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韓国トラベル -前編- [2014/5/30(金)]

今から約1年半前の2012年11月。
俺は生まれて初めて飛行機に乗り、海外旅行というものを経験した。
会社の社長に誘われて、2泊3日の韓国旅行に行ったのだ。

今回は、その韓国でカジノに行った時の話。

「カジノに行った」なんて言うと聞こえはいいかもしれないが、選んだゲームがマイナーだったせいか、特に盛り上がる場面もなく、特筆できることもなかった。
むしろカジノ以外でカルチャーショックを受けた記憶が多い。

賭博場としては最高峰であるカジノだが、やはりトランプ系でないと熱いドラマは生まれない模様。
現に人だかりができていたのはポーカーのテーブルだけだった。
肝心の俺は、そのポーカーをしていない。

「ならなんで書くんだ?」と思ってしまっただろう。

箸休め程度に読むのもいいではないか。
日本にもカジノができることだし、星一つのリーチを眺めていると思えばいいのだ。
そんな感覚で読んでいこう。そうしよう。


旅行が決まったのは春。
出発の半年前だ。

俺は最初、この旅行を断るつもりだった。
ご存じの通り日韓は多岐にわたる問題が非常に多く、あらゆる分野で反日行動が炸裂しているからだ。

もちろん全ての国民が反日主義だとは思ってないが、大統領があれだけ反日的だということは、それを支持したほとんどの国民は同じ思想だと考えるしかない。
100年前の日韓併合を、未だに根に持っているということだ。

そんな嫌悪と憎悪が渦巻く国へ行き、観光がてらに街を歩くハートなど俺は持っていなかったのだ。

しかし、この旅行は社長のオーガナイズだったこともあり、どう婉曲に断ろうかと考えていたところ・・・

俺 「え、韓国ですか? この時期ヤバくないですか?」

社長 「大丈夫だよ。 ハバタケくん賭け事好きだろ? 向こうでカジノに連れてってやろうと思ってな。」

俺 「いや、実は僕も韓国には一度行ってみたいと思ってたんですよ。 是非行かせていただきます。」

こうして、「カジノ」というマジックワードにより俺の韓国行きはあっさりと決まったのだ。

さらに俺には、もう一つの大きな理由があった。

9年前に引き抜きでこの会社に入ったのだが、とにかくサービス残業が酷いのだ。
引くものはキッチリと引くくせに、付ける手当ては馴れ合いにされ自然消滅。
間違いなくブラック企業だ。

ここ2年は特に酷く、日付も曜日もわからなくなる時さえある。
給料は悪くはないが、身体は悪くなる一方だ。
できることなら辞めたい。

でも辞めるなら、ある程度の蓄えを持ってから辞めたい。
これはずっと考えていたことだ。

そこへきて、このカジノは大チャンスだ。
2日で数十万稼げるかもしれない。

いや、かもじゃない。稼ぐんだ。
そしたらすぐに辞めれるではないか。
資格もいろいろ持ってるから、再就職にも困らないだろう。

笑顔の返事とは裏腹に、俺は燃えていた。

そしてカジノで何をするかもすぐに決まった。 ルーレットだ。
ルーレットは1/2からの勝負ができる。
神がかりなヒキなどいらないこの現実的な当選率。

すでにビジョンも描けている。
マーチンゲール法を使うのだ。

まず、赤か黒に1,000円賭け、ハズレたら倍の2,000円を賭ける。
それがハズレたら4,000円、さらにハズレなら8,000円と、どんどん倍賭けしていく。

確率は1/2だ。 すぐに当たる。
当たれば倍になって返ってくる。

昔から確立されている有名な必勝法だ。

一体いくら勝てるのだろう。
2晩もあればかなり稼げるハズだ。

必ず勝つと書いて必勝法。
まさにこのためにある言葉だ。

しかし、なぜみんなこれをやらないのだろう?
単純かつ完璧な方法なのに。。。


この時、俺はまだマーチンゲール法の怖さを知らなかった。

確かにマーチンゲールは必勝法。
しかし、なぜカジノはその必勝法を禁止していないのか。
その答えを、俺は身をもって知ることになる。


半年後の11月15日。
俺は韓国へ向けて飛び立った。
1時間半の空の旅だ。

初めて乗った飛行機に俺は戸惑った。

飛行機のハネって、あんなにも揺れるものなのか。
窓から機体のハネが見えていたのだが、ずっと小刻みに激しく揺れているのだ。
俺はずっとそれが気になり、「あれは深刻な不具合なのでは・・・」と考え続けていた。
さらに、エンジンに鳥が飛び込む「バードストライク」という事故も思い出してしまい、不安と妄想でヘトヘトになった。

