[1]久しぶりの名古屋の地にて「ハナハナ」へ全ツ [2021/3/19(金)] |
【3月上旬】
薄手のシャツでは、まだ少し寒い春の朝。
始発の「博多行」の新幹線へ、残りの軍資金5kを握りしめて乗り込んだ。
目的地は名古屋。
約4ヵ月ぶりの名古屋にテンションが上がったせいか、1時間半のうち30分くらいはトイレで踏ん張っていたように思える。
それ故に、あっという間に名古屋に到着。
横浜から名古屋までもあっという間に届けてもらえる便利さに約10k。
しかしながら、パチスロで10kを使うのに要する時間は約30分。
よくわからないが、なぜか絶望を感じる。
本日向かうホールは「ハナハナ」が非常に強い。
とはいえ、軍資金はポスティングのバイトを3日間頑張って稼いだ5kのみ。
下手すれば15分で失う可能性だって無きにしも非ず。
むしろそれが当たり前の世界だ。
抽選は4番。
これしか軍資金がない時に限って抽選が良番というのは、なんという嫌がらせか。
本来ならば嬉しいはずなのに、変な汗が止まらない。
もし5kで当たらなかった場合に、大人しく諦めて帰宅することは出来るのだろうか?
愛しさと切なさと心苦しさで精神が崩壊してしまわないだろうか?
それならば、むしろ打たない方が良いのではないだろうか?
様々な自問自答と葛藤を繰り返した。
しかしながら、この地まで来て打たないという選択肢はない。
開店前のお店の前には、半年ぶりくらいの再会を果たす仲間達がいた。
「今日は軍資金5kしかないんですよ〜」
そんな私の言葉に、仲間達ははさっぱりとした笑顔で返してくれた。
きっとまたいつものヒグラシジョークなどと思われているのだろう。
悲しくなってしまう。
大マジなのに。
無理もない。
新幹線で横浜から名古屋まで乗り込んできてるのに、財布の中には遣えるお金が5kしかないなど、誰が信じるだろうか。
いや、もしかしたらジョークだなんて一切思っていないのかもしれない。
ヒグラシならありえる、と。
ありえるがゆえ、可哀そうすぎて、返す言葉が見つからずに苦笑いをしているだけかも知れない。
悲しさを通り越して、笑えて来た。
ここまで追い詰められたのは自業自得で仕方ないのだと割り切る事は、自分はどうしようもなく情けない人間だと認めてしまう事になる。
「追い込まれた人間にしか見えない世界があり、追い込まれた人間にしか掴み取る事の出来ない希望があり、追い込まれた人間にしか理解の出来ないたくさんの人の悲しみがある!胸を張れ、ヒグラシ!!」
そんな声がどこからともなく聞こえてくるようだ。
開店して真っ先にハナハナコーナーへと向かう。
……つもりが、気付けばハナハナコーナーを通過して、バラエティコーナーの「聖闘士星矢 海皇覚醒」へと来てしまった。
何をやっているんだ私は。
軍資金が5kしかないのに、星矢と何をしようというのだ。
しかし、すでに奇跡的にも仲間が確保してくれていた。
5kで爆裂機の「聖闘士星矢 海皇覚醒」に挑むなんて、素手で吉田沙保里を倒そうとしているようなものだ。
そんな無謀なことをさせないようにと、仲間が抑えてくれていたのだろう。
私が迂闊に座らないようにと。
命拾いした。
さすが、持つべきものは友。
ということで、おとなしくハナハナコーナーにあるプレミアムハナハナへ。
1kをサンドに投入し、出てきたメダルの枚数が正しいかどうかをしっかりと確認してから一枚ずつ全てクレジットへと入れ、ちゃんと全てがクレジット内に投入されたかまでを確認した。
指さし確認もし、クレジット内の表示と実際とが合致しているかも2度確認した。
もちろん問題はなかった。
そうして私と「プレミアムハナハナ」の闘いのゴングが鳴らされた。
一回転、一回転、なめ回すように回した。
突如滑ってくるスイカを取りこぼす事は命取りになる。
慎重に慎重に。
そんな状況の中で、私は6G目にやってしまった。
丁寧にじっくりと冷静に、そして慎重に、スイカを取りこぼした。
人生で一度だけやり直しが効く魔法があったとするならば、勢いあまって使ってしまっていたかも知れないと思うほどに動揺した。
頭を抱え、しばらくしてから腹を抱えて笑った。
自らの人生が情けなく、そしておかしく思えてしまったのだ。
それから毎ゲーム、「光れ光れ」と呪文のように心の中で唱え続けた。
そして、願いは・・・
18G目に届いた。
投資は1k。
驚きすぎて、一瞬息が止まりかけた。
そのまま息の根が止まろうともわが人生に一片の悔いはなかった。
ただ、悲しくもREG。
そう簡単には楽にはさせてくれないようだ。
とはいえ、仮に6G目にスイカをとりこぼしていなかったとしたら、このような結果にはなっていなかっただろう。
「ピンチはチャンス。」
まさにこの言葉通りの結果になった。
「スイカを取りこぼしてチャンスとかおかしいだろ、ヒグラシ!」
そんな声がどこからともなく聞こえてきたが、そんな言葉は左リールから右リールへと押し流した。
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