ずいぶん楽しめたと見え、家へと向かう車の中でもダイキチの頬は緩みっぱなしである。
「それにしても、シェバの谷間はイイよなー。へへへっ。ヒョウ柄?なのかな?アレも見られたし。あんなイイ女がいるなら………俺もBSAAのメンバーになろうかな…」
底知れぬその夢が叶う日が来るのかどうか定かではない。
「だけどジルもイイ女だったよなぁ。どっちを選ぶの?なんて迫られちゃっても、どっちかを傷つけるなんて、俺には…」
阿呆の脳内世界は極楽の如き世界らしい。
「しっかしクリスの野郎、いつもいつも美女と…許せんな」
ライバルが出現したようである。
「ふんっ。クリスなんて俺の岩山両斬波でやっつけてやる」
いつの日か雌雄を決する時が来るらしい。
「だけど…俺の本命はレベッカなんだ。ごめんよ…シェバとジル」
ふわりと柔らかく暖かい夢境を漂っていたダイキチが運転する車もいつしか自宅へ帰り着き、車庫に停めた車から降りると玄関の前に立つ。
「この玄関を開けると、エプロン姿のレベッカが出迎えてくれる…」
散らばった靴。散らばったスリッパ。ジャリジャリとした床。向きのずれた足拭きのマット。玄関を開けると、そこはあまりにも見慣れた空間だった。
「ふっ。シェバやジルやレベッカや、若等を奈何せん…」
吾を奈何せん、とは到底考えの及ばぬダイキチであった。
家に入るといつものように冷たいコーヒーを淹れ、椅子にどっかりと腰を降ろすとすぐに煙草に火を着ける。
煙草の煙を眺めながら、ダイキチはまだ余韻に浸っているようだった。
「勝った後って、なんか頭の中がふわ〜ってなるんだよな。パチスロ中毒だからなのかなぁ。つーか一時的に辞めてはいたけど。さぁて、記事の事も考えておかなくちゃな。パチスロの楽しさを伝えるって言ったって、俺の文章で伝わるのかなぁ」
そもそも、小学生の時分から授業中には教師の話などは全く聞かず、授業そっちのけで常に空想の世界に身を委ねていたダイキチである。当然成績など良い筈もなく、特に国語の成績が悪く、他にも算数と社会と理科の成績が悪かったダイキチは、中でも宿題の読書感想文に至っては一度も提出した事がなく、それどころか書いた事さえ一度もなかったのだった。
「う〜ん…。文章を書くんじゃなくて、こう…言葉で直接言えるならいいのにな」
窓際に置いてある小さな小さな植木鉢の中の、ダイキチがこっそりミカエルと名付けたサボテンは、気がつくといつの間にやら背が伸びており、開けた窓の外からはコオロギの鳴き声が聞こえてくる。
「あ……そっか。そうだ」
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