やはり俺に飛行機は向いていない。

ソウルの空港でも驚かされたことがある。
空港を出る為にハンコを押してもらうゲートがあるのだが、その係の対応だ。

カウンターにいた30歳くらいの男性にパスポートを渡したのだが、バンバンッと叩くようにハンコを押され、ポイッとゴミのように投げ返されてしまったのだ。
カウンターは20p程度の幅しかなかったので、投げ返された勢いでパスポートは下に落ちてしまった。

なんという行為なのだ・・・。
いくら敵視しているとはいえ、信じられない対応だ。
しかも、空港とは公的機関じゃないか・・・。

その時はたまたま俺の受付をした男性が特別なんだとも思ったが、そうではない。
隣のゲートを通過した後輩も全く同じ対応をされていたのだ。
その後輩はまだ若く気性が荒かったので、「おどりゃあボケーッ!」みたいなセリフを叫んでいた。

社長の通過はどんなものだったのかと気になって聞いてみると、「俺も同じだよ。 いつもあんなもんだよ」と気にもしてない様子。
うーむ・・・いつもああなのか・・・

その後、ゲートを出ると案内役のおばさんが現れ、ホテル行きのバスに乗ることになった。
なんでもこのおばさん、47都道府県全ての方便が話せるらしく、日本人より日本語を知悉してる韓国人らしい。

実際話してみると確かに凄かった。
まるで日本人と話しているようなのだ。
慣用句すら普通に使いこなしている。

慣用句は比喩的な表現なので、日本語でもかなりの経験値が必要だ。
「腕がなる」「顔が利く」など、それ単体での解釈だと会話が成り立たない。
外国人からすれば混乱しやすい表現なのに、全くたいしたおばちゃんだ。


ここで旅行のメンバーを紹介しておこう。
男女合わせて9人の旅行だ。

●社長とその愛人
●同僚の夫婦2組
●同僚(パチンカー)
●先輩(オールマイティなギャンブラー)
●俺

さらにバスで話を聞くうちに、それぞれの目的が違う事が判明した。

免税店でブランド物を愛人に買ってやろうという社長。
怪しい店でブランド風なモノを安価に買い漁ろうという2組の夫婦。
仕事が休めるという理由だけで参加した同僚。
テキサスポーカーで大勝負するために参加した先輩。
退職を賭けてルーレットしにきた俺。

気づけば、観光かどうかもわからないままに、チャレンジャーでアドベンチャーな旅が始まった。


そしてバスで走ること1時間。
「KOREANAHOTEL」というホテルに到着する。
コレアナホテルと読むのだろうか。
殺し屋みたいな人が出迎えてくれてワロタ。


韓国トラベル1


俺はすぐにでもカジノへ行きたかったが、夕飯とクラブを予約しているということでとりあえずは集団行動に。

ここで腹ごしらえとなり、大衆食堂みたいな店で昼食。
韓国風天ぷらみたいなのが激ウマだった。
魚系は全部生臭くてNG。 なんでだろ。

昼食後は買い物へ行くことになり、その前にみんなで両替することに。

意外にも、廃れた駄菓子屋みたいな店で両替。
なんでも空港やホテルでの両替は手数料が高いらしく、こういう店か個人が一番いいらしい。
無認可ほど手数料が安いといわれているが、この店は無認可なのだろうか。

ちなみに、両替した際はその場で枚数を確認しないと、表示されてる%と違ったり枚数が少なかったりと、誤魔化されることが多々あるらしい。
恐ろしい国だ。

社長が10万円分両替してたのを見て、俺はなんとなく6万円を両替。
当時のウォンは日本円の約7倍だったので(現在は約10倍)、俺は42万ウォンを所持する。
なんだか金持ちになった気分だ。

両替が終わると、「ロッテ」という有名な免税店ビルへ移動。
日本でいう天満屋とか高島屋みたいなテナントビルだ。
日本紙幣でも買い物ができる。

ここで社長が、マイケルなみの買いっぷりを披露。
まあ、愛人にだが。

俺は何も買わずに出る。
いくら免税店とはいえ、ブランド品はやはり高い。
俺がこの旅行に持ってきたお金は15万円。
全て軍資金のつもりなので、無駄遣いはしたくない。

