊ばせてあげる必要があったのだ。 仕方なく、リセット多目の店に移動して朝一台をカニ歩いていく事にする。 ボンパワ、ゼニガタあたりを掘って、朝一台も見当たらなくなった11時。 ホール内を見回っていると、こんな台が空き台になっていた。 <ゼニガタ ボーナス後90G> 4号機のゼニガタにおけるボーナス後のチャンスゾーンは181Gまでで、そこまでに40%〜50%ほどの確率でボーナスに当選する。 私は彼に万札を1枚渡し、181Gまで回して止めるように指示をした。 その直後、私の携帯電話が鳴る。 大学の友人だ。 店外に出て電話を取って、30分。 私はついつい友人と話し込んでしまっていた。 さて、さっきのゼニガタはどうなったかな。 30分後、ドル箱を積み上げた彼の姿を期待して台に向かう私であったが、既に彼の姿はそこにはない。 履歴を見れば、ボーナス回数は増えていない。 181Gで空き台になっていたのだ。 彼はどこにいったのか。 パチスロ台の設置は100台ほどの小さいホール。 店内で彼を探す事はそう難しい事ではないはずだったが、スロットコーナーを何周しても彼の姿は見当たらない。 もしやと思った私は、階段を降りると地下のパチンコフロアへと向かった。 <見たくはなかった光景> スロットコーナーと同じく100台ほどが設置されてるパチンココーナー。 だが、スロットコーナーと違って稼働はほとんどない。 3人、いや4人だろうか。 まぁ、この店のガチガチに閉められた釘では仕方がな……!? その4人のうちの一人は彼だった。 エヴァか何かを打っていたように記憶している。 「なんでこんなゴミホールのパチンコ打ってるの?」 私は彼の後ろに立って、問い掛けた。 だが、返事はない。 「まぁいいや。 さっきの残りの金は?」 ゼニガタに座る時に万札を渡した。 90G回して止めたのだから、7千円残っているはず。 だが、彼の答えは耳を疑うものだった。 「全部使った」 「は? 何に?」 「さっきのゼニガタ」 ゼニガタを90G回すのに1万円も使う訳はない。 にも関わらず、彼は子供のような嘘を真実だと言い張った。 金を持っていないはずの彼が何故パチンコを打っていたのか。 その金はどこから出てきたものなのか。 そう考えれば、私の7千円が彼が打ってるパチンコ台のサンドに消えた事は明白であった。 「こいつ……」 だが、私は彼をそれ以上問い詰める事はしなかった。 この状況に至ってもなおハンドルを離そうとしない男に、何を言っても無駄だと悟ったからである。 <何が彼をそうさせたのか?> たった7千円。 彼が今までに私にもたらしてくれたメダルの枚数を考えれば、そう思う事ができる。 だから、私はこの事で彼との一切の交友を断つような事はしなかった。 ただ、彼に金を預ける事はなくなった。 それだけである。 「何が彼をそうさせたのだろう?」 私に嘘がばれないとでも思ったのだろうか。 そうだとしても、他人の金を騙し取ってまでパチンコを打つという選択を彼にさせたものは何だったのだろうか…… そう考えても答えなど得られるはずもない。 何故なら、そんなものはハナから存在しないからだ。 病気の母親の為にどうしてもお金が必要だった? そんな事情があろうはずもない。 ただ目の前に、所有者が席を外した7千円とパチンコ台がある。 たったそれだけで、人の道を踏み外すような行為をさせるだけの悪魔的な魅力がギャンブルにはあるという事なのだろう。 そして、結果はどうか? 彼にとって自分は友人だと私は思っていたが、その友人の信用を失ってまでも手にしたいと思ったものを彼は手にする事ができたのだろうか…… そんな事も考えてみるが、おそらく、そういった形でギャンブルと交わっても、ギャンブルがその行為者に対して、それに見合うだけの見返りをもたらす事は決してないと私は思う。 いや、そもそも人の道を踏み外すに値するような見返りなど、この世には存在しないのではなかろうか。 少なくとも、この日彼が手にした7千円の現金は、あっという間に銀玉に変わっては消えてなくなっていった。 あれから10年が過ぎた。 定職に就いても長続きしない彼は、今でも打ち子生活を続けている。 私はその様子をSNSのタイムラインで時折眺めるが、彼はあの頃と少しも変わっていない。 「やじきた打ちたいけどお金ないんで、代打ち・並び打ちで打たせてください」 相変わらずの彼を複雑な心境で私は見つめていた。 【 6の付く日はお先に失礼します 】 メニューへ
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