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読者ライター【男爵】の記事21



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闇夜のゼニガタイム [ 2017/10/31 ]

読者諸兄御機嫌よう、男爵です。

ホールにおいてレアな現象は、しばしば起こるものです。
それがGODinGODや押し順当て全正解といった喜ばしいこともあれば、高設定確定演出を出しながら負けてしまうという避けたいものまで。

そして時には、遊技結果と全く無関係な現象、いや、トラブルが降りかかることもあります。

今回は、過去私が遭遇したレア現象、偶然が重なった可笑しくも悲しい一日の話。
スロット紳士こと男爵の体験談を聞いてほしい。
(※使用画像はイメージであり、当時のものではありません)

 


7が揃えば711枚を確実に獲得でき、現実的な確率で即連する。
プレミアフラグを引かずとも、ちょっと噛み合えば一時間で3000枚の程度の獲得は珍しくない。

今聞くとお上がカンカンになって怒鳴り込んできそうな仕様だが、4号機後半を彩ったストック機時代ではごく普通に設置されていた仕様だ。
いわゆる大量獲得機に類する設置台の人気は『吉宗』が頭一つ抜けていた感はあったが、私はこの機種を好んで打っていた。


主役は銭形
『主役は銭形』(2004年 平和)


大量獲得機の中では安定しやすく狙いどころも多い、吉宗よりもライバルが少ない、といった理由から、当時の収支を支えてくれていたとっつあんである。
今見ると演出の種類はそれほど多くないものの、伝統のタイプラ演出は本機でもアツい演出となっており、ボーナス中に発動すれば問答無用の1G連だった。


その日はあいにくの雨だった。
しかしホール内では関係ない、むしろこんな日こそパチスロ日和だなどと心の中でつぶやいてホールに突入する。
晴れていてもホールには連日突入していたので、日和など関係なかったのだが。

狙っていた銭形は先客がいて2箱積んでいた。

今日は別の台にするかとキンパルをストック推測をしながら回し、下皿が満杯になったところで一息いれようと外に設置してあった自販機に向かった。

いつのまにか雨脚はかなり強くなっており、豪雨といっていい状態。
やはり今日はパチスロデーにしてよかった、自分には外出センスがあるななどと思っていた。

そもそも外出センスなるものが存在するかはわからないが、日差しも無いのに変なサングラスと輸入もののグロいキャラクターTシャツを着用していた当時の私にファッションセンスが無いのは確実だ。


店内に戻ると、例の銭形は空席になっていた。
コイツはツイてるぜと、移動して回しはじめる。

違和感にはすぐ気付いた。
MAXBETボタンがほとんど効かないのだ。
前任者が辞めたのはもしかしてこれが原因なのかもしれない。

強めにバシバシ押せば反応することもあるが、毎ゲームそんなことをすれば周囲に迷惑だ。
一応1枚がけ用のBETボタンは通常通り動くので、そこを使って続行した。

500G前半でBIGが当たり、おなじみの3G連演出で銭形のとっつあんが走っていく。
うん、やはりいつ打ってもこの3Gは楽しい。

結果として即連こそしなかったものの、181Gまでのゾーン内でBIG3回、REG1回の連チャンで2000枚近くの出玉を獲得できた。

この頃になると、左手中指を駆使してBETボタンを素早く3回押す動作も板についてきた。
多少違和感はあれどそこはスロッタ―、期待値の高い台があれば食事もとらずに回し続けることなど苦ではない。
中指がつるまでボタン連打してやろうと気合を入れる。