その後はうって変わって、露店が無数に並ぶ路地へ。
ここはブランド風なモノが安価に手に入るという怪しい商店街だ。

店に入って俺達が日本人だとわかると、薬の棚がバッグや財布の棚に、お茶っ葉の棚が時計や靴の棚へとイリュージョンしていく。
まるで映画だ。

しかしこの商品たち、おそろしく完成度が高い・・・
仕事用に買ってみようかな・・・

というわけで、あとはお察し。

下の写真は、たまたま刑事が違法販売をしていないか調べに来てたらしいので撮ってみた。
なんで外の商品なんか調べるんだろ?
胡散臭すぎる。


韓国トラベル2


買い物が終わった後は、劇団を見たりクラブに行ったりと面白いことが多かったのだが、書くとだらだら長くなりそうなので割愛スキップすることに。

ということで、ここからはいよいよカジノの話だ。


空港にもデカい看板のあった、「セブンラックカジノ」という所へ夜10時頃に全員で到着。
このカジノは系列店で、他にも数店舗あるらしい。

韓国のカジノは韓国人は利用できず、外国人しか入れない。
これは、国民がギャンブルにハマり、国が腐敗してしまわない為の政策なのだろう。
おそらく、メタルチギと同じ位置付けだと思われる。


メタルチギとは、2006年に廃止された韓国のゲーム機で、日本の中古パチンコ台を改造して作られた機械だ。
それがギャンブル機として都心部で広まり、大衆受けして大盛況となったのだ。
その店の数はざっと2万軒あったが、うち5千軒は無認可だといわれている。

のちにその高い射幸性は社会問題となり、さらには公的機関の汚職問題も絡んで、8年前に完全廃止となったのだ。

この廃止には様々な背景がある。

まず売上げに目をつけた暴力団からの搾取。
そして警察までもが公然と金銭の要求。

これらはメタルチギ(パチンコ)が日本の文化であるがゆえに、合法化が曖昧だったためだ。

さらには、メタルチギの払い戻し上限が変更され、200倍だったものが25,000倍まで認可されたこと。
この高いギャンブル性が国民の生活に悪影響を及ぼし始め、深刻な社会問題となる。
しかもこの認可は汚職によるもので、大統領の甥まで絡んでいたのだ。

不幸中の幸いか、そのおかげで早急に廃止と相成ったのである。

これは古いが有名な話なので、知っている人も多いだろう。
おそらくそのへんの文献にも書かれている。

よく「韓国にはパチンコがない」といわれているが、それは宗教的な思想や民度の高さからくるものではなく、腐敗を極めた末になくなったというのが実態なのである。

では、話を戻してカジノに入店しよう。


入口でパスポートを見せて入場すると、場内にはざっと100人以上の客がいた。
内観は結構モダンで、上品な賭博場という感じだ。
映画などで見るのと同じである。

意外だったのは、場内がとても静かなことだ。
人が集まり、少しざわついている程度の感じしかしない。

それもよく考えれば、トランプやルーレットがメインなので当然かもしれない。

日本の賭博場といえば、競輪、競馬、競艇、パチンコなど、どれをとっても騒がしいイメージしかないので、変な先入観を持ってしまっていた。

こんな静けさの中で熱い賭けが行われている。
個人的には大好きな雰囲気だ。

入場した後はみんなバラバラの行動になり、同僚の一人はトランプへ、他のメンバーは適当に徘徊し始めた。
俺はフリードリンクにあった珈琲を片手に、場内をしばらく静観していた。

場内の隅っこを見ると、ゲームセンターのスロットマシンみたいなのが30台ほど並べてある。
だが遊んでる客は一人もいない。
面白くないマシンなのだろうか。

さらに遠くの方に、場内より奥へと続くスロープがあった。
奥行きが深く、よく見えない。

後から知ったが、これはVIP用の通路らしく、奥には大金を賭ける上客用の部屋があるらしい。
ハイローラーと呼ばれる客だ。
一体どのくらいの金を賭けているのだろう。

と、ここで突然小さな事件が起きる。

同僚の奥さんがスマホのカメラで場内を撮り始めたのだが、突然黒服3人が走ってきてその奥さんを取り囲んだのだ。
そしてすぐにスマホを取り上げ、その場で写真を消去してしまったのである。
場内の撮影は禁止だったらしい。

