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ゴーストスロッター 第17話



■ 第17話 ■

5・6確定の百景を回し始めて約5時間。

「(・・・・・閉店まで残り10分か。
  この1000円で最後にしよう。
  まさかこんな時間でまだ再投資させられるなんて・・・・・・)」

結局、何も変わる事はなかった。

優司は優司。
人智を越えたヒキ弱は健在だったのだ。

稼動5時間、総回転数3600G、投資35000円、回収ゼロ。
これが今日の優司の成績。

「(やっぱダメなのか・・・・
  まあ、なんとなくわかっちゃいたけど。)」

もはやこういう展開になっても、イラつく気にもなれなかった。
優司にとっては、こういう展開が日常なのだから。

イラつきはしないが、やはりショックは受けた。
自分はスロでまともに勝つことはできないんだ、ということを再認識させれらたのだから。

今さっき投資した1000円分のコインを使いきり、ボーっとしながら席を立ち、そのまま出口へ向かって
フラフラ歩き出した。

ところが・・・

「イテッ!!」

不意に聞こえてくる男の声。

それと同時に、何か違和感を感じた優司。
瞬時に、近くにいた男の足を踏んでしまったことに気づいた。

「あ! す、すみません!
  ついボーっとしてて・・・」

「いってぇなぁ・・・・ 」

謝ったのにも関わらず、足を踏まれた男はまだ不愉快そうにしている。

「だ、だから謝ってるじゃないですか。
  ホントすみません。」

「・・・・・まあいいや。 さっさと行けよ。」

「(なんだよコイツ・・・
  こっちは素直に謝ってんのにさ。)」

相手の横柄な態度にやや苛立ちを覚えたものの、一応自分が悪いんだし、と無理矢理自分を納得させ、
その場を離れようとした。

その時だった。

「あッ!!」

足を踏まれた男の連れの中の一人が、突然叫んだ。

「どっかで見たと思ったら、コイツあれですよ、例の、日高とスロでやりあったっていう・・・」

「何だと? コイツがか?」

「間違いないですよ。
  この前居酒屋で日高たちとこの男が飲んでるとこをバッチリ見たんで。」

「おい! ちょっと待て!」

せっかく厄介なやりとりから抜け出せたと思うも、すぐさま捕まってしまった。

「お前、本当に光平と勝負して勝ったヤツか?」

「光平・・・・?」

「日高光平だよ! 本当にお前なのか!?」

「(ああ、日高って、光平っていう名前なんだ。
  ってことはコイツは日高の友達か何かかな?)」

最近頻繁に会うようになったものの、未だに下の名前すら知らなかったことに少し可笑しさを感じた。

「ああ、そうですよ。
  キミは日高の友達?
  それだったら、ここでこんな口論するようなことはないと思うんだけど。」

優司のこの言葉に、顔を真っ赤にしながら男はこう答えた。

「あ!? そんなこと一言も言ってねぇだろうが!
  余計なこと言わねえで、聞かれたことにだけ答えろ!
  お前は本当に、日高光平と勝負して勝った『夏目優司』なんだな?」

「だ、だからそうだって言ってるじゃないですか・・・・・」

「よぉし、ちょっと外に出ようぜ。」

優司は強引に腕を掴まれ、ホールの外へと連れ出された。


**********************************************************************


「こんなに早く会えるとは思ってなかったぜ。
  嬉しいよ、ほんと。」

外へ出るやいなや、不敵な笑いを浮かべながら話すこの男。
優司は、男4人に囲まれていた。

「とりあえず名乗っておくよ。
  俺は真鍋ってんだ。 真鍋遼介。 よろしくな。」

「・・・・・・・・で、その真鍋君が俺に何の用なの・・・?」

「お前、あの光平に設定読みのスロ勝負して勝ったんだってな?」

「まあ・・・・・一応。」

「そんな謙遜すんなよ。
  あれだけスロバカなあいつに勝つってのはなかなかのモンだぜ!?」

「そりゃどうも・・・・・」

「でさ、そのついでと言っちゃなんだけど、俺とも勝負してくんないか?」

「え??」

「『え??』じゃねぇだろ!
  光平とやったことと同じ事をすりゃいいだけだよ。
  30万を賭けて俺と設定読みで勝負してくれりゃいいんだ。 簡単だろ?」

「・・・・・・・・」

真鍋の言葉を受けて黙りこくる優司。

「そんな深く考えることねぇよ。
  あんな勝負仕掛けるくらいだから、自分の読みに自信があるんだろ?
  あんな『エース』みたいなヌルい店で勝負して勝ったってなんの自慢にもならねぇぜ?」

「・・・・・別に自慢するつもりで勝負したわけじゃないよ。
  いろいろと事情があったからね。」

「まあそんなことはいいからよ、とにかく俺とも勝負しようぜ!
  もちろん、仇討ちとかそんなダルいことじゃねぇからさ。
  ただ、光平に勝ったアンタと勝負したいだけなんだよ。 いいだろ??」

「・・・・・・・・」

また黙りこくる優司。
優司には、この男が何を目的として自分にスロ勝負を吹っかけてきてるのかわからなかった。

ただ刺激に飢えているだけなのか、それとも日高に勝ったことに何か問題があるのか。

「・・・・・あのさ、日高と真鍋君との関係はなんなの?
  少なくとも他人じゃないんでしょ?」

「まあね。 他人ではないな。
  そのへんのところは光平から詳しく聞けよ。
  とりあえず今は、勝負を受けるかどうかだけ返事をしてくれ。」

当然、優司としてはこんな勝負を受けたくはない。

日高との勝負はやむを得ずやった感があるが、この男と勝負することには何もメリットがないのだから。
日高とは、「ただ現金が欲しい」という理由で勝負したわけではないのだから。

しかし、真鍋の様子を見る限りでは、ここで『やりたくない』とは言えるような雰囲気ではない。

おそらく、『勝負する』という言葉を口にしない限り、この場から解放してくれそうにはなかった。

「・・・・・・イヤだって言っても聞いてくれないんでしょ?」

「おお! よくわかってんじゃん!
  俺は、こうと決めたらその通りに行動しないと気が済まないタチでね。
  まあいいじゃん!?
  俺とだったら、よりやりがいがあると思うぜ!?
  まあ、イヤだっつったら殴ってでもやらせるけどね。」

「・・・・・・・・・・」

「で、どうする? やるか?」

「・・・・・・・目的はなんなの?」

「あん!?
  そんなモン決まってんじゃん。
  光平に勝ったヤツに勝てば、俺はその上をいく男ってことになるだろ?
  おまけに金まで手に入る。 言うことないじゃん!」

「そんなに日高に恨みがあるの?」

「だからそのへんはアイツに聞けって!
  とにかく、勝負するよな!?」

人気のないところで男4人に囲まれている状況、そして真鍋の強引さ。

もはや、断れるような状況ではなかった。
 

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