20歳の青年「武田」は、大学を中退しようか迷っていた。 大学を辞めてどうするつもりなのか、私がそう尋ねると彼は笑顔でこう言った。 「パチスロです!」 <10月某日 渋谷> オレンジ色の灯りが印象的なカントリー風のイベントホールの一角で、私と武田は出会った。 この日は、私が大学時代所属していた軽音サークルのOB会。 武田は、そこに現役のサークルメンバーとして居合わせたのである。 私にとってはだいぶ年の離れた後輩ではあったが、武田の音楽の好みは私のそれに近く、また、パチスロという共通の話題もあった事から、私達が意気投合するのにそう長い時間は必要なかった。 一次会が終わると、二次会として近くにあった別の居酒屋へ。 二次会から参加するメンバーも多く、懐かしい面々との再会に気分を良くした私は、いささか酒を飲み過ぎてしまった。 「ラストオーダーです。」 幹事の声を聞き、今のうちにトイレに行っておこうと立ち上がるが、足元はふらふらとおぼつかない。 意識はハッキリとしているのだが、どうにも体が言う事を聞かないのだ。 そんな私がなんとかトイレから席に戻ると、武田は水を用意して待ってくれていた。 「良かったらどうぞ。 ところで、誠さん。 良かったらこの後少し二人でお話させて頂けませんか?」 大学も3年生になると、就活の事を気にするのは当たり前。 システム関係の仕事を希望する後輩から、当日・後日関わらず声を掛けられるのは例年の事で、それほど珍しい事でもなかった。 その為私は、武田の話もその類であろうと思いあまり深く考えずに返事をした。 「今日は飲み過ぎちゃったから、ソフトドリンクで良ければ付き合うよ。」 こうして二次会が終わると、私は武田と二人で適当な場所を探して歩き始めた。 金曜日の夜らしく、通りは私のような酔っ払いや武田のような学生で溢れていた。 武田は、その人ごみの先にマックの看板を見つけると、黄色いMの文字を指さして「あそこで良いか」と私に尋ねる。 返事を求めて私の顔を覗き込む武田に対し、小さく頷いた。 それから2分ほど歩いてマックに着いた。 私がアイスティーを手に座席に着くと、シェイクとポテトをトレーに乗せて武田が後からついてくる。 座席に座り、向かい合うなり武田は言った。 「僕、大学を辞めようか迷っているんです。」 単なる就活相談だと思っていた私は驚き、テーブルの上のガムシロップに向けていた視線を武田の方に向けた。 武田の様子を見ると冗談とも思えない。 手に取りかけたガムシロップを置いて、私は理由は何故かと問い掛けた。 「パチスロで食べていきたいんです。 それには学歴は必要ないし、時間の方が必要だと思って。」 一般人の感覚からすれば止めるべきだろう。 そう頭では思っていたが、同時にパチスロを打つ人間がそれを言う事の矛盾も感じ、私は言葉に詰まった。 その結果、最初に出た一言が、 「今までの収支は?」 なんとも間抜けな台詞である。 これでは、収支さえ良ければ大学を辞める事を後押ししているようなものである。 だが、武田の返答は私の予想の斜め上をいくものであった。 「月に10日ほど稼働して、プラスマイナスゼロ付近です。」 その言葉を聞き、クエスチョンマークが私の頭を埋め尽くした。 私の若い頃に「パチスロで食べていく」と言ったら、専業のスロプロになって、パチスロで勝った金で暮らしていく事を意味していた。 そして、それを志す者は皆、当然のように月に数十万という金額を勝っていたからだ。 しかし、そこはイマドキの20歳。 武田の描いている未来、「パチスロで食べていく」という事はそうではなかった。 「自分の好きな事をネタに動画を撮って、それを自分で編集して面白くして、同じ趣味を持つ人達に笑ってもらってお金をもらう。 そういう事をやっていきたいと思うんです。 例えば……」 武田の口からは、現在スロ動画で活躍する多くの演者の名前が挙がった。 「なるほどねぇ……」 これも時代なのだろうか。 小学生のなりたい職業ランキングに『YouTuber』がランクインしたというニュースは聞いた事があったが、実際に目の当たりにするのはこれが初めて。 なんと答えたら良いか戸惑う私の様子を察してか、武田は続けて私に声を掛けた理由を告げた。 「だから、スロットもやってて、サラリーマンの道に進んだ誠さんの目から見てどう思うか聞いてみたかったんです。」 私がただのパチスロ好きのサラリーマンであれば、「そんなの知らねないよ」とか「せっかく親に大学に入れてもらったんだから辞めるな」の一言で済ませたかもしれない。 だが、武田の目指すものと規模は違えど、こうして自分の文章をネット上に晒し、それでわずかながらであってもお金を頂く。 そういったライターの真似事をしている自分がそう答えるのは、何か違う気がした。 武田がどちらの道を選ぶにせよ、納得のいく答えを出してもらいたいという気持ちで、私は自身の思うところを武田にぶつけてみようという気持ちになった。 「クラセレのボーナス中の7枚役ってハズすべきだと思う?」 一次会で話題になったクランキーセレブレーションの事を思い出し、逆に私は武田に問い掛けた。 