[2]時は金なり?…打つ! [2017/7/21(金)] |
駅に着くなり辺りを見回してみる。
すると…いた…。
いたものの、信じ難い光景を目の当たりにする。
知らない男と話しているのだ…
状況を飲み込めなさすぎてか、色々な感情が込み上げてくる。
オーラにしたら緑ぐらいだろうか。
やれなくもない。
しかしながら、物陰に隠れながらその様子を見る事しか出来ずにいる。
よくよく見ると、彼女がその男と笑顔で話しているではないか。
知り合いなのか…?
たまたま知り合いに会っただけなのか…??
そうであって欲しい、それならよくある事だ。
しかしながら、嫌な予感と言うのは大体当たるものだ。
お互い携帯を出し合ってしまったのだ。
この演出の発展先の割合は…
■連絡先交換へ…90%【期待大】
■たまたまお互いの携帯に着信…7%【チャンス?】
■実は携帯じゃなくてチクワ…3%【目撃なし】
見るからに、連絡先を交換をしている感じだ。
色々な感情の中に、怒りと嫉妬心が突出して込み上げてくる。
オーラは赤まで高まっただろうか。
彼女に指一本触れようものなら、飛び出す準備は出来ている。
しかしながら、その後すぐに男は彼女の元を離れて行った。
あやうく北斗揃いしてしまう所だった。
私を北斗揃いさせられたら大したもんっすよ。
ギリギリしてないっすけどね。
脳内にて、その当時流行りだった長州小力のネタに被せる。
何はともあれ、無事で良かった。
残された彼女の元へ、一呼吸置いてから向かう。
「いたー!! 本当にごめん!」
まるで今見つけたかのように近づく私に対し、
『はっ…! さっきは感情的になってすいません…早かったのですね…。 お友達は?』
「友達はまだ打ってるよ! 待ち合わせの前にスロットしないって約束破った上に遅刻までして本当にごめんなさい!」
彼女がそこまで感情的になっていない今をチャンスとばかりに、ありったけの謝罪の言葉を並べる。
『もういいですよ。 お腹が空いたので、ご飯食べましょ』
予想以上に怒ってはいなかった事に、肩の力がふと抜ける。
待てよ…
しかしながら、ここにきて先程楽しそうに話してた男への苛立ちが込み上げてくる。
もしかしたらあの男と連絡先を交換してしまった罪悪感が、今の優しさに繋がっているのかも知れない…。
そうだとしたら…。
いや…そうだとしてもこの事ははっきりさせておこう。
「そういえば、さっき…」
と、ここまで言葉を出しかけた所でふと考える。
まてよ…それを聞いてしまったら、その場面を遠くから何も出来ずにただ見てましたよ、と言っているようなもので、自分にとって何のメリットもないのではないか?
そんな私の言葉の間を縫うように彼女から、
『さっき?? そういえば私もさっき、いつも担当してもらってる美容師さんにたまたま会いました』
よかった…。
そういう事だったのか。
笑顔だったのも納得いく。
ただ…
自分が言いかけた言葉を先読みし、それに対して先手を打った彼女の嘘だとしたら…。
「たまたま会うなんてすごいね! よく連絡取り合ってたりする仲なの?」
サラッとブッ込んだ返しをするも、
『いえいえ、あの方はお付き合いしてる方がいますし』
と、サラッと曖昧な返事を返される。
この疑い深さを、彼女ではなくスロットに活かせない事がただただ悲しい。
そんな事を考えながら複雑な表情をしていると、彼女から「あの高層ビルの上にある居酒屋に行きたい」とオーダーを受ける。
居酒屋に行きたいなんて、また珍しい。
二つ返事で「うん、そうしよう」と言ったのだが。
なんだか今日の彼女は妙にいつもより明るいし、よく喋るし、優しい。
そんな彼女はとっても可愛く魅力的で、出会った頃の様な甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。
喜ばしいはずなのに、何故だか切ない気持ちになるのはどうしてだろうか。
本来であれば、約束も時間も破られ、不機嫌まっしぐらでなくてははおかしいはずの彼女の内部モードが、表面上ではまるでそれを感じさせないどころか、むしろ気を遣っているようにすら思える。
そこで、ふとさっき来たメールの内容を思い出す。
“少し話したいことがある”
その悪い予感しかしない話を、いつ切り出されるのか気が気でなくなる。
そして、そんな彼女を怪訝そうな顔で見ながら、大好きなサーモンを口にするや否や彼女から、
『なんて顔をして食べてるんですか』
と不意打ち。
それに対し、
「べ、別に…」
と、不意に落ちてくるスイカを二確で取りこぼしたかのような、やってしまった感を味わう。
不安になっている事を悟られてしまってはなんだか格好悪い。
しかしながら、もうこんな空気は耐えられない。
いっそ男らしくこちらから聞き出してやろう。
「そういえば、さっきメールで話したい事あるって言ってたけどなんだった??」
『あっ、覚えていてくれてたんですね。 その話…実はとても言い辛いのですが…』
【つづく】
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
また会える日まで^_^
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