[1]パチスロに憑りつかれた男 [2016/2/3(水)] |
朝8:00。
とんでもない目覚ましの音に殴りつけられるように起きる。
煙草を手に取り、全ての支度を済ませる。
ラピュタのドーラさんに言いたい、40秒もかからんぞと。
ナイキのバスケットパンツにTシャツ、パーカーという戦闘服を身にまとい、お気に入りのAraiのフルヘルメットを被る。
Monsterのグローブを付け、ご機嫌なバイクにまたがってホールへと向かう。
駐輪場に着くと、いつものように真っ黒なCB400revoが止まっていて、こっちを向いてたたずむ男性。
顔なのか真っ黒クロスケなのか解らない程に髭が生えているけれど、これが剃ってから3日目だというから、この人の体の防衛本能はどうなっているんだろうか。
この人物こそが、僕をこの世界にひきずりこんだ先輩Aである。
二人で商店街沿いに朝から並んでいる。
平日は60人ほど、土日で100人ほど、旧イベントの日で250人ぐらい並ぶこの店に、週6日ぐらい並んでいた。
僕は初めの頃、朝のまぶしい太陽に照らされながら、出勤や登校の生徒たちからの冷たい視線、いや、むしろ見て見ぬふりをされるあの感じに、ややメンタルをやられていた。
「俺たちは日なたを歩いちゃいけないんだよ」
いつも、こんなことを考えながら抽選を迎えていた。
抽選は、左右の箱から選ぶシステム。
つまり、自分の番の時に右にも左にも一桁がないパターンもある、意味不明な抽選だった。
僕らはいつも右を選ぶ、何とかの一つ覚えのように。
抽選が終わったら二人でフレッシュネスバーガーに行き、開店時間を待った。
先輩とは年も離れているし、物凄い仲良しな訳ではなかった、と思う。
この黒い塊みたいな人は、オカルトを嫌った、超現実的な人だった。
座った台が6だと思ったら、まず否定的な要素を探せと教わった。
そして周りの台の見方や、この店のどんな所が強いのか、そんな事も教わった。
前回、「やるべき所でやる」をテーマにと言ったけれど、起源はこの真っ黒な塊だった。
「マジカルチャレンジはレア役を引くもので、バーなんて揃えてもしょうがない」
「選択式チャンスゾーン、一撃以外は選ぶな、レア役引けば勝てるから」
「お前なに選んでんの? 裏挑戦以外必要ないけど?」
「二択? 全部レア役ならそもそも選ぶ必要ないじゃん」
僕にとっては名言としか思えない言葉を言い放つこの男は、顔も良いけど、男らしかった。
そんな「ただ引けばいい主義」。
…養分じゃん。
いつも勝てるわけないじゃん。
きもい。
うざい。
そんな風に思う読者の方々も多いだろう。
ぼくは、いつも目の前で繰り広げられる、この人のヒキに魅せられていた。
まさに、「夢」を見せてくれていた。
高設定らしき挙動の台に座ることが多く、しかもやれる、本当の夢をいつも見せてくれていた。
もちろん、低設定で大ハマリ連発して結果的にマイナスとなることもあった。
でも、ぼくはどこか「夢を見ることができる」パチスロにはまっていった。
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