偶然にもこの前日、私も武田もこの最新台を打っていたからだ。 話の前提として、まだクラセレを打った事のない方向けに説明しておくと、クラセレのボーナスには技術介入要素があり、 ●BIG中は14枚役を2回 ●REG中は14枚役を1回 を獲得して枚数を調整する事で、最大枚数を獲得する事ができる。 そして7枚役は、14枚役を狙う際に目押しを失敗してしまうと揃ってしまう役になる。 一般的なクラセレの打ち方としては、こう書いてある。 「7枚役がテンパイしてしまった場合には揃えず、右リールにコンドルを狙ってハズした方がお得」 こう聞いてどう思うかというのが、私から武田への問いであった。 武田がもし何も思わないのだとすれば、おそらく私と武田の考えるパチスロの面白さは違ったベクトルのものなのだろう。 それは良い悪いの問題ではない。 武田は武田の思う方向に進めばそれで良いのだ。 ただ、ベクトルが違うのであれば、私が武田に何か語るのもまた筋違いになろう。 この問いへの答えを聞いて、私は自身の武田へのスタンスを決めるつもりでいた。 武田が口元に手を当て、考え出したのを見て、私は自分のアイスティーを手に取った。 だが、それに口を付ける間もなく、武田は答え出す。 「これが8枚役だったらハズした方がお得って話でしょうけど……」 武田の答えは、私の期待した模範解答だった。 7枚役なら2回揃えれば、14枚役を1回揃えても獲得枚数は同じになる。 そうであれば7枚役を1回ハズして改めて14枚役を揃えるのも、7枚役を2回揃えるのも、2ゲームで14枚を獲得する事には変わりなく、そこに優劣はないという訳だ。 「そうなると、後は目押しの難易度の話になりますが……」 クラセレの14枚役の獲得にあたり、最も難易度の高いのは中リールでここはビタ押し。 次に左リール枠内コンドル図柄狙いの目押しで、ここで早めに押してしまうと7枚役がテンパイしてしまう事になる。 右リールは7枚役か14枚役を揃えるにせよ、ハズすにせよ、ボーナス図柄をアバウトに狙えば良いので、ここは簡単。 つまり、左リールで失敗し7枚役を揃えるかどうかという状況になるプレーヤーの場合、もっと難易度の高い中リールのビタ押しにも当然苦労しているはずである。 だとすると、その後、中リールのビタ押しに成功しない可能性もありうる。 そうなった場合、7枚役を揃えておけば+7枚は獲得できるが、ハズした場合には何も獲得できない。 もちろん、その後中リールのビタ押しに成功すれば、前述の通り、どちらも獲得枚数は同じだが、ビタ押しに成功しないケースの分だけ7枚役は揃えた方がお得という事だ。 「だから7枚役は揃えておいた方が良い」 武田の答えを聞いて私は嬉しくなった。 武田の進むべき道について相談を受けていたという事実はさておき、その喜びは、自分と同じ方向を向いてパチスロを楽しむ仲間を新たに得る事ができた事に起因するものであった。 「なぜこんな事を聞いたかっていうとね……」 私なりに思うパチスロの面白さの答えは「考える」ところにあるという事を、私は武田に告げた。 もっと良い攻略法はないかと考えて、実行する事で収支を上げていくのも良い。 もっと面白い事はないかと考えて、動画を撮って再生数を増やしていくのでも良い。 パチスロの面白さの原点は、考える事から始まるという価値観さえ共有できれば、OBが後輩の相談に乗る、アドバイスをするなんて堅苦しい形式を取らずとも、ただ話をしているだけで武田にとってはなんらかのヒントになるだろうし、自然と武田自身で答えを見つける事もできるだろうと思って、クラセレの話を聞いてみたと私は告白した。 「ああしたら良いとかこうした方が良いとか、先輩らしく明確な事を答えてあげられなくてごめんね。」 私が冗談めかして笑うと、そんな事はないと武田は手を横に振ってくれた。 その後私たちは、7枚役を揃えた後に意図せず14枚役がテンパイしてしまった場合はハズせるのか、7枚役狙いの場合に左リール上段コンドル狙いは何コマ目押しなのか、といった、常人であれば興味も持たないであろう話に花を咲かせた。 武田が「ネットにそう書いているのだから7枚役はハズした方が良い」と答えていたら。 武田の思うパチスロの面白さのベクトルが私と違っていたら。 このような話で盛り上がる事もなかっただろう。 武田に何が伝わったか分からない。 武田の求めていたものを私が渡せたとも到底思えない。 ただ、私の目線で見た時に、若者が日に日に堅実に、安定志向になっていく事が囁かれる昨今、武田のようなパチスロバカが現れてくれるのは非常に嬉しい事だと思う。 ただただ、その事が心に残ってこの原稿を書いた。 それだけである。 武田がどのような結論を出したかは今のところ聞いていない。 それが決まるのはまだまだ先の事かもしれない。 ただ一つ言えるのは、私が武田のファン第一号になったという事だけだった。 【 6の付く日はお先に失礼します 】 メニューへ
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