[3]スロッターズライフは小説より奇なり [2017/9/1(金)] |
【それから数週間後】
チーフとの一件があったあの日から、仕事への意識が高まったのか、注意される事が極端に減った。
出来ないのか、やらないのか。
そこをはっきりさせる事は、今後の人生に大きく関わってくる故に、やればできるという事を自分自身に確かめる必要がある。
もはや、自分との戦いモードに突入した訳だ。
仕事は、ゲーム感覚でやるぐらいが丁度いい。
大切なのは、何をするべきかを明確にし、それに対しての優先順位をしっかりと見定めた上でブン回す。
たったそれだけの事だ。
時には躓いたり、スベったりする事もあるだろう。
その時は一呼吸置いて、しっかりと成立役を目押しすればいい。
そうすれば、結果は必ず付いてくるはずなのだ。
お昼休憩の時間になり、店の近くにある公園のベンチで昼寝をする。
仕事終わりにスロットに行く為の英気を、これで養うのだ。
…今すぐベンチを取り壊してはくれないだろうか。
休憩から戻るや否や、店長から突然呼び出しがあり、すぐさま向かう。
すると、何やら難しい表情で、
『異動の話なんだけど… 色々と今すぐに配置転換というのは難しいそうで、来年まで我慢出来ないかな?』
…このパターンは、取り合えず留めさせようとする、思わせぶりな演出だ。
しかしながら、すぐに辞めたいという訳ではないし…
「来年ですか… わかりました」
チーフとの関係次第ではどうなるかは分からないが、一応そんな返事をしたのだった。
ただ、この部署でも唯一幸せな時間があった。
それは、とても仲の良いパートのおばちゃんの存在だ。
息子のようにいつも可愛がってくれ、チーフの目を盗んではおいしいお菓子や、小物をよくプレゼントしてくれる。
そして何より嬉しかったのは、そのおばちゃんもスロットが大好きだった、という事だ。
それ故に、チーフの目を盗んではおばちゃんと色々な話をした。
この至福な時間を“リーチ目”ならぬ、“チーフ目”と2人で名付けてみたり、おばちゃんが切ってくれたスイカを3つ棚に並べて、
「おばちゃん、見て! 強スイカ出来たよ!」
そんな急なフリにも、
『あら、本当だわね! チーフの頭にゲンコツボーナス直撃ー!』
と、そんな下らない事を言って、いつも私を笑わせてくれたのだ。
そんなおばちゃんが私は心底大好きだった。
しかしながら…そんな大好きなおばちゃんは、その2か月後に突然亡くなってしまうのだった。
もっと、大好きな気持ちを伝えておけばよかった。
この時初めて、全ての時間の優先順位をスロットに充てていた自分が、ひどく馬鹿らしく、ひどくちっぽけに思えた。
もっともっと大切にしなきゃいけない事とか大切にしなきゃいけない時間はたくさんあるんだって、そんなメッセージを、最後におばちゃんは私に残してくれた気がしたのだった。
【2008年2月】
社会人になり、もうすぐ1年が経つ。
チーフとの関係性は相変わらずだが、慣れというのは恐いもので、ちょっとやそっと罵倒されたり嫌味を言われる位では微動だにしない、鋼鉄の心をいつの間にか取得していたようだ。
そして、この部署の環境にもようやく慣れてきたのだが、そんなタイミングで店長から、
『3月に異動が確定したので宜しく』
と、長らく待ち続けた異動のお話を頂くのだった。
仕事にも最近はだいぶ慣れ、休みの度にスロットで心のままに打ち散らかそうとも、お金に困る事だってほとんどなくなった。
そして、お金に困る事がほとんどない中でやるスロットは、生活費ギリギリでやるスロットより、とても刺激が少ない。
当たり前の事なのだが、この事実には色々なヒントが隠されていそうな気がした。
【2008年4月】
新しい部署の環境にもすぐに馴染み、通勤ルートでのマイホも確保し、生活も安定した今日この頃。
一つ気がかりなのは、彼女との将来だ。
公園でひどい一言を言ってしまったあの日から、一緒に居ても、彼女が何を考えているのかが良く分からないことが多くなった。
率直に言うと、一緒にいてもつまらなそうなのだ。
今ならば少しは、先を見据えた将来の話をする事も出来るだろうし、その必要もあるのだろう。
社会人一年記念というのを建前に、彼女の笑顔を少しでも見れるような、そんな何かしらのサプライズ付きの食事会でも考えよう。
さっそく彼女に、“来週あたり、都合の良い日で夜ご飯でもどう?”そんなメールを送ったのだった。
【それから一週間後】
彼女との約束を無事に取りつける事が出来た今宵は、彼女への日頃の感謝の気持ちを込めて、大いにもてなしたい。
そんな気持ちがあってか、サプライズの一つとして、彼女が昔から欲しがっていたネックレスをプレゼント用に購入してきた。
少し前の自分だったら、到底実行できなかった計画故に、思わずワクワクする。
いつも通りの待ち合わせの場所に少し早く着き、彼女もその後すぐに到着した。
久々に会ったからなのか、なんだか服装も雰囲気もだいぶ大人になったような気がする。
そんな彼女を、少しばかり遠くに感じたりもした。
食事の方は、他愛もない会話が途切れ途切れあったくらいで、デザートを食べ終わるなり、すぐに店を出る。
向かったのは、前と同じ公園。
「少しばかり公園で話そう」
そんな事を言いながら、前と同じブランコに乗る。
そして、少しばかりの沈黙を破り、私から話始めた。
「前にここで話した時に、ひどい事を言って傷つけてしまった事が、ひどく自分の中で引っかかっていて、あの時は本当にごめん」
でも…と私が続けようとした所で。
『いいんです。 あの時は私も少しばかり気が焦っていた事を反省しましたから』
そこで再度。
「でも、今の自分は結婚に対する気持ちや仕事に対する気持ち、あとは経済的にもたいぶ落ち着いてきたから、近い将来一緒になれたらいいなって、今は真剣に考えてるよ」
そんなプチプロポーズみたいな事を言ったのだったが、それに対し…
『…本当にごめんなさい。 あれから色々考えたのですが、今後は友達として付き合っていけたらって思ってます。 勝手で本当にごめんなさい』
と、まさかの突確ならぬ、突別を切り出される。
「えっ… でも、友達に戻るのは無理だよ。 まだ好きだし」
別れって、こんなに前触れなくやってくるものなのか…辛すぎる。
『友達なら、一番の友達になれるのに…』
そんな事を、本気で言っているのか、気遣って言っているのか、それは分からなかったが、どちらにせよ希望がない事をここで悟り…
「分かった。 今までありがとう。 これ、プレゼント」
そう言いながらその場を去り、不器用な一つの恋が終わったのだった。
【2009年〜2010年】
この間は、
■食べる
■寝る
■適度に女性と付き合う
■スロット
この4つをひたすらループしていた“ダメ男”期間だ。
機会があれば、綴らせて頂きたいと思う。
【2010年6月】
一人暮らしをしながら、スロットだけで一生遊び暮らそうと100万円を軍資金に、無職になる。
これもまた機会があれば綴らせて頂きたいと思う。
長きに渡って、私の過去話【2007年〜2010年を】読んで頂き、本当にありがとうございました!
色々ありすぎて、最後の方は解凍出来ないくらいに圧縮してしまい申し訳ございません。。
そんな過去話も今回で一旦終了させて頂き、次回からはリアルタイムの稼働記事などをメインに展開できればと思っております!
まだどうなるかは分かりませんが、読者様が楽しんで頂けるような記事を書き続けたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します!
それでは、また会える日まで(^^)
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