[3]最も勝ちやすい機種とはどんな台なのか?≪後編≫ [2016/10/7(金)] |
<そして、終わりを迎え>
永遠にも思えた常勝の立ち回りはある日、突然設定状況が変わり、終わりを迎えた。
デルタ地帯では設定が入らなくなったものの、しばらくの間は他の地域やイベントでファイヤードリフトを狙う事もできた。
とはいえ、それも束の間。
いつからかファイヤードリフトの設定6を見かける事はなくなり、そして台そのものが撤去されていった。
1ヶ月間打ちこんだという経験値があったからだろう。
私達のファイヤードリフトの勝率は歴代の機種を並べて見ても群を抜いて高かった。
打ち続けている間は、やれ飽きただの、やれ退屈だ、と贅沢を言うものの、無くなってしまえばやっぱり名残惜しいし、収支の面でもダメージを受ける。
いつの間にか収支も勝率も平常運転に戻り、私達は常勝の手立てを失っていた。
「そんな事だってある。」
ショックを受ける私に、園長はあの日と同じ笑顔で言った。
その事が、私達は皆いつかは変化を迎えるのだという事、我々はその変化を受け入れ新たな旅に出なければならない、それがスロットでお金を稼ぐ者の宿命であり、それを楽しみだと思える者だけが、この世界で生きていけるのだという事を物語っているように私には思えた。
自分にもそう思える日が来るのだろうか?
その問いに答えの出せなかった私は、いつの間にか大学の卒業を迎え、就職していた。
<数年後>
「誠、最も勝ちやすい機種ってどんな機種だと思う?」
ある時、園長はふと呟いた。
カイジや南国育ち、5号機で言えばキン肉マン等、設定6が丸分かりと言われていた機種たちが私の頭に浮かんだが、園長の答えはそんなものではなかった。
「俺は、あの時のファイヤードリフトだったと思うんだ。」
園長のタバコを吸う仕草は、あの日「パーラーK」に並んでいた時から少しも変わっていなかった。
どんなに設定判別が容易な機種でも、設定6を打った事がなければ、ファイヤードリフトの初日のように精度の高い判別はできないだろう。
逆に、設定判別の難しい機種であっても、設定6を打ったことがあれば、その雰囲気は分かるんじゃないかと園長は言う。
チェリーが高確につながるのか、小役の確率がどのように推移するのか、ボーナスの合算がどのくらいの数字になるのか……
設定6を打てば打つほど、それらが経験値として蓄積されて、より短時間でより精度の高い設定判別ができるようになる。
「勝ちやすい機種っていうのは、そういう機種の事を言うんじゃないかと俺は思うんだ。」
灰皿に置かれたタバコが灰へと変わっていく。
その灰になった部分の長さが、園長がゆっくりと時間をかけて語った事を表していた。
打てば打つほど経験値が増えて、設定判別が容易になる。
設定判別が容易になればなるほど勝率が上がって、それが収支につながってくる。
勝ちやすい機種なのか否かは、台の特性によって先天的に決まる訳ではない。
勝ちやすい機種を見つけるというのは得意機種を作るという事であり、それは言うまでもなく、如何にその台を打ち込んだかの賜物でしかないのである。
「誠もそうは思わないか?」
あの時答えられなかった問に、今なら答える事ができる。
未だに多くの人が「絆」を打ち続けるのはどうしてだろうか?
原作が好き?
システムが面白い?
それだけではないのではないか。
人気もあって、設置台数も多い「絆」は、高設定の使用頻度も高かった。
かなりのゲーム数を打ちこんだという方も多いだろうし、高設定を何度も打った事があるという方も数多くいらっしゃるであろう。
その経験値こそが、「絆の設定6は分かりやすい」というイメージを産み出し、今日に至っているのだと私は思う。
園長の言葉の正しさは、今日のスロッター達の行動が証明してくれている。
10年パチスロを打ち続け、数々の高設定台と、そして得意機種と出会ってきた今だからこそ、答える事ができる。
「最も勝ちやすい機種、それは自分が最も高設定台を打ち込んだ得意機種の事なんだ」と。
〜FIN〜
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