今世紀最大の2択を迫られたあたしはね、店内がシーンと静まり返っているのを背中で感じていましたよ。
まさに原作の森田の気持ち。
隣のおバカさんはあたしの袖をギュッと握ったまま動かなくなってた。
じつを言うとあたしね、決めてたんだ。
こういう時は逆押しするって決めてたんだ。
だから迷わない。
迷うことはなかったんだ。
でもどうしても怖くなっちゃってねー。
だって外したらこんな無駄引きはありませんから。
だからあたし大きな声で台に向かって叫んだんだ。
「逆押しでいきますよー!」
「逆押しでいきますからねー!」
って。
そのときね、たしかに台が頷いた気がしたんだ。
揃ってるんです。
揃ってるんですよ。
いやー、こんなことってあるんですねー。
ほんとにスロットなんてのはどんな小説よりドラマに満ち溢れていますよ。ええ。
そんなわけで「銀王モード」に突入したんだ。
どんなもんかと説明するとですね、1セット5Gでセット中にざわ図柄が揃えば上乗せアンド継続となるST方式。
ループ率は約95%ときたもんだ。
平均は約220Gの上乗せだそうです。
継続率95%なんてね、まあそうそう終わりませんよ。
下手すりゃ1000Gくらい乗るのもわけないですからね。
いやー、とはいえね。
こんな激薄フラグをまさかあたしが引けるなんて思いもよりませんでしたよ。
なんだか夢を見ていたような気がします。
けどね、ひとつ言っておくとですよ。
良いことと悪いことってのは必ず均等に訪れるものだそうですね。
そういうことなんです。
世の中ってのは。
結果をね、言いましょうかね。
70Gですよ。ええ。
70Gの上乗せで終わったんだ。
信じられなくてねえ、あたし暫く動けなかった。
横では友人が腹を抱えて笑ってるんだ。
でもそんなことより今起きている現実を受け止められずにいたんだ。
初期G数と合わせて120Gスタート。
こんなもん供託金入らずに駆け抜けることなんて余裕ですよ。
実際にこのあと駆け抜けたんですけどもね。
手元に吐き出された250枚あるかないかのメダルを駐車場の二階から投げ捨ててやろうかとも思いましたがここは深呼吸だ。
いつでも冷静さをなくした奴から死んでいくのはミステリー小説の常ですから。
友人はまだ化物語を打つというのであたしは足早にその場を離れたんだ。
だってそうでしょ、こんな気持ちの悪い台をこれ以上打つ気になれませんからね。
あたしは次の台を探したんだ。
けどどうにも打ちたいと思える台がないんだ。
しかしそこであたし気づいちゃったんだ。
汚いおっさんしか出てこない台を打ったせいか、可愛い女の子が出てくるスロットを打ちたいんだ。
そうと決まればこの台ですよ。
「マジハロ5」
堀江由衣さんの声をね、いやらしい気持ちで聞きつつおっぱいを眺めているだけで千枚くらいならスッと出してくれる激甘ペロペロ台ですからね。
だからあたしもぺろぺろしながら打つことに決めたんだ。
ただ天井まで打つとは言ったつもりはなかったんですがね。
天井ですよ。
あたしぞーっとしちゃってね。
自分の頭の弱さにですよ。
ぞーっしちゃったんだ。
レア役を引こうがひたすらブーモリを毒殺し続けるアリスに嫌気がさして帰ったら、Googleで「マジハロ」「アリス」「エロ」で検索してやろうと心に決めた頃でしたよ。
マジハロの天井はARTのカボチャンスが2セットと25%ループでどうとか。
どうでもいいですよ。ええ。
だってね、駆け抜けたんだ。
駆け抜けたんだ。
こんな楽しくないカボチャンスもそうそうないですからねえ、あたし気を失ってたみたいなんですよ。
だって総投資が38000円くらいですからね、その結果のARTが100枚くらいで終わりそうになったんだ。
後で友人に聞いた話なんですがね、打ちながらあたし白目を向いて叫んでたみたいなんだ。
「ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」
って。
いやー、こんなことってあるんですねー。
友人があたしを抱えて店から引きずり出してくれたみたいなんですよ。
気づいたときには帰りの車の中でした。
虚ろな頭であたし違和感を覚えたんだ。
おかしいなー、朝の段階だとこいつが爆死するはずなのになんでおれがこんな目にあってるんだろうって。
あたし友人に訪ねましたよ。
「あのあとおれはどうなったんだ」
って。
すると友人はこういったんだ。
「おれが目を離した隙にハーデスに座っていたよ」
こんなことってあるんですねー。
知らない間にハーデスに座ってたんですから、これはもう霊の仕業としか言いようがありせんよ。
それであたしまた尋ねたんだ。
「おれはもうダメなのか」
って。
すると友人はこういったんです。
「もうダメかもわからんね」
いやー、こんなことってあるんもんなんですねー。
そう思った今年の夏でございました。
−65000(ジャグラーの未練打ちを含む)
(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
(C)Sammy
(C)福本伸行
(C)Sammy
(C)TAIYO ELEC
@@@@@@@@@@
よろしければ、以下のフォームより、この記事についての感想を選択してご投票ください。(5点満点)
なお投票と同時に、この記事についてのコメントを残すこともできます。
いただいたコメントは、今後のサイト運営の参考にさせていただきます。
※コメントは全ライター非公開
@@@@@@@@@@
野菜の記事一覧へ
読者ライターの最新更新一覧へ