[3]スロット開発の流れ [2017/9/21(木)] |
さて、では今週のテーマだが、規則関係の話題も特にないので、スロットが作られるまでの大まかな流れを説明していこうと思う。
スロットは娯楽にあたるものなので、みんな何となく居酒屋で飲みながら色々決めているのではと思われているのではなかろうか?
実際自分も入社前までは、やはりそんなイメージを持っていた。
しかし実際は、多くの人間が関わって長期間かけて作るものなので、適当にできるものではなかった。
まぁ、当然といえば当然なのだが。
ということで、大まかな流れを説明していきたい。
まずプロジェクトの人数だが、小さいプロジェクトだと3人くらいから大きいと10人超の人間が関わっていたりする。
期間は概ね1〜2年といったところだ。
続いて工程に関してだが、まずモチーフが上から出てくることが多い。
このモチーフで機械を作るようにというお達しだ。
それに対して、まずはモチーフの特性の研究を行う。
このモチーフはどういった点がユーザーの心をつかんでいる部分かを洗い出す。
それとほぼ同時進行で行うのが、市場の状況と予測だ。
今後どんな機械がユーザーの心をつかんでいけるのかを予測する。
そして、モチーフの特徴と市場の動向を合わせて、機械のコンセプトを決めていく。
例えば、「市場で圧倒的な一撃性を誇る機械」など、これから作る機種の指針となる内容になる。
さらっと書いたが、ここまででおよそ数ヶ月の期間を使う。
機械のコンセプトは、プロジェクトの心臓部にあたる。
ここが適当だったりすると、だいたいプロジェクト中盤くらいで自分たちが何を目指しているのかわからなくなり混乱する。
逆に、コンセプトがしっかりしていれば、何か迷ったときに、コンセプトに立ち返れば、それを軸に物事を決めていくことができる。
例えば、コンセプトが「圧倒的な一撃性」だとすれば、一撃を重視して、初当たりが重くなるのはしょうがないという結論に至るだろう。
そうなると、考えるべきは、いかにハマっているという感覚を軽減するか?といった部分が会議の焦点になる。
しかしコンセプトがはっきりしていないと、市場では初当たりが軽い機械が流行っているから少し一撃性を減らして、当たりやすさも足すべきか?など、決めきれなくなってしまったりする。
そのため、ここはある程度時間をかけてもしっかり決めていく必要がある。
ちなみにこの期間は、スロットの開発をする上で一番楽しい部分になるが、決まらないでズブズブと長引いていくケースは底なし沼に落ちていくかのような地獄だったりもする。
さて、コンセプトが決まったら、それを軸に大体のゲーム性を決定する。
これが機械の大枠となる。
ここまで決まったら各自、一度分担作業となる。
ゲーム性を担当する人間は抽選システムや詳細を設計したり、演出を担当する人間は外注に映像を発注したり、演出バランスを考えたりする。
そうして数か月後に大枠のみが入った試作機が出来上がる。
ここで、試し打ちしてみることで方向性の確認を行う。
「お、いけそうだ!」となれば、そのまま詳細をつめていくことになるし、「物足りない・微妙」となれば、何が問題なのかを検討することとなる。
この部分は、例えると、粘土でお城を作るとなった場合に、まずはお城の大体の形や大きさを決めてザックリとした形を作ってみるという行為と言える。
大枠の確認が取れたら、最後は詳細を煮詰めていく。
ここからは大体の形を決めた粘土のお城に窓を入れたり、屋根の形を凝ってみたりと細かい部分を足していくこととなる。
「もっと面白くするために」を軸に、細かい部分の調整を加え、大体2〜3回の試作機を制作していく。
この段階までくると、最後の方は残りの期間と残予算との闘いとなってくる。
製品が見えてくればくるほど、あれもこれも入れたいとなってくることが多い。
この辺は、リーダーを務める人間のバランス感覚が重要である。
何しろ時間もお金も限りがあるので、機械の商品価値が上がると判断できるものだけを正確にピックアップして詰め込んでいく必要がある。
しかし、最後まであがいて入れたものは経験則的にはいい方向に転がることが多い。
逆に諦めてしまうと、市場ではどこか物足りなさが残る機械になってしまうことが多い。
まとめると、プロジェクトの大まかな流れは、まずコンセプトの企画、続いて大枠を搭載した試作機の設計・内容確認、そして詳細を詰め込んだ試作機2号〜3号の設計・最終確認といった流れになる。
これで概ね一年超の期間を費やす。
そして完成品は型式試験に送られていくというわけだ。
あとは適合を祈るのみである。
とまぁ、こんな感じで機械は作られている。
最後の期間は時間に追われてなかなかハードだが、やはり出来上がった時の達成感は、何度味わってもいいものである。
もしスロット開発に興味をもった学生の方がいたら、就職してみるのもいいかもしれない。
まぁ、今後の業界がどうなるかは保証しかねるが…
では皆さん、また次回もよろしく。
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