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ゴーストスロッター 第44話



■ 第44話 ■

翌々日の2004年10月19日の昼下がり。

ファーストフード店にて昼食を摂り終えた優司。
店を出て、さぁこれからどうするかと考えていたところ、不意にポケットに入っている携帯が振動を始めた。

かけてきた相手をディスプレイで確認した後、軽くため息をついてから電話に出た。

「もしもし・・・・」

「おっす夏目!
  俺だよ俺! 八尾! 覚えてるだろ?」

「・・・・ああ。 忘れるわけないだろ。」

「そっかそっか!
  なんかわりいな、勝負の約束してから2日も連絡しないで。」

「・・・・・・」

「細かいルールを決めたからさ、とりあえずチェックしてくれよ。
  これでオッケーだったら、次は勝負の日程決めないといけないしな。」

「・・・・・そのルールってのは、まだ決定したわけじゃないよな?」

「もちろんだ。
  そっちがチェックして、なんか不備や不満があんなら直すぜ。
  じゃあとりあえず4時に東口駅前の『ブラジル』っていう喫茶店に来てくれ。
  それでな、来る時は誰か一人そっち側の人間を連れてきて欲しいんだ。
  今度の勝負にも必要な存在だから、真剣に選んだ方がいいぜ?」

「え・・・・? 誰か一人を連れていく・・・・・?
  なんでそんな必要があるんだ?」

「まあ、それは来てから説明するよ。
  こっちは信次を連れてく。
  こないだ俺と一緒にいたヤツ。」

「・・・・・わかった。
  必要だってんなら連れてくよ。
  じゃあ4時に。」

「おう! 遅れないでくれよな!」

そこで電話は切れた。
しかし、何故連れが必要なのか、その点がいまいち理解できない。

「(なんか面倒くさい勝負になりそうだな・・・・)」

若干気が滅入ってきた。

優司としては、シンプルに『6を掴んだ方が勝ち』というルールの方が好ましい。

当然、設定読みが得意だということが最大の理由だが、それ以外にも『即興で決められた細かい
制約がある』というのが嫌なのだ。

まず、八尾の決めたルールを吟味するという作業が面倒。
勝負相手が作ったルールなのだから、当然相手に有利になるようにできている可能性大。
しかも、パッと見ではそれがわからないように巧妙な作りにしてくるはず。

特に八尾は、なりふりかまわず勝ちを拾いにくる人間。
充分に注意しなければならない。

そして、しっかりと吟味したつもりでも、即興で決まったルールの中では『紛れ』も多い。

予想もつかないようなことで足元をすくわれるかもしれないのだ。
逆に、予想もつかないようなことに助けられることもあるわけだが。

「(誰か連れてこい、か・・・・・
  よし、日高に頼むか。)」

優司は、一度ポケットにしまった携帯を再び取り出し、日高へと電話をした。


**********************************************************************


約束の時間をちょっと過ぎた、16:00を少し回った頃。
八尾に指定された駅前の『ブラジル』にて。

「・・・・・遅いな。
  本当にその八尾ってのは来んのか?」

日高が軽く疑念を抱く。

今日は朝から北斗を打っていた日高。
しかし、どうみても設定6はなさそうだと判断してやめたところに、丁度優司から電話がかかって
きたのだ。

自分の打っている台の設定は期待できないし、ということで、優司に協力する時間が出来たため、
呼ばれるままに『ブラジル』へ来た。

「大丈夫だよ日高。 絶対来るよ。
  大体、アイツから呼び出したんだし、ここで来なけりゃ勝負自体成立しないんだしね。
  絶対来るでしょ。」

「・・・・・だったらいいけどよ。」

やや腑に落ちない感じの日高。

それもそのはず。
いきなり連れてこられて、しかも不毛に待たされているのだ。
不機嫌になるのもやむを得ない。

その時、不意に優司が声を出す。

「あっ・・・ 来た、あいつらだ。」

この言葉に反応し、優司の視線を追う日高。
二人の男がこちらへ歩いてくるのがわかる。

「あの二人か・・・・?」

「ああ。 茶髪で、両耳に3連ピアスしてる方が八尾だよ。」

短い言葉を交わし、敵が現れたことを察する。

「よぉ、ちょっと待たせちまったな、わりいわりい。」

ふてぶてしく言葉を発する八尾。
それに対し、冷静に返答する優司。

「まあいいけどさ。
  さっさと話を進めようよ。」

「おう。 ・・・・で、相方は日高君でいいんだな?」

ここで、優司と八尾の掛け合いに絡む日高。

「おい、なんで俺のこと知ってんだ?
  初対面だろ?」

「そりゃ知ってるよ!
  有名だもんなぁ。
  『エース』なんていうヌルいホールに居座り続けてられるなんて羨ましいよ。」

「・・・・・なんかトゲある言い方だな。
  ケンカ売ってんのか?」

「別に? そう取るのは勝手だけどよ。」

会うなり、いきなり一触即発状態へと陥った。
 

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