その時、隣にドカッと音をたててダイナミックに尻が着地した、ふくよかなマダムが隣のニューパルを回しはじめたのだ。

紳士である私は「ふくよか」と表現しているが、そのふくよかぶりはいわゆる「デラックス」レベルであった。
まさにニューパルサーデラックスだ。

とはいえ私も他人の美醜に文句をつけられるほど立派な人間ではない。
それも彼女の個性なのだ。
暖かい目で見守り自分の台に集中する。

私の台も設定差のあるところで当たり、ますます好調。
メダルを箱に詰めて頭上に置いた。

ふと視線を感じ、見ると隣のマダムデラックスと目が合う。

「ねぇ、押して!」

回転中のリールを指差しながら、小学生のようなわんぱくテンションで頼まれた。

頼まれれば仕方がない。
半身になりながら右リール下段に7図柄を狙う……バーまで滑ってきた、レギュラーかな。

その瞬間くわっと般若のような形相になるマダム。
気持はわかるがよくあること、そのまま黒い塊を揃えて引き渡す。

「……バーかい」

あからさまにテンションを落とすマダム。
別に礼をして欲しいわけではないが、こちらが悪い事をしたみたいな雰囲気を出すのは勘弁していただきたい。

そして私の銭形も、大きくハマりはしないものの4連続でREGとなった。
そんなところで空気を読まなくてもいい。


その後500G近くまでハマり、頭上から箱をおろして下皿にうつす。
この時なんとなく恥ずかしい気持ちになるのは何故だろう。
この現象に名前をつけてやりたい、「シャイニードロップ」とか。

一度積上げた箱をくずして再度下皿へと戻るメダルには、帰巣本能か何かがあるのだろうか。

全てが台の中まで戻るのは阻止したいものだ、私に宿れ、遡上する鮭を狩るヒグマのような力強い剛運よ。

私はおじいちゃんの家に置いてあった木彫りの熊を思い浮かべながらレバーを叩く。
相変わらずMAXBETは効かないので、ポチポチとこきざみにボタンを連打する繊細な熊だ。


主役は銭形


珍しく想いが通じた。
時代はサーモンハンティングである。

久しぶりのBIGボーナス、711枚を私に届けておくれ。


ボーナス開始早々に液晶が暗転しフリーズした。

<俺の名はルパン三世>

プレミア確率のボーナス中タイプラ演出、これは1G連確定だ。

そして妙にデカい音声でピートマック・ジュニア氏が男には自分の世界があると歌いだす。

さらに続く3G連にも当選し、ジュニア氏へのアンコール。
あっという間にハマり前以上の出玉を獲得。
やはり大量獲得機がツボにはまると破壊力は抜群だ。

気付くと横にいたマダムデラックスはボタンを強打、明らかにイライラしている。
その様子を例えるなら、風を払い荒れ狂う稲光。
台風が接近しているらしい外の天気と、奇しくもシンクロ率100%だ。

隣の調子が良いと不機嫌になる人は珍しくない。
でも騒がしいのは台の仕様なので勘弁していただきたい。


この頃になると、マダムは店員に目押しを頼んでいた。(当時は店員の目押しサービスは普通に存在した)
調子よく出し続ける私に頼むのが癪に障るのだろう。
こちらとしても面倒が無いのでむしろ良かった。


もう何度目のBIGだろう。
その好調ぶりに浮足立ち、吐き出されるメダルを箱に詰める。

その時、液晶が暗転しフリーズした。
おいおい、また1G連か、今日は絶好調だな。

違った。
私の台だけではない、全ての台がフリーズし照明が落ちていた。
停電だ。

かなり荒れた天候だったので、停電が起きること自体は不思議ではない。
しかしホール内で遊技中、しかも大当たりの最中に電源が落ちたらどうなるんだろう。
無効になることは無いだろうけど、復旧できなければ事実上終了じゃないか?

【自然災害等による場合、出玉の保証はありません】

サンドに貼りつけられた店舗ルールにもしっかりと記されている。
その文言をじっと見つめながら時を待った。

周囲は若干ザワついているものの、暴動が起きるというような雰囲気もない、まったく日本は平和だ。


何の説明もないまま10数分たっただろうか、せめてあと500枚以上は残ってるボーナスだけでも消化したいと願っていた時、


主役は銭形


「逆押しだ!」

待ってたぜ、とっつあん!

停電から復旧まで、ホールからは何一つリアクションが無かったが、とにかく停電前そのままの状態で再スタートされた。
このまま打っていいのか、何のアナウンスも無いが、周囲の人達が遊技を再開しているのを確認して打ち始める。


停電には少々驚かされたが、ホール内は徐々に日常の風景をとりもどしていく。

ああそう、だMAXBET効かないんだコレ、などと思いながら711枚を獲得。

ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!


