[3]人が魔女へと変わる時 [2017/2/10(金)] |
<その後……>
その日の夜、LINE上ではいつものノリで会話が続けられた。
D 「誠さん23万勝ち、俺11万勝ち、A10万負け」
C 「マジでA、10万負けの報告とかウケるんだけど」
B 「俺6万勝ち」
E 「Aおつ〜(笑)」
だから、この後のAの返信も、皆いつものノリの延長くらいにしか思わなかった。
A 「おまえら性格悪すぎ、全員死んでください」
Aの大敗をイジる他の4人も4人だし、それに対してのAの暴言も暴言ではある。
だが、この日はさすがに、入場抽選1番でゴールデンゾーンの緑ドンに座って大敗したAへの同情もあり、また、これが彼等流のコミュニケーションなのだろうという気持ちもあって、それ以上深くが考えなかった。
しかし、大学生であるAが負けた10万円の重みは、社会人である私のそれとは大きく異なっていた。
私の思う以上に、Aの心の中には「良くないもの」が溜まりはじめていたのであった。
そして……
その日以降、Aの打ち方は荒くなり、負け額は日に日に積もっていった。
それと同時に、彼の仲間内での態度も「良くない方向」へと変わっていった。
今までであれば、笑って流していたようなたわいもない冗談を許せない。
そして、それに対して容赦なくキツイ言葉を浴びせ返すのだ。
「黙って(笑)」は「黙れ」になり、「死んでくださいw」は「死ね」へと語調を変えていく。
パチスロに行った日は、勝っても負けてもAはその調子だった。
「Aは魔女になってしまった」
キツイ語調で罵声を発するAを、私達は少しずつ避けるようになっていた。
Aを除いた5人のLINEグループができたのはあれから半年後の事で、それから先、Aが何をしているのかは今も知らないままである。
Aを変えてしまったものは何だったのだろうか?
それが、パチスロに懸けた希望の裏返しであったのか、それとも失った金の魔力であったのかは分からない。
彼の中に溜まり続けた「穢れ」は、彼を魔女へと変えてしまい、彼から4人の幼馴染を奪っていった。
これもギャンブルの持つ一つの側面である事は否定できない。
「すべての魔女を生まれる前に消し去りたい。 すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女をこの手で」
Aと楽しく飲み明かしたあの日を思い出してこう思う。
「神様でもなんでもいい」
願わくば、彼等がパチスロと出会うあの日の前まで時間を戻してはくれないかと。
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