知らなかったとはいえ、あんなに物々しく囲まれると見ているこっちも驚く。

その場は口頭注意だけで収まったようだが、そもそもなぜ撮影禁止なのだろう。
カジノは独自の文明でも技術でもないはずなのに、不思議なルールだ。

そんなことを思いながら珈琲を飲み終わると、俺はあるテーブルに近づいていった。

見つけたのだ。
俺の新しい未来を作ってくれる、ルーレットがあるテーブルを。
もはや現金量産マシンと言ってもいい。

しかも2つもあるではないか。
10人ほど座れるようだが、今は両方とも埋まっている。

ちょうどいい。
どんなものなのか、席が空くまで観察してみよう。


韓国のルーレットは、アメリカンタイプが使われている。


ルーレット


2つの違いは、「00」があることと、アメリカンタイプは161ヵ所、ヨーロピアンタイプは157ヵ所、賭けれる数に若干差がある。


テーブルに近づくと、ルーレットの履歴を表示する電光掲示板があるのに気づいた。
スコアボードと呼ばれるものだ。
ここに過去15回のルーレットの履歴が表示される。

さらに、過去の統計比率も最下部に表示されている。
その時見た累積は、赤が49%、黒が51%だった。
今まで何万投じているのかはわからないが、理論値通りにほぼ1対1の割合で出現しているようだ。

その時は、「なるほど。まあ、当たり前か」と特に深く考えなかったが、後々この掲示板によって俺は絶望の淵へ落とされることとなる。


20分ほど待っていると、席が一つ空いた。
すぐに座る。
スロットでいうところの6を取った気分だ。

いよいよ始まる。
勝ち確定の勝負が。
賭けというより、もはや投資だ。

軍資金は約14万。
戦術は必勝のマーチンゲール法。
しかもカジノは24時間営業だ。
博打目的は俺と先輩だけなので、朝方タクシーで一緒に帰ればいい。

俺は財布から日本紙幣で3万円を取り出し、ディーラーの男に渡した。
手持ちのウォンを何十枚も出すのが面倒くさかったからだ。

するといきなり、

「パスポート」

と片言で言われる。

俺は、「パスポート見せて入場しているのにここでも見せるのかよ…」と思いながら渋々出した。

パスポートの確認が終わると、今度は俺にボソボソと何かを問いかけ始めた。
よくわからないので適当にうなづいていると、大量のチップが目の前に出現。
どうやら交換に成功したようだ。

1,000ウォン、5,000ウォン、10,000ウォンと、3種類のチップが山のように手元にある状態になった。
1,000ウォン(150円)がミニマムベットらしい。

基本的に0が一つ余分に付くことが多いので、ウォンだと中々しくっとこない。
まあ、そのうち慣れるだろう。

では早速賭けていこう。

掲示板を確認すると、現在赤が3連チャンしている。
俺は迷うことなく黒に10,000ウォンのチップを置いた。
1,400円くらいだ。

少なすぎたかな・・・
置いた後で思ってしまった。

ルーレットは、5〜7分に一回くらいのペースで投球されている。
しかし、これでは1時間勝ち続けたところで2万円にも届かない。
勝ち続けることなどないのでなおさらだ。

それではダメだ。
黒で勝ったら、次からは最低でも30,000ウォンずつ賭けていこう。
俺はベットを上げることにした。

しかしこれだけ人がいて、赤黒には俺しかチップを置いていない。
そういえば、観察していた間も誰も賭けてなかった。
1/2という確率が面白くないからかなのか。

まあいい。
楽しみ方は人それぞれだ。

しかしここから俺は、なぜこのカタい勝負に誰も賭けていないのか、そして確率の概念がどれほどギャンブルと乖離しているかを、少しずつ理解していくことになる。
それと同時に、抜け出せない魔のスパイラルへとゆっくりと引きずり込まれていく。

「韓国トラベル後編」へ続く。


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読者さまへ。

前回の記事では、たくさんのご投票、コメントを頂きありがとうございました。

実は今回の記事はすでに出来上がっていたのですが、描写的な問題により現在書き直しをしています。
今も色々と騒がれている韓国が舞台ということで、気づけば強い偏見と過激な表現が多くなってしまい、管理人によるカットが免れないと思ったからです。
個人的な僻見はこのサイトのコンセプトにも不適切ですし、それを主張するのも場違いだと思いまして。

ということで時間的な考慮も踏まえ、今回は2話構成とさせていただきます。
楽しみにしていただいた方、大変申し訳ございません。

また明日お会いしましょう。



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