主役は銭形


突然けたたましい異音が発せられた。
台が突然SANKYOの『マクロスF』になったわけではない。
BIG終了時にクレオフされエラー画面が表示されていた。



なにこれ?
ボーナス中に電源が落ちたからかな?

とりあえずエラー解除のため店員を呼び対応してもらう。

少し心配していたものの、問題無く3G連演出が始まり、またしても当選。
天候は不順でも私のとっつぁんは絶好調だ。


快調ぶりに満足しつつボーナスを消化すると、

ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!


主役は銭形


またかいな!
平和オリンピア機のエラー音量は妙に大きい。

……ひょっとしてずっとこうなのか。

ここで思い出したのだが、その昔パチスロというものはBIG後は一度打ち止め状態になり、その都度店員がリセットをかけるものだった。
今はそうした煩わしさを省略しているが、どこかのスイッチで過去の仕様に戻せる可能性は高い。

細かいことはわからないが、電源ON/OFFを契機に台がそういう状態になってしまったのかもしれない。

MAXBETの件に続いて変な障害を抱えてしまったが、出玉推移そのものは絶好調のため辞めたくはない。
店員に言えばなんとかしてもらえるのだろうか。

いや、最悪の場合には台の不具合のためなどと言われ強制終了のおそれもある。
すくなくとも利便性を我慢すれば出玉だけは獲得できるのだ。

私は黙って続ける道を選んだ。
絶好調の銭形を前にしては大した障害ではない。


数回のREGを挟み、ゼニガタイムからのBIGだ。(ちなみにREGでエラーは出ない)

ピロロピロロピロロピロロ
キュゥン!キュゥン!キュゥン!キュゥン!

もうクレオフには慣れた。
これはこういうものなんだと考え、店員呼び出しボタンを押す。

その時だった。
突然隣のマダムデラックスが私を捕らえ、丸太のような腕をからませて叫んだのだ。

「この人、ゴトやってるよ!!」

私の地獄のような2時間30分が始まった。

「この人ゴトやってるから!!」

うん、わかった、2回も言うな。

「もう逃げられないよ、店員呼んだからね!!」

逃げないし、コールボタンを押したのも私だ。

私の左腕にがっしりとしがみつくマダム、という嬉しくないオプションが上乗せされ、そろそろ左肩がはずれそうだ。

周囲の視線を一身に集めているところに店員が駆けつける。
そしてメダル補給用のジョッキを手にした店員に向かい、マダムは口角泡を飛ばしてまくしたてた。

「もう補給の必要は無い、コイツはゴト師だ」

「BETボタンを不自然に連打しているし、異常なまでに連チャンしている」

「やたらと台がエラーになるのが動かぬ証拠、短時間にこの回数はおかしい」

実際にはこの50倍くらい喋っていたが、彼女の主張を要約するとそんなところだった。

「私のお金がこういうゴト師に取られている、絶対許すな、取り戻せ」みたいな要求を頻繁にしている横で、私はとにかく面倒なことになったとため息をついた。

念の為調査に協力いただけますかと店員に確認され、やましいことも無かった私は応じることにした。


事務所に連れて行かれるんだろうかと思っていたら、店の隅にあった休憩スペースに連行される私とマダム。

これは今書いてて思ったことだけれど、事情を知らない人がみれば普通にゴト師として連れて行かれる人だ。
エラー対応をしてくれていたバイトスタッフと社員らしき人となにやら話している、これから何がはじまるんだろう。

ゴトの証拠はないかと身体検査をされるのだろうか。

はじめは上着だけの約束だったけれど、それじゃあよくわからないなぁなどと言われてパンツまで脱がされるのではないだろうか。

私も潔白を証明するためと顔を真っ赤にしながら辱めに耐えるのではないだろうか。

それを見ていたマダムもいつしか興奮してくるのではないだろうか。

あらやだ、なんだかアタシ身体が火照ってきちゃったわ、などと濡れた瞳でみつめてくるのではないだろうか。

「……えーっと、台のデータを確認しましたが特に不審な点はありませんでした」

社員さんがあっさり私の身の潔白を証明してくれた、パンツ脱がなくていいのか。

念の為ボディチェックだけ、と言われ同意すると上着と靴を確認され、あとは本当に形式程度のボディチェックが済んだ。

「おやぁ、この膨らみはなんだい?」などといやらしく股間をまさぐられるのかと思っていたが、なにごともなくあっさり終了だ。
マダムも身体が火照らずに済んだ、本当によかった。

実際やましいことは無いし戻って続きを打とう、そう思った時だった。

「待った!! まだ終わっちゃいないよ!!」

復活演出のようなセリフを吐きながらマダムデラックスがカットイン。

「とにかくコイツの出し方はおかしい!!不快だ!! 迷惑料で一箱くらいよこすのがスジってもんだ!!」

振り上げた拳の行き場を失ったのか、なんだか滅茶苦茶なことを言い出した。
前半はともかく、後半なんて単なる自分の欲望、強欲マダムだ。

こちらの台は波が荒い仕様なのでと店員も説明しているが、マダムは一歩も退かずますますヒートアップ、
過程は違えど、彼女の身体が火照っているのは間違いない。
結果として予想を的中させた私はエスパーだろうか。


お客様はもう結構ですのでと席に戻された私。

件のマダムは戻ってこなかった。
納得して帰ったのか、どこかに強制連行されたのかは不明だが、ともかく平穏が訪れたと遊技を再開する。

どのくらい平穏かというと、具体的には1500Gほど平穏だった。
うん、これは最大天井だ。

ご存知のベテランスロッタ―も多いと思うが、銭形は前兆がわかりやすいので、何も無い時は本当に何もないまま天井に到達する。
とはいえ今までが出来過ぎていただけだ、一度くらい天井にも行くさ、3G連もはずしたけど気にしない気にしない。

さぁ、気を取り直して今度はロングフリーズでもみせてやろうぜ。

999G REG

うん、REG天井だね。
滅茶苦茶出玉を削られたね。
停電・ゴト容疑・出玉の急降下のハッピーセットで心もポッキリだ。

ヤツはとんでもないものを盗んでいきました、のセリフが頭の中でめぐりながらのシャイニードロップ。

さらに550Gほどとっつぁんの散歩を眺めてドロップアウト。

色々な事が一度に起きた一日だった。


長時間連打を続けた左手の中指もつりそうだったが、それ以上に楽しくなったり不安になったりと感情の起伏が激しすぎて顔面の筋肉が引きつりそうだ。

まぁいい、かなり減ったとはいえ二箱ほどは流すことはできた。
珍しい体験ができたと思えば話のタネにもなるさ、さぁ帰ろう。


店のドアを開けると2秒で全身がずぶ濡れになった。
ああそうだ、外は停電になるほどの豪雨だったんだ。

おそらく暴風の影響だろう、駐輪場に停めたはずの自転車はなぜか道路脇の排水口に後輪をつっこんだ状態で発見された。
なんでこんな日に自転車で来てしまったのかと後悔していると、胸元にひっかけていたサングラスが強風で飛ばされ濁流に消えていった。


主役は銭形


先程までは波しぶきを背負う渋いとっつぁんを見ていたが、今の私はしぶきどころか滝のような雨が直撃している。
自慢のTシャツもビッチョリ貼りつき、乳首が透けるセクシー男爵。
そのまま鼻水をたらして自転車にまたがる。

脳内では銭形マーチの余韻が残りながらも国道沿いを爆走。
大型トラックからの泥ハネをモロにうけなんかもうグチャグチャ。
史上最も過酷で見苦しいゼニガタイムの始まりだ。

 


ホールが営業中に停電するとどうなるのか、ゴト疑惑がかけられるとどうなるのか、マダムデラックスのぶら下がりに私の肩が耐えられるのか。
通常では体験できない現象が一度に確認できました。

できれば出玉獲得に繋がるようなレア現象が起きて欲しかったのですが、私が獲得したのは翌日からの高熱と鼻水、そして左半身の関節痛だけだったようです。

外出センスは多分無い、ずぶ濡れ紳士な私の思い出である。



(C)モンキーパンチ/TMS・NTV
(C)OLYMPIA



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